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[MOM374]全日本大学選抜MF重廣卓也(阪南大2年)_背番号10の主将が「ホッとした」劇的逆転弾

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[3.20 デンソーカップ第13回大学日韓定期戦 全日本大学選抜2-1全韓国大学選抜 等々力]

 値千金の逆転弾。右足から放たれたボールは豪快にゴールネットを揺らした。2-1の勝ち越しゴールが決まったが、殊勲の全日本大学選抜MF重廣卓也(阪南大2年=広島皆実高)は喜びよりも安堵の感情で胸がいっぱいだったという。

 試合後には「本当にホッとして、今日は自分自身の出来は最悪だったので。なんとしても結果を取って、逆転しないといけないとずっと思っていた。決めた瞬間は嬉しいよりもホッとして、一安心みたいな気持ち。ああいう形で、ああいう場面でも落ち着いて、冷静にシュートを叩き込めたというのは良かったかなと思います」と笑顔をみせた。

 前半26分に先制されるも、後半42分にFW中野誠也(筑波大2年=磐田U-18)の得点で1-1に追いついた。逆転へ向けて勢いが増す中、後半終了間際の44分についに逆転弾。途中出場のMF松木駿之介(慶應義塾大1年=青森山田高)が左サイドをカットイン。このマイナスの折り返しに、PA手前正面で待ち構えていた重廣が合わせ、落ち着いて右足を振り抜いた。強烈な一撃はネットへ突き刺さった。

 「松木が奥まで行くだろうと予想はしていて、中には入らなくてペナルティーアーク辺りで待っていた」と振り返った重廣は「カットインしたときに松木と目が合ったので、『寄こせ』と目で合図したんです」と笑う。

 この“アイコンタクト”は松木もしっかりと認識していたようで、「かなり目が合ったので」とハニかむと「自分でシュートを打つつもりでしたけど、フリーの重廣さんと目があったので。中にパスを出した方が得点の確率も高いだろうと信じてパスしました」と胸を張った。

 終了間際の時間帯。決まれば値千金の逆転弾というプレッシャーのなかだったか、重廣は冷静に「相手DFが僕に突っ込んでくるのが見えたので、突っ込んできた方向に冷静に叩き込むことができました」という。右足で叩き込んだ一撃が決勝点。全日本大学選抜は2-1の逆転勝利を果たした。

 昨年度のユニバーシアード競技大会を唯一経験している2年生の重廣。その経験値の高さや能力が評価され、全日本大学選抜の新チームではキャプテンを任され続けているだけでなく、今回は背番号10を背負っている。その重圧は少なからずあったようだが、マレーシア遠征のなかで「背番号とかキャプテンに捉われていても自分の良さは出ないし。自分がどんどんダメな方向にいくかなと思ったので。そこは上手くマレーシア遠征中に切り替えることができた」。考えすぎずに目前のことに取り組み続けると、メンタルも上手く切り替えられた。

 この日の試合では逆転勝利を果たしたものの、チームとしての課題は多く残った。ボランチが孤立する場面が多く、サイドハーフとの距離が開き、連動性を欠くと、上手くボールを前へ運べず。守備に転じたときに出遅れる場面が続き、ピンチも招いた。全日本のキャプテンは「ここまで自分たちが出来ないとは思わなかった。自分たちがいつも通りのサッカーをしていれば苦戦するような相手ではなかったはず。僕たちのせいで相手のストロングを発揮させてしまった」と悔やむ。

「攻撃するときの距離感が悪く、それが守備にも影響してしまい、そこで韓国の選手が上手くワンツーだったり、フリックだったりで、持ち込まれてしまった。相手のストロングポイントを僕たちが引き出してしまったというところが結果的に圧倒される原因になった」

 前半のうちにその課題を認識しながらも、ピッチ上で修正することはできず。後半からFW中野誠也(筑波大2年=磐田U-18)とMF野嶽惇也(福岡大3年=神村学園高)が入り、裏への攻撃を狙う中で距離感が縮まると、本来のチームのスタイルを出せるようになった。流れの悪い時間帯も1失点で耐え忍ぶと、終了間際に2点を奪っての勝利。内容は満足いくものではなかったが、そんななかで勝ちきったことが何よりもの収穫だ。

 重廣は「前半は圧倒されて、自分たちのサッカーや自分たちの持っている能力を出せないままに失点して折り返したんですけど、それでもチーム一丸となってゴールを奪おうという共通した理解があったので逆転できたと思っています」と胸を張った。

 全日本大学選抜の活動は当面はないため、今後は阪南大へ戻り、関西学生リーグの開幕へ備えていく。全日本大学選抜の主将を経験し、責任感を身にまとい、今春で一段とスケールアップしたMFは「選抜でのキャプテンをやらせてもらったりした経験を阪南でも活かしたい。阪南でも中心となるという自覚を持って、開幕戦へ向けていい準備をしたいと思います」と強く誓った。

(取材・文 片岡涼)
●2016年全日本大学選抜特集

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