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全日本大学選抜FW中野が流れ呼ぶ同点弾、「泥臭いゴールを決めるのが自分の仕事」

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[3.20 デンソーカップ第13回大学日韓定期戦 全日本大学選抜2-1全韓国大学選抜 等々力]

 誰にも負けない自信があるという裏への抜け出しで全韓国大学選抜の守備陣を翻弄した。全日本大学選抜のFW中野誠也(筑波大2年=磐田U-18)は0-1の後半開始から途中出場。停滞していた流れを一気に変えると、後半42分には自ら同点弾も決めてみせた。

 この日の全日本大学選抜は、前半26分に先制点を奪われる苦しい立ち上がり。ゴールを目指し、2トップのFW松本孝平(国士舘大3年=藤沢清流高)とFWジャーメイン良(流通経済大2年=流通経済大柏高)の足元へボールをつけるも、全韓国大学選抜のDFチェ・ジュンギ主将とDFキム・ミンジェの厳しいチェックに苦しんだ。前半はゴールを奪えずに0-1で折り返し、ハーフタイムには松本とMF手塚朋克(慶應義塾大2年=静岡学園高)に代わり、中野とMF野嶽惇也(福岡大3年=神村学園高)を投入する。

 宮崎純一監督(青山学院大)は中野を投入した理由について「中野誠也選手は自分のところにボールを引き出す能力に非常に長けている選手。前半は足元につけるボールに対して、非常に強いプレッシャーをかけられてボールを失う時間が多かった。そこで背後のスペースを使おうという意図で彼を投入した」と明かす。

 中野は指揮官の期待に応えるべくピッチへ入ると、サイドから相手の背後を狙っては幾度も仕掛けた。190cmの高さあるキム・ミンジェと対面するシーンもあったが、中野は「逆にああいうデカイ選手は得意。むしろ逆にキャプテンの20番(チェ・ジュンギ)よりも5番のところで勝負したいというのがあった」という言葉通りに、難なく相手を翻弄。突破してはゴールへ迫った。

 すると後半42分に得点が生まれる。繰り返してきた裏への抜け出しやドリブル突破ではなく、がむしゃらな前への姿勢が生んだ一撃だ。左サイドからDF小池裕太(流通経済大1年=新潟ユース)がロングスロー。DF今津佑太(流通経済大2年=流通経済大柏高)が頭で逸らすと、最後はゴール前に詰めた中野が頭で押し込んだ。

 殊勲のFWは「今津が逸らすからとメッセージをくれていたので、それを信じて待っていて良かった。今津がうまい形で逸らしたのに反応する気持ちを持って準備できていたので。思い切って飛び込んで良かったです」と胸を張る。

 頭で押し込んだボールは右ポストの内側を叩いてのゴールイン。得点の瞬間を自身の目では確認できなかったようで、「ポストに当たった瞬間に相手のDFにヘディングされていて……その痛みが強くて、実際決まったのかどうかはわからなかったんですけど。倒れていたらみんなが喜んでいたので。あっ、ゴールしたんだなって喜びました。出遅れましたね」と笑いながら振り返った。

「泥臭いゴールを決めるのが自分の仕事だと思っているので。ああいう形でも決められたのは、自信になってよかったです。最前線に入ったときは相手のDFが嫌がるポジションを取ることを意識しているので。裏への飛び出しも誰にも負けない自信は持っていて、あとは身体の強さなどプラスで出来ていけば、もっといい選手になれると思う」

 指揮官は停滞していた流れを変えるだけでなく、結果を残した中野について「(中野の投入後は)攻撃のバリエーションも増えた。ゴールに向かっていくプレーができるので、それが後半の流れを引き寄せる一つの要因になっているという意味では評価できる」と話した。

 おもにこれまではFW起用の中野だったが、今回のマレーシア遠征では4-2-3-1のトップ下や4-1-4-1の左インサイドハーフでもプレー。異なるポジションでの経験は最前線でプレーする上で視野を広げるのに一役買ったという。

「最近の合宿では違うポジションにも挑戦して、プレーの幅を広げるという意味ではいい経験を出来ているので。今までは最前線でプレーするイメージでしたけど、中盤のサイドや真ん中だったりをこの合宿でやらせてもらって、前を向く意識とか学ぶものがあった」と手応えを語るとおりだ。

 泥臭く流れを呼び込む同点弾を決めたFWだったが、最後まで謙虚な姿勢は失わず。「GKの前川選手だったり、今津、鈴木準弥だったりが本当に身体を張って、後ろから声を出して続けてくれていた。自分たちが本当にやらないといけないというムードを作ってくれていたので良かったです」と押し込まれながらも1失点に抑えた味方守備陣への感謝を口にしていた。

(取材・文 片岡涼)
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