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「予選は全部テレビで見ていた」故障に泣いた金森、リオへの決意

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[3.28 練習試合 U-23日本代表1-1スポルティング・リスボン]

 今回のポルトガル遠征は、リオ五輪予選後初めてのU-23日本代表としての活動だった。五輪出場権を獲得した今、チームとしては前回ロンドン五輪の4位を上回るメダル獲得を目指し、成長と成熟を図る期間である。選手個人にとっては、本大会のメンバー入りを懸けた新たな戦いが始まっており、初招集のDFファン・ウェルメスケルケン・際を始め、予選に出場していなくても93年1月1日以降に生まれた選手には本大会メンバー18人に入る資格がある。

 とはいえ、現実的には手倉森ジャパンが立ち上がって2年強、指揮官の下で時間を重ねてきたメンバーが優位に立っているのは自然なこと。指揮官の指向性も、同世代メンバーとの呼吸も、すべて分かっている。また、予選を戦ったメンバーには厳しい勝負を勝ち抜いてきた自信も備わっている。彼らの牙城を崩すのは簡単ではない。だが、予選のメンバーを脅かす選手の出現こそが、チームを成長に導き、メダル獲得へと近づけるはずだ。

 今遠征で招集されたFW金森健志(福岡)もそんな存在だ。この世代では代表常連でありながら、1月のAFC U-23選手権ではメンバーから外れた。昨年末の沖縄合宿を右太腿の故障で途中離脱したからだが、本人は悔しさから目をそらすことはしなかった。

「予選は全部、テレビで見ていました」

 同世代の動向は気になった。予選突破してくれれば、再び自分にもメンバー入りと五輪行きのチャンスが訪れる。信じて仲間たちの戦いぶりを見守った。

 果たして今遠征のメンバー入りという形で、チャンスは訪れた。「もう一度チャンスをもらったから。日本がメダルを取るために、自分は貢献したい」。メンバー入りしたい、ではない。日本が五輪でメダルを獲得するために、自分はその力になれるように、と目線は常に上を向く。

 25日のメキシコ戦(2-1)は途中出場、28日のスポルティング・リスボンB戦(1-1)では先発し、後半17分までプレーした。FW、2列目と複数のポジションを任され、プレスをかけては危険の芽を摘み、ドリブルからチャンスをつくった。高い位置での起点という意味でも申し分なかった。しかし、得点は遠かった。

「結果として得点が欲しかった。こだわっていたから悔しい」。予選でメンバー入りできず、出遅れた感がある。その分の評価を取り戻したかったが、自らに課した得点という課題は達成できなかった。

 FWから攻撃的MFまでこなせる選手は多く、このチームでも激戦区ではある。競争を勝ち抜かなくては五輪にたどり着けない。それでも金森は繰り返す。

「メンバー入りとかより、日本がメダルを取るために」

 目標はあくまで明確だ。骨太な意志の強さを感じさせるのは、自信の裏返しということなのだろうか。盤石に見える予選メンバーに一石を投じる存在であることは間違いなさそうだ。

(取材・文 了戒美子)

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