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横浜FMユース育ち、慶大の新守護神・ルーキー上田朝都が明かす 「自分の中での変化」

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 慶應義塾大のゴールマウスを守るのはルーキーGK上田朝都(1年=横浜FMユース)だ。横浜F・マリノスユース出身の守護神は、開幕戦に抜擢されると、ここまで開幕4戦連続フル出場。チームは1勝3敗で4戦7失点の11位とお世辞にもいい数字とはいえないが、そんななかでひたむきにプレーを続け、慶應義塾大の一員としての強い誇りを胸に先輩たちに食らいついている。

 デビュー戦はほろ苦いものだった。試合前は緊張もあったものの、始まってみれば平常心でプレーできたという。しかし、大学サッカーの“聖地”味の素フィールド西が丘で明治大に0-3で敗戦。結果はついて来ずに3失点を喫したのだ。高校時代には夏のクラブユース選手権を制覇し、日本一を経験してきたGKだが、大学サッカーの雰囲気はユース年代のものとは全く違ったと語る。

「初戦(明治大戦)など、試合をやってみたら全く雰囲気が違いました。クラブユースの決勝とかも経験してきたんですけど、それとも全然違う雰囲気で。一戦にかける思いがユースから大学というカテゴリーになると違ってくるし、勝敗へもっともっとこだわるようになっているという風に感じました」

「プレーの上でユースより上手い選手がいるのはもちろんですけど、そういう技術よりは“かける思い”の差がユース年代とは全然違いました」

 デビュー戦を終え、第2節では筑波大に1-2の敗戦。それでも第3節・法政大戦で今季初の完封を遂げ、1-0勝利に貢献した。ここまでの手応えについては「最初の開幕戦のときよりは自分のプレーや武器を出せてきているかな。そういう面では自分のなかでは試合をする毎に、できることは増えているかなと思います」と言う。

 第4節の桐蔭横浜大戦では1-2の敗戦となったものの、相手CKからのボールをキャッチし、素早いリリースで攻撃の起点となったほか、恐れずに前に飛び出していくなど果敢な姿勢は光った。守備陣へのコーチングで課題を残すシーンもあったが、ポテンシャルの高さはみせた。

 慶應義塾大の須田芳正監督は「1年生なのによくやっている。ここからDFラインとの連携や“統率する”という部分、声を出すとかをやっていければ。思い切りもいいですしいい選手。1年生としてはよくやっているし、伸びるんじゃないか。楽しみです」と期待を寄せる。

 横浜FMユースで育ったGKは、開幕から先発の座に着き、大学サッカーで順調なスタートを切った。4年後には“古巣復帰”を含めてのプロ入りを目指しているのかと思いきや、出てくる言葉は慎重かつ堅実なもの。

「最初はそういう(プロ入りを目指す)モチベーションで大学に入ってきましたし、ユースのときもそう思いながら生活していたんです。でも自分のなかでの変化というか、今は自分がプロとか選抜とか、そういうのを目指すというよりも、一戦一戦を通じてチームのためになりたいという思いが強いです」と胸中の変化を明かす。

 その理由について「慶應は“チームのために自分にできることを一所懸命やる”というチーム。すごくいい刺激だし、先輩たちもピッチの中でも外でも本当にいい人たちで。自分もそういう姿勢で一緒にやっていきたいと思えるチームだったんです」と説明した。

 開幕からわずか4節ながら既に上田の内面には、慶應義塾大の一員としての自覚が根付いている。「4年後を見据えるよりも、今、自分がやらせてもらっていることに感謝しながら、やっていきたいと思ってます。僕はまだ自分のできることを精一杯やることしかできないので。できることを全部しっかりやっていくことがチームに貢献できることだと思っていて。それが今後のチームや自分自身に活きていればいいなと思いながらやっています」とハニかんだ。

 試合を追う毎に手応えをつかんでいると話していたGKだが、失点の多さには責任も感じている。そこへ話しが及ぶと「4戦6失点は多いので。これを減らさないといけないし、減らすのが僕の仕事」と表情を引き締め、「チームとして優勝という目標を掲げている以上は、守ることを守って、しっかりゼロで抑えて結果もついてくれば」と誓っていた。

(取材・文 片岡涼)
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