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「東京五輪への推薦状」第15回:4年後への秘密兵器、タビナス・ジェファーソンの旅支度

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 2020年東京五輪まであと4年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ

「未完の大器」と言うと月並みな表現かもしれないが、この言葉がここまでフィットする選手もなかなかいない。桐光学園高の主将でもあるその選手の名は、タビナス・ジェファーソンと言う。

 高さ・強さ・速さの3拍子を兼ね備える左サイドバック。加えて稀少な左利きでもある。「こんなにもたくさん(Jクラブのオファーが)来るとは思っていなかった」と桐光・鈴木監督は言うものの、スカウト陣の「ウチで育ててみたい」という誘惑を喚起するには十分な素材感であり、決して驚きではないだろう。本人は夏に決断したいという意向を持っており、そこまで争奪戦が続くことになりそうだ。

 もっとも本人は、「本当にまだまだです」という謙虚な姿勢を崩さない。高校選手権終了後から参加したJクラブの練習や日本高校サッカー選抜でのプレーを通じて、トップレベルとの「差」も痛感してきた。特に指摘を受けた「ポジショニングの課題」は、身体能力抜群の選手にありがちな弱点でもある。間違った位置取りをしていても「追いつける」し、不利な体勢で競り合っても「勝てる」タレント性は、逆に言うと適切なポジショニングの重要性を実感できなくなることと表裏一体。その意味で、高校サッカーという枠を超えて経験を積めた春までの経験は、タビナスの意識に確かな変化をもたらしている。

「攻撃的にやれと言われれば、やれる自信はある。でも『サイドバックは守備から』と思うようになりました。まずは苦手な守備、特にポジショニング。それから攻撃という考えになってきた」

 今年、チームで「主将」という大役を任されたことも、少なからぬ意味を持つ。「やっぱり(前チームは)凄い人がやっていたので」と先輩のFW小川航基(磐田)のことも少し意識しつつ、しかし自分らしいアプローチを考えながらチームをまとめようと頭を使う日々だ。「自分一人ではできないし、みんなに助けてもらいながらやっていきたい」とチームのことを考えながら戦う1年は、タビナスにとって大きな経験値となるに違いない。単に身体能力に秀でるというだけではない、こうした真面目で向上心の強い部分も、Jクラブが「プロ向き」と見なす理由である。

 ガーナ人の父とフィリピンの母を持ち、現状では日本代表の資格はない。ただ、「日本で育ってきた以上、(代表入りは)目標にしています」とも言う。2020年の東京五輪のころには、帰化が可能になる20歳を超える。日本育ちである以上、認められる可能性は非常に高く、現実的な選択肢だろう。「20歳になったら、(国籍を)変えて(五輪に)チャレンジしたい」と澄んだ瞳で断言してくれた。

 プロ入り前の「旅支度」となるこの1年、課題のポジショニングに加えて、主将としてのメンタル面でのブレイクスルーも期待される。「未完」と言われる部分は「未来」への可能性。さらなる成長の先にはきっと、タビナス・ジェファーソンが「東京五輪の秘密兵器」となる未来が待っていることだろう。

執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動。『J論』( http://j-ron.jp/ )編集長を務めているほか、ライターとして各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
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