beacon

アクシデントで送られたルーキーが流れ変える、東京V・MF井上潮音が攻守に貢献

このエントリーをはてなブックマークに追加
[5.22 J2第14節 東京V2-1清水 味スタ]

 アクシデントを受けて、ピッチに立ったルーキーが流れを変えた。0-1の前半39分に途中出場した東京ヴェルディの高卒ルーキーMF井上潮音がプロ2戦目で攻守に存在感を発揮。味方の負傷で投入されるも中盤で堂々のプレーをみせると、そこからチームは2点を奪取。2-1の逆転勝利を果たした。

 この日の東京VはFW高木大輔を1トップ、MF中後雅喜をアンカーに置く、4-1-4-1システムで試合に臨んだはずだった。しかしFWドウグラス・ヴィエイラが前線へ残り、2トップ気味の位置でプレーしたため、2列目インサイドに入ったMF高木善朗はドウグラスの穴を埋めるべく、上下左右へ豊富な運動量を強いられた。

 さらにサイドを突いてくる相手の攻撃に押し込まれ、前半6分には失点。なかなかボールが落ち着かず、東京Vには嫌な雰囲気が立ち込める。最終ラインと中盤の構成をいじるも、流れは変わらない。

 そんななか前半39分にアクシデント。FW南秀仁がふくらはぎを痛めたため、途中交代。ここで呼ばれたのがルーキーの井上だった。中盤に入り、中後とダブルボランチを組むことで4-4-2システムへ変化。この“アクシデント”が功を奏す。

 井上は中盤で相手の攻撃の芽を摘もうと果敢にプレー。体格差では劣る相手を前に167cmのMFは動きを読むことで対応。清水のカウンターを許さなかった。また攻撃でも正確かつストレートなプレーでボールを散らし、リズムをつくった。井上の投入後に東京Vは2点を奪取。2-1の逆転勝利で10戦ぶりの白星を手にした。

 試合後の会見で東京Vの冨樫剛一監督は「タッチ数を少なく、リズム良くサイドを使いながら攻撃に出ようというところで井上潮音が入ったことで、前半はスムーズに前に進めた」とルーキーの名前を挙げて労った。

 5月3日に行われた山形戦(0-1)でプロ初先発した井上。しかし、その後は2戦連続ベンチ外となり、出番はなかった。それでも「自分は安定してメンバーに入れることはないので。自分が成長することだけを考えて、普段から練習していました」と言う。自省しながらひたむきに練習を重ねると、この日は3戦ぶりにベンチ入り。味方の負傷でチャンスがやってくると結果を残した。

 ルーキーMFは「フィジカルでは負けますが予測だったり、相手が何かしようとしているのか感じるのはできている。それができれば守備もできる」と手応えを語り、「自分が入って2点が取れたのは自信になりました」と安堵の表情も浮かべていた。

 この日の試合後、ユースからの先輩にあたる高木大は「潮音は山形戦でスタメンで出たのに、その後は出れずに悔しかったと思う」と思いやり、「潮音には“上手いけど、もっと戦えないと無理だよ”と練習の球際のプレーなど、うざがられてもいいから言ってやろうと、普段から言っています」と練習での一幕を明かすと「今日は本当にボランチで戦っていたし、相手の攻撃を遅らせてくれて、潮音が流れを変えさせてくれたし、助かった。もう少し攻撃させてあげたかった」と感謝を口にしていた。

 サイズの小ささを感じさせず、クレバーな動きで攻守に存在感を示した井上。アクシデントによる投入かつ、0-1のビハインドでピッチへ立っても動じない強心臓ぶりもみせた。それでもルーキーは満足しない。自身の好機を逃したことから、「あそこで決められるか決められないかが(上へいける)選手の差になってくると思う。普段の練習から取り組んで行きたい」と強く誓っていた。

 デビュー戦後は悔しさ募る日々があったものの、また一歩を踏み出した。自分の出来ることを真っ直ぐに見つめ、井上は前へ前へと進んでいく。まだプロ2戦目を終えたばかりのルーキーだが、近い将来に必ずや東京Vに必要不可欠な戦力となる日がやってくるはずだ。

(取材・文 片岡涼)
●[J2]第14節 スコア速報

TOP