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[MOM1783]東京VユースMF大久保智明(3年)_「毎試合いいプレーで目立つ」 決意のMFが決勝ミドル

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.29 第40回クラブユース選手権(U-18)関東・決勝T2回戦 東京Vユース1-0浦和ユース ヴェルディG]

 背番号7の左足から放たれたボールがゴールネットを揺らした。これが決勝点となり、東京ヴェルディユースは1-0で浦和レッズユースに勝利。全国行きを決めた。値千金のシュートを決めたMF大久保智明(3年)は「毎試合いいプレーをして、目立てるようにと思っています。少しはできたかな」と笑顔をみせた。

 普段はあまり緊張しないというが、全国行きがかかった浦和戦前日はなかなか寝付けなかったという。「木曜、金曜あたりから、ずっと考えていて。負けるイメージしかなくて。今日勝てなかったら厳しいかなとか、これで全国が決まるんだとか考えすぎてしまって……」と苦笑いで明かす。

 それでも「きょうの朝に起きたら、気持ちが前向きになっていて。やるしかないなと切り替えることができました」と腹を括り、ホームのグラウンドへ足を踏み入れた。

 迎えた浦和戦。レフティーの大久保はいつもの2列目右サイドではなく、左サイドで起用される。これは藤吉信次監督の「サイドから中に入っていくのではなく、縦へ仕掛けていって欲しかった」という狙いに基づくものだった。縦への攻撃を繰り返す浦和に押される場面が続くも、大久保は左サイドから幾度もドリブル突破を図り、相手右サイドを押し込んだ。

 そして0-0の後半16分に仕事を果たす。敵陣内でボールを失うも、MF森田晃樹(1年)が奪い返し、受けたMF渡辺皓太(3年)が右サイド、MF藤本寛也(2年)とのパス交換から縦へパス。これに反応した大久保がドリブルで前進し、PA手前正面で左足を振りぬいた。低い弾道のシュートはゴール右下隅へ決まった。これが決勝点となり、東京Vユースは1-0で勝利した。

 殊勲のMFは「後半は中に入れという指示だったので、その通りに仕掛けました。ボールを持ったときには迷ったんですけど、相手があまり来なかったから打ったら入りました。良かったです」と振り返る。

 指揮官も「元々ドリブルは得意な選手で攻撃的な選手。今週はミドルシュートの練習もしていて、それが実になってよかった」と労った。

 この日の試合後、サポーターの前で勝利のラインダンスを披露した東京Vユースの選手たち。全員で肩を組んで踊るなか、GK佐藤久弥(3年)が前へ出て“ソロダンス”を見せると、今度は「トモ!」と大久保の名前が呼ばれた。右端に隠れていたMFだったが、ハニかみながら前へ出ると勝利の舞。ピッチとスタンドに笑顔が溢れた。

 これまで幾度も皆とラインダンスを踊ってきた大久保だったが、一人で前に出たのは初めてのこと。「1・2年生のときから今までは、ずっと端に隠れて前に出ていなくて。3年生になって今日、初めて前に出ました」と照れくさそうな表情をみせる。

 踊っているときは「勝った喜びが大きかったので大丈夫でした」と言うが、「2回目は厳しいです。きょうが最初で最後? そうできれば」と恥ずかしそうに話していた。

 足下の技術はもちろんのこと、鮮やかなステップや切れ味鋭いドリブルを武器に持つレフティー。それだけではなく、高精度なミドルシュートもあることを大一番で示し、チームを全国へ導いた。年代別代表歴ある選手もいる東京Vユースのなかで、着々と実力を蓄えている。大舞台で羽ばたく日は必ずやってくるだろう。今は一戦一戦、ひたむきに結果を残し続ける。

(取材・文 片岡涼)

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