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「東京五輪への推薦状」第16回:偉丈夫・星キョーワァンが初の国際舞台で感じた「違い」は、ブレイクへの起爆剤に

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 2020年東京五輪まであと4年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ

 毎年恒例となっている日本高校サッカー選抜の欧州遠征。国際経験を積む機会が大幅に増えたと言っても、「初の国際大会」をこの遠征で経験するという選手はまだまだ少なくない。今年の遠征に参加した星キョーワァン(矢板中央高駒澤大)も、その一人。初めて「世界」との接近遭遇を初体験した感想を問うと、こんな答えが返ってきた。

「いや、変な言い方に聞こえるかもしれないですけど、プレーしていてすごく違う感覚があって、刺激的で、本当に『楽しかった』んです」

 もちろん、楽しく遊んできたという話ではない。国際舞台で感じた楽しさは、日本で育った強健なセンターバックならではのモノだった。

「こっちが思い切りぶつかりにいってもいいんです。当たっても、相手もギリギリのところまで戦ってきてくれるし、簡単に倒れない。初めての感覚で、ホントにやっていて面白くて……」

 日本国内の試合、特に同学年の試合となると真っ向から星に対抗しようとしてくるFWはまれだろう。184cmの高さに加えてパワーもある星に当たられたFWは簡単に倒れてしまうことが自然と多くなるし、日本のジャッジでは「ファウル」の判断が下る。だが、欧州基準で見れば、「そのくらいは当たり前という感じ」なので、真っ向勝負になる。それがとにかく楽しかったのだと言って笑顔を浮かべた。

 日本高校選抜では、欧州遠征直前まで控え扱い。直前になってのレギュラー大抜擢だったのだが、日本国内よりも国際試合で力を発揮できるタイプだったようで、この起用は図に当たった。「毎試合ごとに、『またやりたい、もっとやりたい』と思えた」という体験は、星にかつてない刺激を与えたようだ。

 帰国後、他の部員より遅れる形で駒大サッカー部に加入することになったが、早くもレギュラーポジションをつかみつつある。幾多のパワフルな名選手を育ててきた駒大・秋田浩一監督から見ても魅力的な素材のようで、「高さがあって、速さもある。(両方持っている選手は)なかなかいない。経験を積ませてやれば、もっと大きな存在になれると思っている」と熱い期待を寄せている。

 もちろん、まだまだ課題は多い。「高校までとはスピード感や間合いが違う」と、大学サッカーのレベルにまだ適応し切れていない部分もある。高校時代からの課題である左足のフィードなども、大学以上のレベルになると狙われることが出てくるだろう。試合ごとに「課題と手ごたえの両方を得ている感じ」というのが現状だが、逆に言えば伸びしろがあるということでもある。

 高校選抜の欧州遠征を終えて「また(国際大会に)出たいと思った」という男は、同時に「もっと上を目指してやらないといけない」という思いも新たにした。すぐに日の丸となると気が早いかもしれない。ただ、4年後の夏ならば――。初めての国際舞台で得た刺激は、爆発的成長への起爆剤となるかもしれない。

[写真]星(右)は日本高校選抜の一員として世界を経験。ブレイクに繋げるか

執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動。『J論』( http://j-ron.jp/ )編集長を務めているほか、ライターとして各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
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