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欧州勢相手に自在なゲームメイクで一段上のアピールをした柏木

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[6.3 キリン杯準決勝 日本7-2ブルガリア 豊田ス]

 大柄なブルガリアのDFに体を寄せられながらラストパスを出したところに、ハッキリとした成長を見せた。前半4分のFW岡崎慎司の先制シーン。アシストとなる絶妙なパスを出したMF柏木陽介(浦和)は、わずか2、3秒間のプレーをコマ送りのように説明した。

 まずは右サイドに開いたMF香川真司から中央でパスを受けたときのファーストチョイスについて、「真司にリターンパスを出そうかと思ったけど、真司と(酒井)宏樹の動きがかぶったからやめた」と説明。このとき「後ろから(DFが)来ているのが分かった」という。ここで思い浮かんだのが、スカウティングビデオで見た、ブルガリアのDFラインがバラバラになっている場面だ。そして、ひらめいた。

「ここで前を向けたら、もしかしたら中は良い状態かなと思った。ラインがバラバラなのはスカウティングで見ていて分かっていたから。自分のパスも良かったし、オカちゃん(岡崎)の動き出しも良かった。アシストがついて良かった」

 立ち上がりに得た先制点で、日本は流れに乗った。柏木はその後も2点目、3点目の起点になった。前半は背番号7の自在なゲームメイクが日本に勢いをもたらした。

 ハリルジャパンに招集され始めた昨年9月以降、柏木は指揮官からフィジカル的な弱さや、デュエルの場面での引き気味な姿勢を指摘された。そしてそれを克服し、「闘える司令塔」になるべく、意識改革をしてきた。

 今回は滅多にチャンスのない欧州勢との親善試合。アジア勢とは違うフィジカルの相手に対してしっかりと自分の良さを出せたことは収穫であり、重ね重ねのアピールにもなったはずだ。

「やっとこの代表に慣れてきて、ある程度出さないといけないことを出せるようになってきている。ただ、もっと出していかないといけない。後半はボールの失い方が悪かったり、宏樹に出すパスが通らなかったり、いろいろな部分で反省しないといけない。向上していかないと」

 司令塔タイプのボランチというポジションで、柏木は着実に前進を見せている。

(取材・文 矢内由美子)

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