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[総体]史上初の偉業に挑む夏、“赤い彗星”東福岡が福岡予選突破!!

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[6.5 総体福岡県予選決勝 東福岡高 1-0 九州国際大付高 春日公園球技場]

 5日、平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)福岡県予選決勝が行われ、昨年度全国2冠、また現在全国総体2連覇中の東福岡高九州国際大付高と対戦。FW藤井一輝(3年)の決勝ゴールによって1-0で勝ち、5年連続14回目となる全国総体出場を決めた。

 全国各地の猛者たちのターゲットである“赤い彗星”こと東福岡が、福岡予選を堂々の突破。史上初となる全国総体3連覇に挑戦する権利を獲得した。注目SB小田逸稀(3年)が右腕のケガによって欠場中の東福岡だが、それでも立ち上がりから“試合巧者”九国大付に圧力をかけ続ける。4分、日本高校選抜MF藤川虎太朗(3年)の左クロスから藤井が決定的なヘッドを放つと、8分にはMF福田湧矢(2年)からのパスを受けた藤川が鮮やかなターンでDFを剥がして左足シュートを打ち込む。

 特に前半は一段階上のレベルのプレーをしていた注目10番藤川を中心に、中盤で存在感を示す日本高校選抜MF鍬先祐弥(3年)やMF高江麗央(3年)が連係、個人技で中盤を打開。左右へボールを動かし、高い位置から連続攻撃を繰り出していく。個人頼みでリスクの高いようなプレーが続いたことについては反省点だが、独特の緊張感を持つ決勝戦で敗れる怖さをまるで感じさせないような堂々の試合運びで九国大付を押し込んでいく。21分には右サイドから4人、5人と絡んだ攻撃。MF青木駿(3年)のシュートはDFにブロックされたが、切り替え速い攻守、また右SB中村駿(2年)も積極的に攻撃に絡むなど人数を掛けた攻撃で相手に息つく時間を与えない。

 対する九国大付は注目MF今田源紀(3年)とMF亀安晃太主将(3年)のダブルボランチ、そして5バックでスタート。攻撃の時間を増やすよりも、まずは失点しないことに重きを置いたチームはPAに入ってくるボールをシンプルに跳ね返す。序盤は寄せが甘いところを突かれてミドルシュートを連発されたが、我慢強く守ると、23分にはFW手島貫太(3年)の右FKを起点に最後は折り返しをゴール正面のDF田代竣亮(3年)が右足シュート。これはGK前島正弥(3年)の好守に阻まれたものの、スピードあるMF溝上哲平(3年)の仕掛けなど一発があることを示していた。そして0-0のまま迎えた34分には中盤でのインターセプトから亀安が左サイドへ展開。溝上がカットインから放った右足シュートが右ポストを叩き、会場をどよめかせる。

 そして九国大付は後半開始からアタッカー2名を入れ替えてギアチェンジ。それでも森重潤也監督が「東福岡に対してどのチームも普段以上の力を出してくる。勝ち続けると、負けることへの怖さが積み上がっていくけれど、だからこそ、これ以上の、上回ることをしていかないといけない。ヒガシは県内では絶対に負けられない、と。そのために戦う部分や、強さを持っていないといけない」と説明する東福岡は力強かった。高校年代最高峰のリーグ戦、プレミアリーグではJクラブユース勢相手に優勝争いを演じるなど年々力をつけ、総体、選手権で全国タイトルを連取して高体連を代表する存在となった東福岡。この日は、ロースコアに持ち込んだ九国大付の思惑通りに試合を運ばれた部分があったが、いい意味で自信とプライドを持った選手たちは負けない強さを発揮する。

 後半開始直後、CB児玉慎太郎主将(3年)の絶妙な配球で左サイドを抜け出した青木がゴールを狙うが、九国大付GK松山健太(3年)が勇気ある飛び出しで阻止する。東福岡は10分にMF青木真生都(2年)を中央に入れ、攻撃のキーマンである高江を左サイドへ移動。1ボランチの鍬先やCB児玉が攻め上がる回数を増やすなど明らかに1点をもぎ取りに行っていた東福岡は、高江と鍬先のワンツーでチャンスをつくった直後の18分にスコアを動かした。

 高江の左CKをゴールエリアへ飛び込んだ藤井が右足ダイレクトで合わせて待望の先制点。さらに藤川の右足ボレーなどで一気に追加点を狙う東福岡に対し、九国大付はFW藤悠月(3年)、MF新竹皓太(3年)という主力級のアタッカーを同時投入。奪ったボールを前線、スペースへ次々と入れ、抜群の高さを誇る今田や俊足FW永井絢大(2年)が競って東福岡の守りを“壊そう”とする。だが、東福岡は逞しさを増したDFリーダーの児玉やCB小野楓雅(3年)、左SB阿部海大(2年)が空中戦で競り勝ち、危険な位置でセカンドボールを拾わせない。九国大付は左DF原淳希(3年)が縦へ切れ込むシーンもあったが、児玉が「九国が力で押してくるのは去年経験できている。試合前からDFラインだったり、鍬先だったりとしっかり話し合うことができていた。いい形で対応できたのでよかった」と説明した東福岡は後半、相手をシュートゼロに封じて完封勝ちした。

 結果は最少スコアの1-0。それだけに児玉は「ボール支配率だったり、そういうところはしっかりできているけれども1点というのは不甲斐ない」と唇を噛み、森重潤也監督も「トータル的なところをもっと上げていかないと。全国のトップを目指すためにはそれが必要」と指摘する。全国で勝つためにはより、個々が貪欲に成長することが必要。それでも、相手の得意な“ステージ”であるパワープレーに持ち込まれても揺るがない強さがあった。全国2冠の偉業を成し遂げたチームから代は入れ替わったが、今年も県新人戦で4連覇を果たし、九州新人戦、そして総体予選と可能なタイトルを全て取り続けている。

 全国総体では打倒・東福岡に燃えるライバルたちとの戦いが待っている。かつて清水東高や四日市中央工高、市立船橋高、清水市商高、国見高が全国総体連覇を果たしているが、3連覇はどこも成し遂げていない。児玉は「ここで勝ったら間違いなく歴史に名を残せるので、みんなモチベーション高く挑めています。インターハイは夏、とてもキツい大会になる。体力面だったり、自分たちの力をもうひとつふたつ上げて臨みたい」。史上初の快挙に挑戦する夏。一つひとつの課題改善に取り組み、ストロングポイントを伸ばし、王者はどこよりも強く、成長した姿で夏を迎える

(取材・文 吉田太郎)
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