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[関西選手権]監督就任5か月の戴冠、伝統校のプライドと自主性の浸透…関西大3年ぶりVの背景

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[6.5 関西選手権決勝 関西大3-2大阪体育大]

 第45回関西学生サッカー選手権決勝が5日にヤンマースタジアム長居で行われ、関西大が3-2で大阪体育大に勝利。3年ぶり8度目の関西覇者となった。

 2月からチームを指揮し、就任わずか5か月で栄冠をつかんだ前田雅文監督。昨年までは関西大と同じ吹田市内にある大阪学院大でコーチを務めていた。対戦相手として母校を見ていた時は「何かが悪くて結果につながっていないという風には見えなかった。もっとやれる」と感じていたという。

 とはいえ、最初からうまくいったわけではない。シーズン前に学生たちに新監督のことを尋ねた時には、お互いの距離感をつかみかねているようなすっきりしない答えが返ってきたものだった。主将の石井光輝(4年=常葉学園橘高)は「前田さんは、僕らの意見を聞いて取り入れてくれた。だんだんと距離が縮まって監督の考えもわかってきた。」とコミュニケーションを取っていく中で、信頼関係が築かれていったと話す。

 しかし、リーグ戦では開幕3連敗と好発進とは言い難いスタートとなった。開幕の立命館大戦は「結果も内容も完敗だった」と前田監督は振り返る。だが、そこから負けても自分たちの目指すものと向き合い、ぶれずにサッカーに取り組めたことでチームは崩れることなく、徐々に結果として結びついていった。

 元々、関大は関西学生リーグの中でもトップクラスの技術力を持つ選手が揃っている。前田監督がその彼らに対し、一番要求したことは「準備」だ。「何も考えずに試合を迎えるのではなく、次の対戦相手の特徴をとらえて、関大は何が得意で何が苦手かを考えて準備を積み重ること」を求めた。

 週末だけ、試合だけの準備ではないということを理解させ、考えさせたことで自主性も出てきた。Jリーグという舞台で戦ってきた勝負師が経験に基づいて選手たちに伝えた準備が、チームとしての取り組みの意識に変革をもたらした。

 関西選手権ではリーグ戦で敗れた阪南大、立命館大とも対戦。実力校に対して粘り強く戦い、決勝まで勝ち上がった。「同じ相手に2回負けるのは関大としてプライドが許さない」という伝統校としての意地も、監督が選手たちの心に呼び起こさせた。自主性とプライドはピッチに立つメンバーだけでなく、スタンドから大声援を送る部員全員にも浸透している。

「関大は人数が多いので、去年は『誰かの陰に隠れてしまえばいいや』って思うところもあったけれど、今年は自分の置かれた立場で全員がやれていることで人数の多さというのが強みになり、プラスになっている」と主将の石井もチームの成長を口にする。

 関西のタイトルは獲得したが、チームの目標は『全員で日本一』。前田監督は「選手の実力はこんなものではないし、まだまだすべてにおいて伸ばしたい」とさらに高みを見据える。3年ぶりに出場する総理大臣杯、ホームの関西の地でチーム全員の力で頂点を目指す。

(取材・文 蟹江恭代)

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