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[総体]「学校のために、みんなのために俺が」DF陣にアクシデント続発もCB木下が救う!東海大高輪台が7年ぶり全国!:東京

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[6.18 総体東京都予選準決勝 東海大高輪台高 0-0(PK6-5)成立学園高 駒沢2]

 平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(広島)への出場2枠を懸けた東京都予選は18日に準決勝を行い、東海大高輪台高が0-0からのPK戦の末に成立学園高を下し、7年ぶり2度目の全国総体出場を決めた。

 耐え忍んで掴み取った勝利だった。東海大高輪台は川島純一監督が就任してから、パスで組み立てるサッカーを標榜し、スタイルとして来たが、「厳しい東京都を勝ち抜くためには、勝負所で耐えて勝ち切る力が必要。今年のチームはそれが出来るし、今年は『勝負の年』だと選手たちにも言い聞かして来た」(川島監督)と、志は変わらぬも、劣勢で跳ね返せる力をコツコツと磨いて来た。

 全国総体出場権が懸かった準決勝の相手は成立学園。西羽開と中能健人の両SBの豊富な運動量を武器に、サイドから積極的にしかけて来る成立学園に対し、東海大高輪台は佐々木駿木下勇樹のCBコンビを軸に、組織的な守備で応戦し、チャンスを作らせなかった。

 だが、順調な試合運びを進めていた東海大高輪台にアクシデントが襲いかかる。後半15分にDF小林陸玖が熱中症の症状を訴え、永野颯人と交代をすると、27分にはDFリーダーの佐々木までも同じ症状でMF水野団と交代をしてしまった。DFライン2枚が交代するという緊急事態となったが、ここで奮起したのが、木下だった。

「会場に来ている人のほとんどが、この試合は成立が勝つと思っていたと思う。ネットを見てもそうだった。でも、僕たちもここで全国に出るために入って来た。この試合に懸けていた」と、立ち上がりから気合いみなぎるプレーと声で仲間を盛り立てていた彼の集中力は、さらに研ぎ澄まされた。

「佐々木は技術があって、ラインコントロールもうまい。僕はあいつのような上手さが無いし、ピッチにいる11人の中で一番下手。なので、気合いと声だけは絶対に絶やさないことはいつも心がけていた。でも、佐々木がいなくなったことで、もう『学校のために、みんなのために俺がやらなきゃ』と強く思ったんです。そこからはもう跳ね返すことだけでなく、代わりにCBに入った(ボランチの)袖山(翼)のカバーリングも意識した」。

 延長戦に入ってからの彼の守備は凄まじかった。常に周囲に目を配り、スペースを埋めるだけでなく、ここぞと言う場面では身体を張った。延長後半8分には、成立学園の猛攻を必死で弾き返すも、セカンドボールを拾われ、ゴール前に出来たエアポケットにクロスを送り込まれてしまう。途中出場の成立学園MF鈴木亮祐が決定的なチャンスを迎えたが、「みんながボールウオッチャーになっているのが分かった。だからこそ、自分は絶対に足を止めないでおこうと思ったら、相手がスペースに入り込んで行くのが見えた」と、木下ただ一人が反応し、鈴木のゴール至近距離からのシュートを、完璧にブロックしクリア。クリア後に雄叫びを上げるなど、まさに気迫がみなぎったプレーだった。

「シュートブロックはいつも練習をしていた。数的不利や数的同数の中で、絶対に相手のシュートコースに入って枠に飛ばさせない、最低でも楽に打たせないトレーニングを徹底して来た。それが出たと思う」。

 気迫と責任感と、積み上げて来た技術。この三位が一体となった木下の抜群の存在感もあり、試合は0-0のままPK戦までもつれこんだ。そして、木下の気迫を受け継いだGK角田篤生が2本のキックをストップし、チームに勝利とインターハイ出場権をもたらした。

 川島監督が勝負の年と位置づけた今年、『勝ち切るサッカー』で7年ぶりとなる全国総体切符を手にした東海大高輪台。「全国でも自分が気持ちでチームを引っ張って行きたいし、今日のように何が起こっても、全員で戦えるチームにしたい」。待ちに待った全国に向け、木下の闘志はさらに燃え上がった。そして、川島監督も「全国に出るのではなく、全国に勝ちに行く。そうなるようにさらに勝ちきれるチームにしたい」と、闘志を熱く燃え上がらせていた。東京以上に「何が起こるか分からない」全国の舞台で戦い切るために、今以上に戦う集団にしなければいけないことを、彼らは十分に認識している。

[写真]アクシデント続発の東海大高輪台DF陣を救った木下(中央)がPK戦勝利を喜ぶ

(取材・文 安藤隆人)
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