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度重なる逆境もDF井林「それでもやらなきゃいけない」…試練乗り越えた東京V

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[6.19 J2第19節 東京V2-1京都 味スタ]

 逆境に次ぐ逆境を跳ね除けた。東京ヴェルディ京都サンガF.C.に2-1の逆転勝利。5試合ぶりの勝利を手に入れた。累積警告や故障による主力の不在。早い時間帯での負傷交代やレフェリングに泣くシーンもあった。それでもぶれずに戦い続け、勝ち点3を手に入れた。

 9試合負けなしの4位・京都をホームに迎えるなか、DF安在和樹とFW平本一樹が出場停止。昨季のチーム内得点王FW南秀仁とMF安西幸輝は負傷でベンチ外。向かい風吹く中で始まった一戦では、前半11分にFW高木大輔が脳震とうの疑いに加え、右足負傷で交代した。次々と試練が襲い掛かった。

 前半17分には味方のパスに抜け出たMF澤井直人がPA手前でGK菅野孝憲と交錯。GKの手がゴールへ向かう澤井の足にかかっているように見えたが、『決定機阻止』とは認められず、菅野は警告を受けるに留まった。判定に不満を募らせたFWドウグラス・ヴィエイラやMF中後雅喜が主審に詰め寄るが覆ることはなく。胸にわだかまりを持ったまま時間は進んだ。そして前半32分に失点する。

 1点を追う展開となった前半37分には、相手のハンドが疑わしいシーンもあった。MF井上潮音の右CKがPA内正面へ飛び込んだ京都MFアンドレイの右手に当たったのだ。しかし、ノーホイッスル。前半を0-1で折り返した。

 キャプテンのDF井林章は「(レフェリングに関して)個人的に思っているところがある人は多いと思う」と前置きしつつ、「今日に関しては自分も目の前でハンドを見るようなシーンがありました。目の前にいたからこそ、切り替えづらいような判定がありましたけど、それでもやらなきゃいけない。そこで崩れなかったから失点も1で済んだ」と振り返る。

 総力戦で乗り切ろうとした一戦で、度重なる“試練”により、メンタルは乱されたことだろう。それでも選手たちは気持ちを切らさなかった。冨樫剛一監督が「(ハーフタイムには)サッカーの中で結果を変えていこうと話そうと思いましたが、その前に選手たちは落ち着いていた」と明かしたとおり。選手たちそれぞれ思うところはあれど、勝利だけを見据えて、各々のなかに渦巻く思いを消化。ピッチ上で結果を出すこと、その一点に集中した。

 そして後半に待っていたのは鮮やかな逆転劇。後半19分に澤井のゴールで追いつくと、後半30分にはMF高木善朗のFKからDF井林章がバックヘッドで勝ち越し弾。「あそこを狙えるほど、自分は上手くないので。当てたらいいところに飛んでいった」と殊勲のキャプテンは笑い、「バックヘッドは狙ってはいるんですけど、あんないいところにいくとは思わなかった」と振り返る。勝ち越した東京Vはそのまま逃げ切り、2-1で勝利した。

 とはいえ井林には後悔があるという。得点後、井林の元にはアシストの善朗をはじめ、中後や井上、DF平智広、MF杉本竜士が一目散に駆け寄っており、ピッチ上のメンバーと喜ぶので精一杯。ベンチ前に走り込むことはできていなかった。

 主将は「(得点後の)パフォーマンスが分からなかった。ベンチの皆のところにも行けなかったし、せっかく逆転したんだから、もう少し時間をかけろよと、そこは反省点です」と冗談交じりに話した。

 これでもかと迫り来る試練を跳ね除け、総力戦で勝ち点3を手に入れた。昨季は若いチームの勢いで躍進をみせていたが、若さゆえの脆さも併せ持っていた。しかし、今ではこのような展開でも崩れずに耐え切る勝負強さ、メンタリティも身に着けはじめたように見受けられる。前節・千葉戦では0-2から追いつき、今節では0-1からの逆転勝利だ。

 次節・C大阪戦は2戦連発中の澤井が累積警告による出場停止となり、負傷した大輔の出場は不透明な状況。それでも、このくらいの不安要素は吹き飛ばすほどの逞しさが、チームの底にはあるはずだ。今季は17位に低迷しているものの、選手各々とチームは後退している訳ではなく、ささやかながらも確実に前へ進み続けている。この勝利を契機に、再び5連勝した昨夏の再現といきたいところだろう。

(取材・文 片岡涼)

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