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[EURO現地レポート]“悪運”の強さ発揮するポルトガル、準々決勝残り3試合の展望は…

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 EURO2016もいよいよ準々決勝が始まった。ここからは1日1試合しか行われないので、現地観戦であれ、テレビ観戦であれ、見る側としては楽になる…はずだったが、個人的な話で言うと、マルセイユからリールへの列車が1時間遅れということで、マルセイユ駅でこの原稿を書いている。

 ポーランド対ポルトガルが行われたマルセイユから、ウェールズ対ベルギーの舞台となるリールへの移動時間は5時間弱。大会中に爆発物が仕掛けられたとの理由で駅が封鎖されたり、ストライキで列車が運休したり、さまざまな形でトラブルが多発している。

 1日1試合となることで、チーム間のコンディショニングにもバラツキが出てきそうだ。準々決勝1日目となった6月30日に試合を行ったポルトガルは7月6日の準決勝まで中5日あるが、3日に準々決勝を戦うフランス対アイスランドの勝者は中3日の7日に準決勝を行う。そもそもフランスは決勝トーナメント1回戦から準々決勝までが中6日と間隔が開いており、ここからは各チームにとってマネジメントの腕の見せ所といったところだろう。

 各チームのキャンプ地はフランス各地に散らばっており、アクセスが良く、施設のそろったパリ周辺が最も多い。ちなみにドイツ代表は、スイスとの国境にある高級リゾート地のエビアンでキャンプを張っている。ブラジルW杯でもそうだったが、選手を徹底的にリラックスさせ、喧騒から隔離しつつも隔離されているとは感じさせない場所を選ぶのがうまい。

 さて、さすがにベスト8ともなれば、特徴的なチームばかりが残っている。ポルトガルとポーランドの試合は、クリスティアーノ・ロナウドロベルト・レバンドフスキというエース対決だった。ようやく結果の出たレワンドフスキに対し、どうにも力の出ないC・ロナウド。後半に2度、延長に入ってからも味方のクロスやラストパスを空振りした。しかもPK戦では味方の後ろに隠れ、今にも泣き出しそうな表情まで見せていた。

 チームの総合力ではポーランドが上回っていたように感じたが、ポルトガルは悪運が強いというか、実にしぶとい。グループリーグは3試合連続ドロー。決勝トーナメント1回戦も延長戦の末、クロアチアを下しており、ここまで5試合を戦って90分間での勝利は一度もないにもかかわらず、ついに4強入りを果たした。MFレナト・サンチェス(ベンフィカ)はスピード、キレ、そして落ち着きと、18歳らしからぬプレーを見せた。フェルナンド・サントス監督が「もっともっと成長する」と話す期待の新星は来季、バイエルンへの移籍が決まっている。

 7月1日に行われるウェールズ対ベルギーの試合はベルギーに分がありそうだが、ウェールズはMFガレス・ベイル次第か。ベルギーは個の能力が高いものの、チーム戦術が不明瞭で、フィジカル頼みのカウンターに寄ってしまうのが欠点。クラブチームに比べ、準備期間が短い代表チームでの戦術浸透の難しさを感じさせる。

 翌2日のドイツ対イタリアは前回大会の準決勝と同一カードで、ハイレベルな内容が楽しみだ。スペイン戦を見る限り、イタリアの戦い方は恐ろしいほど自分たちの哲学に徹底しているし、GKジャンルイジ・ブッフォンも抜群の安定感を誇っている。ただし、スペインの最終ラインと比べると、ドイツの最終ラインのほうが上。攻略は簡単ではないだろう。

 準々決勝ラストゲームとなる7月3日のフランス対アイスランドも注目の一戦だ。チーム力とモチベーションはともに高い。イングランド撃破で波に乗るアイスランドは侮れない。しっかりとした守備戦術があり、技術も決して低くない。チームのディシプリンではアイスランドが上か。楽しみではあるが、04年大会を制したギリシャほどの手堅さと戦力はないようにも思う。

(取材・文 了戒美子)

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