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「優勝しないと評価されない」タイトルへの渇望、ぶれない早稲田大が明治大を下す:準決勝

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[7.2 アミノバイタルカップ2016準決勝 明治大1-2早稲田大 味スタ西]

 第40回総理大臣杯全日本大学トーナメント(総理大臣杯)の関東予選にあたるアミノバイタルカップ2016 第5回関東大学サッカートーナメント大会の準決勝が2日に行われた。第1試合では明治大早稲田大が対戦。一時は追いつかれたものの、突き放した早稲田大が2-1で勝利し、準決勝進出を決めた。

 勝利したのは早稲田大。過密日程ゆえの疲労が襲い掛かるなか、選手たちを突き動かしたのはタイトル獲得への渇望だった。今大会は既に8強入りを果たし、総理大臣杯出場権は手にしているため、“消化試合”という見方もできた。しかし海老茶の選手たちは「僕たちは総理大臣杯予選というよりも、アミノバイタルカップというカップ戦だと思ってる」と口を揃える。

 チームスローガンに『WASEDA THE 1ST』を掲げ、どんなときも頂点を目指してきたチームは、そのスタンスをぶらすことはない。手にできるタイトルはすべて勝ち取るという熱い心意気で、“関東王者”となるべく試合へ臨んだ。

 3回戦(準々決勝)から中2日で行われた今試合。決勝および3位決定戦が中0日で行われるということもあり、明治大は大幅なターンオーバーで臨んだ。準決勝(日本体育大・4-4PK10-9)で延長PKを制する死闘を演じたこともあり、今試合ではGKやCB2人を含む5人を変更。GK八谷惇希(4年=清水ユース)がゴールマウスを守り、DF鳥海晃司(3年=千葉U-18)とDF上夷克典(2年=鹿児島城西高)らが先発した。

 対する早稲田大は負傷から戻ってきたエースFW山内寛史(4年=國學院久我山高)がこの日もベンチスタート。とはいえ3回戦からは、1人の変更のみ。MF相馬勇紀(2年=三菱養和SCユース)がメンバー外で、MF今来俊介(3年=桐光学園高)が先発した。

 試合前に相手の先発を見た早稲田大FW山内は「明治はアミノ杯でずっとメンバーを変えながらここまで来ていたので」と前置きしつつも、「率直に少し悔しいというか、メンバーを見たときは、このメンバーには負けられない」と思ったという。

 また主将のDF新井純平(4年=浦和ユース)は「誰が出ても明治は明治。自分たちはそれ以上にワセダらしく。走り勝ったり、がむしゃらに、ひたむきに戦うというのをぶらさずにやっていくしかないと思いました」と明かした。

 照りつける日差しに加え、疲労の影響で互いに出足は鈍かった。明治大は後方からじっくりとボールをつなぎ、対象的に早稲田大は縦への攻撃が基調。裏を狙ってはサイドから仕掛けていった。前半7分にはMF小林大地(4年=流通経済大柏高)のパスから抜けたFW中山雄希(4年=大宮ユース)がPA右からシュートを放つも、GK八谷に止められる。前半29分には相手ボールを奪ったMF鈴木裕也(3年=武南高)が中央へ折り返す。小林が詰めるも相手にカットされた。

 前半34分には明治大がセットプレーの流れから決定機。MF道渕諒平(4年=仙台ユース)の蹴りこんだボールから、こぼれを拾ったFW木戸皓貴(3年=東福岡高)は大きくクロスバー上へ打ち上げてしまう。互いに決定力を欠き、0-0で前半を終えた。

 迎えた後半、立て続けにチャンスをつくったのは明治大。開始2分にはPA手前右から道渕のFKからDF岸本英陣(3年=帝京大可児高)がヘディングシュートを打つも枠を外れる。同4分にはPA右から仕掛けたFW丹羽詩温(4年=大阪桐蔭高)がシュートまで持ち込んだがサイドネット。なかなか決めきれない。

 後半11分、早稲田大が動く。FW中山雄希(4年=大宮ユース)に代わり、エースの山内を投入。この交代が流れを変えた。後半20分に敵陣内右サイドで今来が相手ボールをカット。前進して中へ折り返す。ファーサイドのMF秋山陽介(3年=流通経済大柏高)の横パスを受けた山内がドリブルから左足シュート。ポスト右を叩いたボールを小林が右足で押し込んだ。早稲田大が1-0と先制に成功する。

 後半26分には早稲田大に決定機。小林の左CKからPA内正面のDF熊本雄太(3年=東福岡高)がヘディングシュート。3戦連続CKから頭で決めているDFの一撃に期待されたが、クロスバー上へ逸れてしまい、追加点はならない。

 すると後半32分には関東大学リーグで首位に立つ明治大が意地をみせた。丹羽のパスを受けたMF小野雅史(2年=大宮ユース)が右クロス。詰めていたDF岩武克弥(2年=大分U-18)が右足ボレーを決めた。1-1と振り出しに戻した。

 一進一退の攻防が続く。強まる日差しとともに疲労が色濃く見え始めるが、早稲田の選手は二度目のリードを奪うため、懸命に走りきる。相手のシュートコースを1ミリでも削るべく、必死に足を伸ばし、攻めては1点をもぎ取ろうと奮闘した。

 ひたむきな姿勢は報われる。後半アディショナルタイム1分、相手クリアを拾った鈴木裕が前へつなぎ。PA右へ抜けた山内がドリブルで運ぶとGKとの1対1から冷静に右足で決めた。終了間際の勝ち越し弾。エースFWが仕事を果たし、早稲田大が2-1に突き放す。

 追いつきたい明治大は、そこから2人を交代。MF佐藤亮(1年=FC東京U-18)とFW中川諒真(1年=浜松開誠館高)のフレッシュな選手を送り、最後の猛攻を仕掛けるが5分間のアディショナルタイムで得点は生まれない。2-1で試合は終了し、早稲田大が決勝行きを決めた。

 昨季の関東大学リーグでは早稲田大が優勝し、明治大は準優勝。今季の対戦成績では、6月5日に行われた前期リーグ第10節で明治大が1-0で勝利していた。早稲田大にとっては“リベンジマッチ”の意味合いもあった一戦。熱いプレーは結果につながった。

 試合後、新井主将は勝利にも頬を緩ますことはなく、「この試合に勝っても何も意味はない」と言い切った。「自分たちにとっては優勝がすべて。優勝しないと自分たちは評価されない。ワセダにはそういう歴史や伝統がある。『WASEDA THE 1ST』の『1ST』が全て」。

 対して、リーグ戦の対戦時に決勝点を挙げた明治大の10番・木戸は「みんなが疲れていて歯車が合わない中で自分で打開しようと思ったけれど、なかなか……。チャンスは1、2回あったけれど、そこを決めきる差が出てしまった」と険しい表情。「お互いに前の試合が延長戦までいっていて、こういう天候のなか、相手の方が気持ちで上回っていたんじゃないか」と唇を噛んだ。

 消化試合という言葉は、早稲田大には存在しない。どんなときも全力で戦い抜き、全ての勝利を手中に収めるべくやっている。新井主将はタイトルへの渇望は「どこよりもあると言えます」と胸を張った。海老茶の戦士たちがしつこく、泥臭く、タイトルを掴みにかかる。

(取材・文 片岡涼)

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