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夏の全国間もなく開幕!日々の練習がもたらした市立船橋の強さ

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 夏の高校日本一を争う平成28年度全国高校総体 「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技が、7月27日から広島県内で開催される。昨年の準優勝校であり、史上最多8度の全国総体制覇を成し遂げている市立船橋高(千葉2)は、27日の1回戦で32回目出場の伝統校・秋田商高(秋田)と激突。昨年の悔しさを胸に抱くV候補が夏本番の戦いをスタートさせる。

 ともにプロ入りが有力視されている杉岡大暉主将と原輝綺の両CBをはじめ、10番MF高宇洋、MF金子大毅、MF西羽拓、SB真瀬拓海と昨年度の全国大会を経験してきた3年生やSB杉山弾斗、SB桧山悠也という年代別日本代表の2年生、今年台頭してきたMF阿久津諒、MF野本幸太、GK井岡海都、FW村上弘有ら充実した戦力を誇る。全国トップレベルや国際経験での戦いを経験した選手たちを複数擁する今年は前評判から上々。高校年代最高峰のリーグ戦、プレミアリーグEASTではボールを握って攻めるという特色を出すと同時に、毎週違う対戦相手を研究し、異なる術で差をつけてJクラブユース勢から白星を掴み、首位争いを演じている。

 全国総体ももちろん優勝候補。個人、チームともに注目集まる名門だが、彼ら全てが入学当初からトップレベルの力を有していた訳ではない。全ては練習場で磨かれた力。杉岡は言う。「ユース落ちとか街クラブの選手とか、どちらかというと悔しい気持ちを持って市船に来ている選手が多い。それプラス、プレミアリーグっていう上のレベルの選手と試合できる環境があるからこそ、明確な目標ができる」。

 成功ばかりではない。トレーング、試合で何度も失敗を経験した。その度に成長してきた実力者たちがお互いを高め合いながら日々繰り広げている競争。精度、強度、切り替えの速さにこだわった攻防がピッチで表現されるが、より高い意識の持ち主たちが、またそのトレーニングレベルを引き上げている。高は「将来的にプロとかでやりたいと思っているので、こういうところからしっかりと、『他と違ったな』と思われないといけない。プレーでも、人としての行動でも、常に先頭切っていけるくらいじゃないといけないと思っている」。「日本一になる」「プロになる」という高い目標に対して、選手、スタッフが妥協することなく、真剣にチャレンジしているからこそ、目の前の壁を乗り越えて成長することができている。

 市船のトレーニングはボールを持っている時を中心に、ボールを持たれている時、ボールを失った瞬間、そしてボールを奪った瞬間の4つを重視。細かな立ち位置まで確認するなど、戦術的なトレーニングが多いという。原は「相手チームの対策っていう練習が極めて多い。他の高校と違って細かいポジションまで相手がこう運んだらどう動くかとか、より相手を意識して見て、味方がどこに立っていてという部分まで細かく合わせているので、試合中に何が起きても動じずに臨機応変にプレーできる」。常勝を求められる市立船橋だが、目先の1勝を勝ち取ることだけを目指しているのではない。「言われていることが高校レベルじゃなくて、トップレベルになれるように、ということ」(杉岡)。1回1回のトレーニングの積み重ねによって、個々が将来的に様々なスタイルのサッカーに対応できるような、幅のあるプレーヤーに成長しているのだ。

 チームとしての動きを細かく合わせながら、同時に個を伸ばす努力も欠かさない。杉山は「(朝岡監督が)練習中にすごくはっきりと言ってくれるところがある。受け方が悪かったりすると、『全然変わってないんだよ』とか言ってくれる。相手を仮想した練習の中でも個人としてやれることはあるので、そこで自分を伸ばしていく。あとは自主練ですね」。取材日も選手たちは全体練習後に人工芝グラウンドを活用して、各々テーマを持ってボールを蹴り続けていた。

 それぞれが日本一のトレーニングを意識して行っている。それでも高は「まだまだ」と指摘する。「(朝岡隆蔵)監督が練習中にも結構指摘するので。でも、究極を言ったら、監督が言う前に自分たちで修正していけるくらいのトレーニングレベルにすれば、また1段階2段階強くなると思っている」。わずかな部分までのこだわりが拮抗した勝負で差となることも痛感してきた。昨年度はファイナルへ進出した夏、そして冬も優勝校の東福岡高にPK戦で敗戦。市立船橋は年間を通して「強い」という評価を得たが、より全国にインパクトを残したのは2冠王者に輝いた東福岡の方だった。

 選手たちは目の前の一戦に集中することを強調するが、昨年の悔しさは決して忘れていない。原は「結果出し続けないと、勝たないと評価されないと思っている。勝って当たり前のチームって言われているんでプレッシャーはありますけれど、上に行けば行くほどそういうプレッシャーがある。そのプレッシャーを良い起爆剤にして頑張りたい」。悔しさを糧に昨年以上に意識高く過ごしてきた日常のトレーニング。PK戦含めて勝負で勝ち切ることにこだわり、この夏、真の強いチームとなる。

(取材・文 吉田太郎)
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