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名門復権へ未来を支える原石たち、東京Vユースの現在地

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 名門復権の未来を担う選手たちは今、原点へ回帰して足元を見つめている。ここ5年間で約20名ものJリーガーをトップチームへ送り出してきた東京ヴェルディユース。直近3年は国内無冠という状況下、再び“日本一”へ輝く時を目指し、トレーニングへ励んでいる。

 現在の東京Vユースは高円宮杯U-18プリンスリーグに所属。プレミアリーグへの昇格、そしてクラブユース選手権などでの日本一を目指している。プリンスリーグでは5試合を終えて、浦和ユース、三菱養和SCユースと勝ち点10で並び、3勝1分1敗の3位。またクラブユース選手権(U-18)関東大会決勝トーナメントでは4強入りして全国切符を手に入れた。今はプリンスリーグを戦いながら、夏のユースクラブ日本一決定戦であるクラブユース選手権(U-18)へ向けて準備をしている状況だ。

 昨季から指揮を執る藤吉信次監督は「元々ポテンシャルの高い選手は多いけれど、まだまだ完成されていない。どういうサッカーをするか、こういうときにどうするかというのは出来ていないけど、チームとしては、いい方向にはいっているんじゃないかな」とここまでの手応えを語る。

「勝負のとき。特にリードしたときの試合運びだったり、“試合巧者”みたいなところは、まだまだ足りないかなというのがあるので、そこは特に伸ばしていきたいかなと思ってます」

 2011年、2014年には、Jリーグアウォーズにおいて、最優秀育成クラブ賞を受賞。ここ5年間でユースからトップへは20人を輩出しているように、育成で多くの結果を残してきた。実際にユースでは2010年、2011年にはクラブユース(U-18)選手権を連覇し、2012年にはプレミアリーグイーストで優勝している。しかしながら、直近3年間は国内無冠。2015年にゴシアカップの世界タイトルを手にしたものの、国内の主要タイトルからは遠ざかっている。

 そんななかで迎えた今シーズン。藤吉監督は選手たちに対して「日本一のチームをつくる」と目標設定したという。意外にもサッカーでの日本一だけを示しているわけではなく、指揮官は「どんな『日本一』でもいいので、挨拶でもいいし、元気の良さ日本一でもいいし、なんでも日本一を目指そうと話しました」と明かす。

 キャプテンを務めるDF深澤大輝(3年)は「もちろんサッカーで日本一になりたいです。ですけど、その前に他の部分でも日本一になること。挨拶とか、部室をきれいにするとか、そういう部分を藤吉さんも求めていると思うので。そういうところから一つずつやっていくのが、サッカーで日本一につながるのかなと思います」と理解を示した。原点回帰し、規律ある日々の生活とピッチ上をリンクさせ、まずはチームとしての土台を作っていく。

 これまで東京Vユースを率いてきた指導者たちの多くが「ここから何人のプロを出せるかが自分の仕事」と語ってきた。それは今も変わらない。ユースからのトップ昇格、あるいはユースから大学を経てのプロ入り。幼い頃から東京Vというクラブで育った選手が最終的にプロの舞台へ羽ばたいていけるように、その下地をつくるのがユースなのだ。

 藤吉監督は未来のプロ選手を育てる上で大切にしていることについて、「僕もプロでやっていましたけど、本当に厳しい世界なので、そこで打ち勝っていくことが大事だし、ライバルに対して、正々堂々と戦えることが一番大事だと思う。そのためには自分をしっかり持って、サッカーに対して真剣に生活できるようにしていくことが必要。社会人を育てるというよりも、サッカーを通じてプロを目指すことで、社会人の準備ができたらいいなと思いますね。例えば頑張ることができれば、どんな社会に出ても頑張れるだろうし、そういうのは頭に入れながらやっています」と話した。
 
 東京Vには脈々と受け継がれている“ヴェルディ”らしさがある。人によって言葉は違えど、身体に染み付いたそのテクニックや相手を軽やかに相手をいなすプレー、観ているものの意表をつく様はその象徴ともいえる。藤吉監督は“ヴェルディらしさ”について、「一言ではなかなか言えないかもしれないけれども、サッカーの本質である“勝つ”とかを求めながらも、楽しいサッカーというか、相手の逆を取ったり、相手の嫌なことをできるとか、ボールを大事にしながらも、見ている人が“そんなことするの?”という驚きのあるサッカーがヴェルディらしいサッカーだと思うし、そこは求めていきたいな」と語った。

 現在の東京Vユースは、その“ヴェルディらしさ”を体現できているのか。指揮官は「まだまだ相手の嫌なところ、逆を取るとかは、もっともっと出来るんじゃないかなと。いい選手が多いので、もっと出していきたいなと思う」と期待を寄せ、「やっている選手たちは楽しくサッカーをやっていると思うので、より勝負にこだわって、真剣勝負をすることで、そういう楽しみを味わって欲しいなと思う。まずは真剣勝負ができるか。そのためには真剣に練習できるかどうかが一番大事かなと思います」と話した。

 未来の東京Vを担う選手は、必ずやここから生まれる。まずはプレミア昇格、そして日本一へ。東京Vユースはピッチ外での規律を重視するなど、初心に立ち返っている。ヴェルディらしい“やんちゃさ”と規律。相反するもののバランスが保たれ、真剣勝負の日々を重ねていった先に結果はついてくるはずだ。

(取材・文 片岡涼)
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