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[総体]青森山田、プライド見せつけ6発大勝!

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[7.27 全国高校総体1回戦 中京大中京高0-6青森山田高 みよし運動公園陸上競技場]

 平成27年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技1回戦。広島県のみよし運動公園陸上競技場での第2試合には、優勝候補の青森山田高(青森)が出場。総体4年連続19回目の出場となる中京大中京高(愛知2)を相手に、前半だけで4ゴールを挙げるなど圧倒し、6-0で大勝。明日28日の立正大淞南高(島根)との2回戦へコマを進めた。

 昨年度はプレミアイースト2位、選手権4強という強さを見せつけた青森山田だったが、総体は初戦で久御山(京都)に1-2で敗戦を喫した。「昨年はやれなかったというよりやらなかった。必要以上に相手をリスペクトし、相手にかわされることを怖がりラインを下げてしまった。今年はあの試合を経験した5人のメンバーが残っている」。青森山田高の黒田剛監督も1年前の試合を忘れていなかった。

「夏の大会は恐れることなく、ガンガン走らせる。プレミアに参戦して今年で6年目ですが、これまでいろんなパターンを持っていないと勝てない相手と対戦してきました。カウンターも堅守速攻も、相手に応じて戦い分ける。この戦い方ならば、落ち着いて相手をゼロに抑えていれば点は取れる」

 だから、今年度の青森山田は強気である。その姿勢がさっそく結果に結びついたのが前半7分。MF高橋壱晟(3年=千葉加入内定)からFW鳴海彰人(3年)、MF郷家友太(2年)とつながりシュート。こぼれ球を鳴海が押し込んで先制。その4分後には高橋が豪快なミドルを叩き込んで追加点。早々に2点をリードした。

「プレミアで戦っている時と同じリズム、ムードで最初から勢いよくいこうと。2点目までを早く奪えたことでいい方向に向かった」(黒田監督)

 青森山田の勢いは止まらない。21分、左CKで高橋からのボールをニアに飛び込んだ鳴海が頭で合わせ3点目。鳴海は33分にもペナルティエリア内でボールをトラップすると浮き球を豪快にボレーで決め前半で早くもハットトリックを達成。4-0で前半を折り返す。中京大中京高は、ボールを持ってもフィニッシュまで中々到達できず、前半のシュートは17分のFW本山遊大(2年)が放ったミドル1本に抑えられた。

「ハーフタイムも選手たちだけでガーッとミーティングをしていた。精神的にもいい状態」(黒田監督)という青森山田は後半開始直後にもヘディングでつないだボールを最後は鳴海が押し込み5点目。後半10分には中央から郷家、MF住永翔(3年)とテンポよくつないだパスを鳴海が受け、左足でチーム6点目、自身この試合5点目のシュートを決めた。

 圧巻の5ゴールを挙げ、ベンチに退いた鳴海は「こんなに決めたことはありません。いつもは力んでふかしてしまうケースがプレミアであって、今日はとにかく“低く、低く”ということだけ考えて試合に臨みました。調子は事前合宿から上がってきたと感じていた。青森山田はディフェンスから入るサッカー。そのためには前線の自分からプレスをかけないと良いゲームができません。前からひたすら走っているうちに調子が上がってきました」と振り返る。ただ「自分の得点よりもチームの優勝しか考えていません」と付け加えることを忘れなかった。

 対する中京大中京高は後半33分、本山が粘ってボールを奪いシュートを放ったシーンが最もゴールを予感させるシーンだった。しかしシュートは無情にもポスト横に。攻撃の選択肢が複数用意されていて冷静にチョイスする青森山田高に対し、中京大中京高の攻撃はDFのチェックに合っているうちに選択肢がなくなっていく。そのようにも見えた。

 それでも青森山田の守護神、U-19日本代表GK廣末陸(3年=FC東京加入内定)は反省を欠かさない。「今日はプレミアのホーム戦のつもりで試合に臨みました。結果として、6点取れた攻撃面はいいことですが、守備面は無失点の中でも修正すべきことが出ました。背後を狙ってくるとみていた相手が後半、足元にボールを入れてきてDFが入れ替わされてしまうシーンやSBのリスク管理が希薄なシーンなどが見受けられたので」

 中京大中京高の岡山哲也監督は、この盤石な青森山田高の戦い方を次のように感じていた。「パワフルで、個でもグループでもチームでもプレーの決断が早い。互いを理解しあっている信頼関係が確立されていると感じました」。中京大中京高の選手も、個々では技術レベルの高さを感じさせるプレーを披露した。だが得点には結びつかず、逆に大量失点を喫した。この差はどこにあるのだろうか。

「最後に相手を見て落ち着いてプレーできるか。そこに尽きると思います。互いに相手ゴール前では人も密集し、判断時間もない。その中で、例えばタメやスペースなどを冷静に見出して適切なプレーができるか――それは個としてもグループとしても、です。今日、うちは攻撃面である程度狙っていた形はできました。でも最後の落ち着きが欠けていた。対して相手には落ち着きがありました」

 青森山田高の強気の源にはプライドがある。「プレミアで戦い続けていることのレベルの違い、プライドを相手に押し付けないと。対戦相手は青森山田に対して緊張とリスペクトを持ってくる。それに対して我々は総力で圧倒しないといけない」(黒田監督)。「常にチャレンジャー」という気持ちではなく、相手の挑戦を正々堂々と受け止める。昨年の総体敗戦から学んだ青森山田高、その姿勢は潔く爽快なほどポジティブだ。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 伊藤亮)
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