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[総体]「もっと突き抜けるチーム」へ、市立船橋が昌平の快進撃止めて9度目Vへ王手!!

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[8.1 全国高校総体準決勝 昌平高 0-1 市立船橋高 広島広域公園第一球技場]

 16年夏のファイナルは千葉県勢対決に!! 平成28年度全国高校総体「2016 情熱疾走 中国総体」サッカー競技(男子)は1日、準決勝を行い、市立船橋高(千葉2)がFW太田貴也(3年)の決勝点によって昌平高(埼玉1)に1-0で勝利。市立船橋は8月2日の決勝で流通経済大柏高(千葉1)と戦う。

 スコアは1-0。最少スコアの得点差で市立船橋を脅かすシーンもつくった昌平だが、藤島崇之監督は「市船さんの方が余裕もってやっていた」と振り返り、司令塔のMF針谷岳晃(3年)も「プレスが速かった。(チームとして)今までで一番速くてボールを失う回数が多かった」と首を振った。今大会、3連覇を狙った東福岡高や静岡の名門・静岡学園高などを破る快進撃を見せてきた昌平だが、それは“横綱”市立船橋の強さの前に止められた。
 
 市立船橋の朝岡隆蔵監督は「ちゃんと相手を尊重して、よくやってくれたと思いますよ」と選手たちを讃える。相手にボールを持たれる時間帯もあった。特に前半は相手のキーマン・針谷を上手く捕まえきれず、俊足FW本間椋(3年)の脅威も感じながらの試合に。DFラインが押し下げられてスペースもつくられていたが、市立船橋はその本間に自由を与えず、昌平の攻撃を最後のところで必ず食い止めていた。1人突破されてもその先で必ず潰して決定機を許さず。逆にボールを握り返すと、プレスを剥がす形で中盤を取って、1タッチパスを交えてスピードアップ。11分にはMF郡司篤也(1年)のスルーパスから太田が決定的な左足シュートを放ち、14分には右サイドを深く切れ込んだ10番MF高宇洋(3年)の折り返しから松尾が右足を振りぬく。これは昌平GK緑川光希(2年)のビッグセーブに阻まれ、また郡司のループシュートがわずかに右ポスト外側へ外れるなどなかなか先制することができなかったが、30分にスコアを動かした。

 高、MF西羽拓(3年)と繋いで右サイドのスペースへボールを配球すると、スピードに乗って駆け上がってきたSB真瀬拓海(3年)のラストパスに太田がスライディングで飛び込む。足先でわずかにボールに触れた太田は近くに落ちたボールを倒れこんだまま左足でゴールへ押し込む。これがゴールラインを越えて貴重な先制点となった。

 市立船橋は後半もセットプレーや高の決定的な一撃など決定機をつくるが、昌平もGK緑川が好守を連発して追加点を許さない。その昌平はパスワークやドリブルで中へ入ろうとしてもMF阿久津諒(3年)やMF金子大毅(3年)に外へ押し出され、また俊足FW本間はこちらもスピード自慢のCB原輝綺(3年)と杉岡のコンビに消されて相手を脅かす攻撃をすることができなかった。それでも17分、MF佐藤大誠(3年)のループパスで左サイドを深く切れ込んだMF松本泰志(3年)の折り返しのこぼれを針谷が右足シュート。GK頭上を突いた決定的な一撃だったが、GK井岡海都(3年)のファインセーブによってはじき出された。

 終盤は互いにチャンスをつくり合う展開に。25分、市立船橋はU-17日本代表SB杉山弾斗(2年)の左足クロスから交代出場FW村上弘有(3年)が抜けだして決定的な右足シュート。だがここでもGK緑川がビッグセーブで阻止する。逆に昌平もMF星野蒼馬(3年)がカットイン、またPAへの侵入からシュートへ持ち込んだが、市立船橋GK井岡がポジショニング良くキャッチして同点に持ち込ませなかった。スコアは1点差のまま進んだが、好チーム・昌平を上回った市立船橋の強さはさすが。真瀬がインターセプトから単独で敵陣深くまで切れこみ、杉岡がプレスにハメられながらも剥がして前進するなど、食い下がる昌平を個人、チームでねじ伏せ、また我慢強くも戦い抜いて1-0で勝利。決勝進出を決めた。

 市立船橋の朝岡監督は「(今大会で)試合数一番できたのはウチだから。6試合できるのはありがたい」とファイナリストになったことを静かに喜んだ。それも1試合1試合進化を遂げてきた6試合。この日の杉岡、原を中心とした堅守、対応力の高さは近年の市船でもトップレベルと言えるものだが、指揮官も認める「大人のチーム」が日本一に王手を懸けた。7月上旬、チームは崩れかけた時期があったという。全国総体出場を決め、プレミアリーグで首位争いを演じていた時期。朝岡監督は言う。「勘違いした雰囲気が出た。でも、すぐ戻りました。(3年生たちが)経験しているとか、こっちの思いを理解しているから楽です。(全員に言わなくても杉岡や高が)1年からトップチームにいて、振る舞いとか、取り組みとかサッカー以外のところも理解してチームメートに伝えてくれているから大人のチームだと思いますよ」

 杉岡は「本当にあの時は結構自分たちでも話していてヤバイなと。ここからズルズル行ってしまうんじゃないかと。試合中もエネルギーがなくて、ちょっと嫌な感じがしていた」と振り返る。だが、チームリーダーである杉岡と高が話し合い、3年生中心に話し合いもして嫌な空気を消した。「自分たちで危機感もってやってこれたんで、いい方向に持ってこれた。(良かったのは)一人ひとりが声がけとかエネルギーもってやれたことですかね。自分たちで変えるしか無かった。監督が言っても、自分が言っても変わらないということもあるので、あえて言うんじゃなくて、『自分次第だから本当に変わろう』と言って個人に任せていましたね」。続くプレミアリーグのFC東京U-18戦では先制されながらも残り5分に追いついてドロー。杉岡が「そこで負けていたら、ここ(全国総体決勝)にいなかったかもしれなかった。鍵になったかもしれない試合ですね」というゲームを経てチームは勢いを取り戻してプレミアリーグEAST首位として全国総体へ臨み、そして全国舞台で強さを示してファイナリストになった。

 ピッチ上で表現しているサッカーだけでなく、メンタル面でも“大人な”今年の市立船橋は「突き抜けるチーム」になれるか。「高校のトップレベルにいけるように、まずは日本一取って、その上で『もっと、もっと突き抜けるチームになれ』と言われているんで、日本一になりたい」(杉岡)。プレミアリーグ、選手権との全国3冠という本気で挑戦している目標もある。その第一歩となる決勝戦を名門・市船が突破する。

[写真]前半30分、市立船橋はFW太田が先制ゴール(写真協力=高校サッカー年鑑)

(取材・文 吉田太郎)
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