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経験不足悔やむ、トップ昇格内定の川崎F U-18MF田中碧「会場に呑まれてしまった」

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[8.2 クラブユース選手権(U-18)準決勝 FC東京U-18 5-1川崎F U-18 味フィ西]

 試合後も涙は流さなかった。悔しさを浮かべた表情で宙へ目をやり、表彰式をこなしていた。川崎フロンターレU-18はFC東京U-18に1-5の敗戦を喫し、決勝進出を逃した。初の4強入り、その先へ行くことは叶わなかった。

 チームを牽引したMF田中碧(3年)は「正直悔しいですけど、このメンバーでここまで来れたというのは自信というか……満足ではないですけど、誇れることなのかなと思います」と率直な思いを口にする。

「今まで全国大会に出たこともなくて、外からも強いというイメージもなく、多くのチームになめられた中でも、ここまで来れたというのは、チーム全員がひとつになれた成果なのかなと思います」

 この日の川崎Fは前半から押し込まれるシーンが続いたが、GK早坂勇稀やDF新井秀明を中心に耐えていた。そして相手のシュートがクロスバーに助けられ、無失点で迎えた前半28分に先制。こぼれを拾ったMF村田聖樹から田中へつなぎ、受けたMF栗脇拓人がドリブルから右足シュートを決めた。1-0で前半を折り返す。

 しかし後半に流れは一変。開始3分に直接FKをFW久保建英に沈められ、3分後には逆転された。そこから一気に失点を重ね、終わってみれば1-5の大敗。田中は「後半すぐにFKで1点を決められて、会場に呑まれてしまった」と悔しい表情をみせる。

「あの舞台であれだけのサポーターのなかで決められるという雰囲気に呑まれたというか、経験不足というか……自分たちがこれまで全国の舞台に来れていなかったツケなのかもしれない。そういう部分の差があったかなと思います」と振り返った。

 田中は中盤で果敢にボールを奪っては前へ運び、1失点した直後には自ら持ち上がってシュートも放った。相手に押さえ込まれてもぶれないフィジカル、そして技術も垣間見せたが、試合の流れを変えるには至らなかった。

 自信の出来を振り返った10番は「良くはなかったですけど、ボールを動かすところだったり、止めて蹴るというのはFC東京相手にも通用したとは感じました」と自己評価しつつも、「ただ、もっと精度を上げないといけない。個人としてチームの雰囲気を変えるように、一人でも変えられるように。そういう選手ではないですけど、そういったプレーも自分自身に求めていかないといけないのかなと思います」と表情を引き締める。

 幼い頃から既に10年間を過ごした川崎Fで、来季のトップ昇格を内定させ、2種登録も完了しているMFは「クラブユースは終わってしまいましたけど、ここからプリンスやJユースカップはあるので。個人としては、もっともっと成長して、最後にいい成績、今回よりもいい成績で高校生活を終わらせることができれば」と誓った。

 高校生活を終えた先には、正式にJリーガーとしての未来が待ち構えている。まずはユースでできることに真摯に取り組み、自身のスキルアップに励む。そして満を持して、Jの舞台へ乗り込んでいくつもりだ。

「身体の部分や技術の部分はもちろんなんですけど、頭の部分。フロンターレというチームで生きていく上では、そこが必要不可欠になると思う。スピードとかは違いますけど、ここでも意識できることはあるので、小さいことから積み重ねていきたいと思います」。川崎育ちのMFは力を込めた。

(取材・文 片岡涼)
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