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[MOM389]立命館大FW木藤舜介(2年)_東福岡時代と「今は違う」、目覚めた古都のストライカー

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.8 総理大臣杯2回戦 筑波大 1-2 立命大 キンチョウスタジアム]

 初優勝を遂げた2006年大会以来、10年ぶりの総理大臣杯。初戦の富士大戦で3-0と快勝し、幸先の良いスタートを切りながらも立命館大のFW木藤舜介(2年=東福岡高)は「1回戦は勝って嬉しかったけど、自分が得点できなくて悔しい気持ちの方が強かった」と振り返った。

迎えたこの日は開始4分に先制点を許しながら、前半25分にMF中野匠(3年=広島ユース)のミドルシュートで試合を振り出しに戻すと、直後の28分に決勝点を奪い、エースとしての仕事を果たした。

 ただし、持ち味を存分に発揮できたかと言えばそうではない。2週間前に練習で左足を負傷し、懸命な治療によって、何とか戦列に復帰したものの状態は万全とはいえない。加えて、この日は中1日での連戦と暑さによる疲労によって動きは決して軽快とは言えなかった。

 それでも、米田隆監督は「直前に怪我をしたので、本来の動きではないけど、リーグ戦から落ち着いて自分らしい点の取り方をしてくれている。量はなくても、一本決めてくれればチームが流れに乗るので外さなかった」と先発起用を託されると、木藤本人は「4年生はこの大会で進路が決まる選手がいっぱいいる。そんな中で、俺がいなくて負けたら、謝りたくても謝りきれない」という気持ちを結果できっちり示した。

 「めちゃくちゃ暑くてしんどかった」と振り返ったように立ち上がりから決して運動量は多くなかったが、「一発を狙っていた」という彼にその時が訪れたのは中野の得点で同点に追い付いたばかりの前半28分。高い位置で相手のクリアミスを拾ったDF池松大騎(4年=京都U-18)が筑波大DFの裏にパスを配給すると、「池松クンが相手DFの横に並んだ瞬間にボールを出してくれた。ミーティングでも相手のCBは裏に弱いと話していたので、ボールが来た瞬間行けると思った」と冷静にゴール左隅に決めた。

 以降は追加点こそ奪えなかったが、鋭い飛び出しと相手DFとの駆け引きから筑波大DFとのマッチアップを制する場面もしばしば。特に、筑波大のCBとしてマッチアップしたDF小笠原佳祐(2年=東福岡高)は東福岡高校時代の同級生で、「負けたくないという気持ちが強かった」。

 高校時代に練習中に何度もマッチアップしてきた仲で、試合前日には『LINE』で、「楽しもうね」というやりとりもしていた。改めて敵として、マッチアップするからこそ見える成長もあり、木藤は「小笠原は声を強く出せるようになったし、ラインの上げ下げが速くなっていた」と振り返る。

 もちろん、変わったのは小笠原だけではない。旧友とのマッチアップによって、木藤自身も成長を感じている。特に変わったのは、得点シーンのようなオフザボールの部分。高校時代は180cm、81kgというラグビー選手のような恵まれた体格を活かした強引な突破が目立ったが、大学に入ってからは特徴を発揮できる機会は少なく、得点からも見放されていた。変化が生まれたのは大学生活2年目を迎えた今年に入ってから。

 「どうしたら点が獲れるんだろうか、練習中からずっと考えながらプレーするうちにスペースで受ける重要性に気付いた。悩み込んだのが良かったと思うし、先輩たちがいっぱいアドバイスしてくれたのも大きかった。大学サッカーに入ってから、ゴリゴリした強引な突破だけでは通用しないと感じていて、相手のマークを外してからゴリゴリ突破したり、スペースで受け手からゴリゴリ突破しようと思えたのは、先輩たちの色んなアドバイスがあったから。それに先輩が、良いパスをくれるのも大きい」と口にする。

 「いい意味でワガママになってきた。今まではチームに合わせようとか遠慮があったと思うけど、彼の良さである得点力に焦点を合わせてくれはじめた。1年生から2年生になって、練習中から要求するようになってきたし、僕らも彼が欲しいボールを出せるようになった」と話すのは主将のDF大田隼輔(4年=桐光学園)。

 FWならではのエゴと欲が出てきたのは確か成長で、木藤は「高校時代は自分が“おとり”になることで、中島賢星(現・横浜FM)や増山朝陽(現・神戸)がゴールを奪って勝てればそれでよかった。でも今は違う。最近は、自分が決めて勝たないと満足できなくなっている」と口にする。

 古都から感じるのは新たな点取り屋の息吹。チームを勝利に導くため、自身が満足の行くプレーを見せるためにも、木藤は次戦も得点のみを貪欲に狙っていく。

(取材・文 森田将義)
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