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「サッカー選手として、1人の人間として」鈴木大輔がスペインで続ける挑戦(2/2)

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 各年代の代表に選出されてきた日本屈指のセンターバック、鈴木大輔が単身スペインにわたってから半年。スペイン2部のヒムナスティック・タラゴナでは昨季にレギュラーの座をつかむと、22日に迎えた今季の開幕戦でも先発フル出場をはたした。インタビュー後編で、鈴木が2シーズン目となる今季に掲げる目標は、チームと自身の「1部昇格」。そして、その先に見据えるのは、ロシアの地だった――。
※インタビュー前編はこちら

スペインでつかんだ
「やれている」感覚


――念願だったヨーロッパサッカーに身を置いた半年は充実していましたか?
「チームに加入した当時(2月)は、ずいぶん前のことのように思えますが、あっという間の半年でした」

――手応えをつかんだのはいつ頃ですか?
「最初に試合に出たときに『できるな』とは思いましたけど、連携やポジショニングの面でフィットするまでに時間はかかりました。そのあたりをクリアして『やれている』と思えたのは、最後の1か月くらいでしたね。ヒムナスティックのスタイルと自分のスタイルは合っていると思いますし、プレーしやすいです」

――チームの特徴を教えてください。
「『激しさ』ですね。もちろん、監督からは守備のところでは距離感やバランスを要求されるので『緻密さ』もあります。それよりも、素早いプレッシングで激しく寄せる、前に速く攻める、という部分はJのチームとの一番大きな違いだと思います」

――柏レイソルでの最終シーズンは、吉田達磨監督のもと、ビルドアップのところで重要な役割を担っていましたが、現在のチームではどのようなことを求められていますか?
「センターバックはチームのスタイルによって役割に変わりはほとんどないと思っていて。相手にプレッシャーをかけて、球際に勝ってボールを奪う。味方にポジショニングを指示して、自分もいいポジションをとる。パスの出し手として攻撃の起点となる。そういったセンターバックに求められるスタンダードな能力は、いずれもスペインで大事にされています。そのあたりはJリーグと一緒ですね」

――単身スペインに渡られた中で、相棒ともいえるスパイク『UAクラッチフィット』は、安心できる存在だったのではないですか?
「『UAクラッチフィット』は初めて履いたときから、自分の肌のようにフィットして『コレだ!』という感覚がありました。肌感覚で履けることでプレーの質は向上したと思いますし、その点がいまも継続して履いている理由です。それは日本からスペインへと移っても変わらないもので、すんなりとプレーすることができた要因にもなっています。チームメイトでも興味を持っている選手が何人かいて。履いてもらうと評判がいいんですよね」

――柏でのチームメイトで、鈴木選手が付けていた4番をついだ中谷(進之介)選手も『UAクラッチフィット』を履いています。
「個人的にすごく期待している選手で、今季の活躍はチェックさせてもらっています。『自分が中心なんだ』という強い意志を持って戦っているのがわかりますし、試合ごとに成長している姿を見せてくれているので、自分もすごく刺激を受けています」

海外でのプレーで
人間としても成長を


――改めて、このタイミングで海外での挑戦を決意された経緯をお聞かせいただけますか。
「漠然と海外のリーグに挑戦してみたいという気持ちはあったんですけど、昨年にラージョ・バジェカーノからオファーがあったことで現地味を帯びてきた。柏で3年プレーして成長を感じていた中で『次のステップを踏みたい』『新しいことに挑戦したい』という気持ちになりました。海外でプレーすることは、子どもの頃から抱いていた夢でもありますし、サッカー選手としてだけでなく1人の人間としても成長できると思い、挑戦することを選択しました」

――昨年12月に結婚された後で海外に挑戦されるのは、難しい決断だったと思います。
「後から言われて気がつくんですけど、そのときは何にも考えていなくて。気がついたらこうなっていた、というのが正直なところで。女性でも人によってはダメだっただろうなという行動ではあるので、妻には感謝しています」

――6月にはお子さんも誕生しました。
「正直、子どもに会えないのは寂しいですよ(笑)。家族が増えたことで守る存在が増えたというのはありますけど、サッカー選手としてのスタイル、人間としてのスタイルは変わっていないのかなと思います」

――2年後のロシアW杯も視野に入れてのことでしょうか?
「当然意識しています。そのためには、まず2部で全力でプレーして、しっかりとアピールして、1部に行かなければいけない。チームとして2位以内に入って自動昇格するのが目標ですし、個人としても『1部昇格』を目標にしています。1部でプレーするようになれば、自然と代表にも呼ばれるようになってくると思っています」

――今季から同世代の清武弘嗣選手が、1部のセビージャに加入しました。
「セビージャは、試合を見ていて『レベル高いチームだな』と思っていました。そこにキヨが入って、普通にやっているところを見ると、すごいなと思いますし、いい刺激になっています」

――海外リーグでプレーして一番大きな経験は、どんなことが挙げられますか?
「世界との距離感を感じられるので、客観的に日本のレベルがわかると思うんです。日本でプレーをしていると、海外の選手のプレーはあくまで想像の範囲でしかなくて。それが膨らみすぎてしまうこともあれば、過小評価をしてしまうこともある。実際、2部で半年間対戦してきた中で飛び抜けた選手はいなかったですけど、1部には各チームに1人は『やばいな』っていう選手がいます。早く1部でプレーして、その景色を見てみたいです」

(取材・文 奥山典幸)

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