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[プレミアリーグWEST]リスタートを切った“赤い彗星”東福岡、アウェーでG大阪ユース撃破

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[9.3 高円宮杯プレミアリーグWEST第11節 G大阪ユース 0-2 東福岡高 G大阪グラウンド]

 高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯U-18サッカーリーグ2016 プレミアリーグWESTは3日に第11節を行い、前年王者のガンバ大阪ユース(大阪)と昨年度全国2冠の東福岡高(福岡)が対戦。後半に2得点を奪った東福岡が白星を手にした。

 昨年度のタイトルホルダー同士がぶつかった一戦ではあるが、両者ともに後期初戦となった前節は白星を掴めず。加えて、東福岡は今節、攻撃の二枚看板であるMF藤川虎太朗とMF高江麗央をコンディション不良で欠く苦しい試合を強いられた。

 ただし、「アイツらがいなくても負けたくないというのは皆思っていたので、モチベーションは高かった」とDF児玉慎太郎が口にしたように、ピッチに立つ選手の気合は十分。東福岡は立ち上がりから、「ウイングバックの杉山(天真)と山下(令雄)の所で奪って速く攻めたかった」(宮本恒靖監督)という理由で従来の4バックではなく3バックで対抗したG大阪をピッチを広く使ったボール回しで押し込んだ。

 最初のチャンスは前半4分。左サイドの混戦を抜け出したMF田尻京太郎がゴール前に低いクロスを展開。一度は相手DFにクリアされたものの、アンカーの鍬先祐弥が逃さずダイレクトで打ち返し、ファーストシュートをお見舞いする。36分にも右サイドを攻め上がったDF砂原一生のクロスからMF福田湧矢がヘディング弾を放つなど、以降もG大阪を押し込んでチャンスを作ったものの、「最後の所で思うように仕掛け切れなかった」(森重潤也監督)とゴールネットを揺らせない。 一方で時間が少なかった守備に関して、「ガンバは特にテクニカルな選手が多いので、ゼロに抑えようとこの1週間、意識してきた」(児玉)と集中を切らさず冷静に対処。カウンターを受けそうになってもボールホルダーに対して人数をかけて対応し、決定機を与えない。

 後半に入ってからも流れは変わらず。6分に右サイドから中央にカットインした田尻のシュートがクロスバーに直撃。続く9分にはGK前島正弥が自陣から勢い良く蹴ったボールが相手ゴールに襲い掛かるなど惜しい場面を作りながらもゴールが奪えない。時間の経過と共にG大阪の攻撃も機能し始め、12分には中央でボールを持ったMF芝本蓮からPA左へボールが展開。フリーで走り込んだMF食野亮太郎が強烈なシュートを放ったが、前島のセーブに阻まれた。

 均衡が崩れたのは、17分。東福岡が仕掛けた中央攻撃は阻まれたものの、G大阪が攻撃に切り替えた瞬間に奪い返し、すぐさまPA左へ。混戦となったこぼれ球をFW藤井一輝が左足で押し込んだ。「ガンバの運動量が落ちていた時間にうまく点が獲れた」と森重監督が振り返ったように、東福岡は直後の19分にも自陣でのボール奪取から素早く攻撃に転じ、入ったばかりのFW佐藤凌我が2点目をマーク。残り10分を切ってからは4バックに切り替えたG大阪が猛攻を仕掛けたが「インターハイで負けてから全ての面を強くしようと意識し、まずは守備から強くしようと考えた」(児玉)という東福岡の守りを崩せないまま試合終了を迎えた。

 東福岡は今夏の全国総体で前人未到の3連覇に挑んだが、初戦となった2回戦で昌平高(埼玉)に2-3で敗戦。森重監督は「昌平はベスト4まで進む良いチームだった。うちとしては、3連覇に挑戦するという立ち位置に落とし穴があったのかもしれないし、それに挑戦する難しさもあったかもしれないけど、総合的に考えれば力がなかった」と振り返る。

「独特の緊張感の中で、自分たちのペースに持ち込めず、運動量も出し切れなかった。そうしたメンタル面の弱さや技術とフィジカルの無さを痛感した試合。今まで天狗になっていたわけじゃないけど、自分たちを過信していたように思う」。そう振り返るのは主将の児玉。今までは一部の選手に頼りっぱなしで、皆で意見をぶつけ合う機会が少なかったが、全国総体を終えてからはミーティングの回数を増やすなど意識改革に取り組んでいるという。「今は危機感を持って練習に取り組めているので、今となっては良い経験だと思える」と続けるように、屈辱とも言える初戦敗退によってチームは変わりつつある。

 視線の先にあるのは2連覇がかかった選手権。「前年度チャンピオンという言い方もされるだろうし、周りの見方や戦い方も違ってくる」と森重監督が口にするように、全国総体と同様に決して楽ではない戦いとなるのは確か。それでも、「難しい状況に打ち勝っていかないと結果は残せない。インターハイも理解したつもりでいたけど、間近で見ていた1個上、2個上の先輩たちを見て、『俺らも行けるんじゃないか』という雰囲気があったのかもしれない。もう一回、そこは気持ちの部分から含めてやっていかないと上位には行けないと思う。そうした中で、まだまだ修正しないといけない部分も多いけれど、プレミアでは良い所も徐々に出てきた」とプラスの面も見えてきた。“赤い彗星”は夏に味わった悔しさを力に変え、冬の歓喜に向けてリスタートを切った。

[写真]後半19分、東福岡は佐藤のゴールで追加点

(取材・文 森田将義)
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