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ラストプレーの覚悟が生んだダメ押し弾、浅野「ベンチを見たら武藤くんが…」

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[9.6 W杯アジア最終予選 日本2-0タイ バンコク]

 最後の力を振り絞った。1-0で迎えた後半30分、中盤でMF長谷部誠がボールを持った瞬間、FW浅野拓磨(シュツットガルト)は動き出していた。

「もう一個早く動き出していて、一回止まったところだった」。長谷部からのパスはタイミングがずれ、ワンテンポ遅れたのだという。結果、DFを後ろから追いかける形となった背番号18。しかし、ここで浅野のスピードが生きた。

 猛然とプレッシャーをかける浅野の勢いに押されたか、DFがボール処理をミス。浮き球に先に頭で触れた浅野がDFを振り切ってゴール前に抜け出し、右足でシュートを放つと、GKの体を弾いてゴールネットを揺らした。

「頭で触ったらマイボールにできるかなと思った。自分の特長を出せたと思う」。ラストプレーの覚悟だった。「ベンチを見たら武藤くんが準備をしていた。交代かなと思って、最後の力を出し切った」。FW武藤嘉紀と交代するのは7分後の後半37分。何とか結果を残したい執念が最後に実った。

 1日のUAE戦(1-2)ではボレーシュートがゴールラインを越えながら主審に認められない不運もあった。幻のゴールにも「ミートできなかったし、あそこは自分のシュートミス。ノーゴールは仕方ない」と、あくまで自分の技術的なミスだったと反省。名誉挽回のチャンスを待っていた。

 絶対的なエースであるFW岡崎慎司をベンチに追いやり、1トップでの先発出場。W杯アジア最終予選は初先発という重圧と責任感もあった。「(スタメンは)昨日のミーティングでも言われたし、準備はしていた。出たら絶対にゴールを取ろうと思っていた」。有言実行の最終予選初ゴールだった。

 1か月前はブラジルでリオデジャネイロ五輪を戦っていた。グループリーグ敗退に終わった悔しさを糧にして臨んだフル代表。「五輪も自分の中で手応えを感じたところはあった。あの経験はプラスになっているし、今回もアジアだけど、難しい戦いを経験させてもらって、自分のプラスになっているし、レベルアップできている」。舞台は違えど、密度の濃い1か月が自分自身を成長させているとの実感がある。

「それを感じて終わるのでなく、もっと結果として出していきたい」。そう貪欲に語る21歳の新星は「ゴールを取れたことは良かったけど、新たな一歩として満足はできない。もっともっとやらないといけない」と、さらなる高みを見据えている。

(取材・文 西山紘平)

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