beacon

日本代表メンバー発表 ハリルホジッチ監督会見要旨

このエントリーをはてなブックマークに追加

日本代表メンバー26人を発表したハリルホジッチ監督

 日本代表のバヒド・ハリルホジッチ監督は29日、都内のJFAハウスで記者会見を行い、10月6日のW杯アジア最終予選・イラク戦(埼玉)、11日の同オーストラリア戦(メルボルン)に臨む日本代表メンバー26人を発表した。

以下、ハリルホジッチ監督の会見要旨

バヒド・ハリルホジッチ監督
「10月の2試合の準備をしている。この2試合、難しい試合が待っている。イラクもオーストラリアもクオリティーが高い。オーストラリアはアジアチャンピオンでもあるし、イラクはアジア杯の準決勝まで行ったチームだ。イラクはこの最終予選、2試合負けてスタートしている。オーストラリアは2試合勝ってスタートしている。ただ、イラクはサウジアラビア戦でかなり良い試合をしていた。オーストラリアはかなりゲームを支配して、この2試合に勝った。

 まずはしっかり1戦目のイラクに勝つトライをしないといけない。昨年(6月のキリンチャレンジ杯で)、イラクと対戦した。もう一度、この試合を見たが、特に前半は素晴らしい試合を展開していた。同じ展開を望みたい。ただ、前回の試合は親善試合で、今回は最終予選の戦いになる。次にはオーストラリアとの試合が待っている。今年、最も難しい試合になると予想している。今のところアジアで最も強いチームと認識している。そのための準備もしないといけない。自信を持って、強い決意を持って、勝つトライをする。我々にはそれができると信じている。

 そのためのリストを用意した。少し大きくしたリストだ。各ポジションで1人ずつ多めに呼び、23人のフィールド選手とした。なぜそうしたかについては、このあとできる限りの質問をしてほしい。その中で批判もあるだろう。フランスでも私に対しての記事があった。最終予選で1試合負けて記事になったのだが、『選手に笑いを禁止した』というタイトルだった。そういったことに関しても質問してほしい。ここですべて話すので、コーチや関係者はしゃべらないようにしたい。私に質問してほしい。すべて私の責任で選んでいる。就任してから日本のフットボールに恥ずかしいことはしていないと思う。間違うこともあるかもしれないが、何をしないといけないかはすべて把握している。躊躇なく、可能な限りの質問をしてほしい。心の底からすべてを正直に話したい。

 キーパーは3人。西川、東口と、川島永嗣も連れていきたい。永嗣に関してはしっかり説明したい。永嗣はプレーしていない。プレーしていないのは彼だけではない。海外組がたくさんいて、12人ほど先発で出ていない。今回のリストは本当に難しかった。まず永嗣だが、メスというチームの2軍でプレーしている。それでも悪くないはずだ。グループの中で特別な役割を担ってもらいたいと思っている。発言力もあるし、チームに良いスピリットをもたらすことができるのではないか。リーダーの一人で、経験もある。厳しい戦いで、彼の存在感が必要になってくる。彼がプレーするかどうかは別問題だ。経験ある選手の一人なので期待している。特にコミュニケーション、励ますところ。この2試合は今までよりメンタルを出さないといけない試合になるので、そのために永嗣を呼ぶ。

 DFは9人呼んでいる。ここでコメントはほとんど必要ない。(酒井)宏樹と(酒井)高徳は向こうで先発を取っているが、それ以外の選手は取っていない。槙野はケガのあとリハビリの最中だが、なぜ9人呼んだかはあとで説明する。若い選手で植田もいる。

 中盤にいく。長谷部、山口、柏木。新しい選手として永木。長い間、追跡してきた選手だが、良い存在感を出している。オーストラリア戦で必要になるかなと思う。しっかりボールを奪う選手で、毎週レポートが来るが、永木は常に良い評価だったので、少し呼んで見てみたいと思う。長谷部、山口、永木はボールを奪い、デュエルもコンタクトも怖くない選手だ。柏木は後ろから組み立てる選手だ。

 前の選手として香川、清武、大島。大島は若い選手だが、若い選手を信頼して使い続けていきたい。能力はかなりある。ただ、まだ恥ずかしがっている。もっと勇気を持って、練習中からもっともっと自信を持ってやってほしい。前回の合宿は2つ単語をしゃべってくれた。今回は4単語ぐらい話してほしい。それでだいぶ向上したかなと思う。

 FWにいく。いつもどおりの選手だ。先発で出ていない選手も結構いるが、彼らを信頼している。2週間かけてこのリストを考えている。2週間前には海外(のクラブ)にリストを出さないといけないルールもあるからだ。先発で出ていない選手も何人もいるが、各選手のクオリティーはよく知っている。もちろん、理想としては常に先発で出続けてほしい。試合が一番のトレーニングなので。先発で出られなくてもしっかり補足トレーニングを積んで、高いレベルの試合に付いていけるようにしておいてほしい。

 3人のキーパーと23人のフィールドを選んだ。前回は合宿直前に2人ほどケガをしてしまった。我々のDFはすでに(吉田麻也、酒井宏樹、森重真人の)3人がイエローカードをもらっているので、その準備もしておかないといけない。戦術のチョイスをホームとアウェーで使い分けないといけない。特にフィジカル面でそうだ。そのために23人のフィールド選手を呼んでみたいと思う。

 このリストを作るのは簡単ではなかった。私は私の選択をした。私の選択がよかったかどうかはこれから分かる。プレーしていない選手を外したら、だれが他にいるのかということも考えないといけない。残念ながら、まだまだ海外で行われているフットボールと日本で行われているフットボールには歴然とした差がある。特にフィジカル面でそうだ。そこも考慮に入れないといけない。

 15人ほど海外組がいて、先発で出ていない選手がいる。普通の基準でいけば(代表には)呼べない。川島、長友、吉田、長谷部、香川、清武、本田、岡崎、宇佐美、武藤。そういう選手を外してしまうと、だれを代わりに呼ぶのか。かなり難しい。だからそのような選択はなかなかできない。ブラジルW杯以降、何が起きているか。例えばドイツは3、4人先発だった選手を替えた。急に外したので、1年半かかって復活した。ドイツにもそういう空白の時間ができた。そのようなシチュエーションが代表レベルでは起きる。選手の野心をW杯にどう向けていくのか。10月はメンタル面がかなり重要になる」

―大迫や細貝のようにドイツで試合に出ている選手もいるが?
「大迫だが、ここ3試合(実際には4試合)でようやくスタメンを勝ち取った。そして2得点を取った。大迫はもちろん分析しているが、それまで数か月、先発で出られない時期があり、出たときも中盤でプレーしていた。今、ようやく第2アタッカーとしてのポジションを確立した。彼とも昨年、ディスカッションしていたが、A代表ではFWとしてプレーしてくれと。ようやく16m(ペナルティーエリア)に近づくようになってきたのかなと思う。2得点取った。1年経って、ようやく2点取った。大迫はずっと追跡している。続けてほしいと思っている。15日前に海外(のクラブ)にはリストを送っている。リストを送ったあとに大迫は得点を取った。このパフォーマンスをずっと続けてほしいと思っている。得点も取って、良いプレーをしている。これを続けてもらえば、競争に入れると思う。ただ、リストにはまだ入っていない。

 長沢という選手も私から挙げさせてほしい。この選手も面白い選手だ。浅野、岡崎、武藤とは違うフィジカルを持った選手。ただ、1点、2点取ったからといってA代表にすぐに呼べるわけではない。武藤も岡崎も2点取っている。大迫は興味深い選手。このように得点を取り続けてくれれば、フィジカル的にも面白い選手になると思う。セカンドストライカーかなと思う。我々は引き付ける役として1トップを置いているが、もしかしたら彼はそこもできるかもしれない。他の候補の選手も見た。彼だけではない。この試合に関しては岡崎、浅野、武藤にチャンスを与えるが、大迫は今のように続ければ入るチャンスはかなりあると思う。

 細貝に関してだが、私が呼んだ中盤の選手と比較してパフォーマンスが上とは言えない。私のアシスタントコーチがドイツに行って、ディスカッションしてきたし、宮市も見てきた。みなさんが名前を挙げていないブルガリアの加藤選手も見てきた。また見てきてもらおうと思っている。ただ、1試合見たからと言って、すぐに呼べるわけではない。A代表でプレーしたければ何をしないといけないか、大迫は分かっているはず。岡崎より大迫が良ければ、岡崎を呼ばずに大迫を呼ぶ。岡崎が代表で100試合以上出ているとしても、そこは関係ない。これは全選手に対するメッセージでもある」

―9月の代表戦は1試合目のコンディションがよくなかったが、コンディショニングに関してどう対応するか?
「私が言い訳しているとは書かないでほしい。例えば火曜日に着く選手がいた。試合の2日前だ。これは本当に難しい。たくさんのことはできない。ビデオミーティングの間、寝ている選手もいた。そこで戦術のトレーニングをしないといけない。そして、いつもより時間を取ってしまった。45分で9個のテーマを成し遂げた。少しやり過ぎかなと思った。疲労があって、さらに疲労させてしまった。しかし、一回のトレーニングで守備も攻撃も伝えないといけない。私は魔法の杖を持っていないので、すぐに変化はできない。選手は疲労したかなと思う。調整が大事になってくる。試合を木曜日ではなく、金曜日にしてくれとも要望した。1日ズレるだけでも大きいと。UAEは全体練習をかなり長い時間かけてやっていた。これは言い訳ではない。シチュエーションを理解してほしいということ。このような状況だった。

 そういったことも含めて、(川島)永嗣を呼んでメンタル的にチームを強くしたい。疲労したと言って泣くのは簡単だ。選手には必ず『疲労しているか、していないか』を質問する。火曜日に到着する選手が試合をするかは分からない。本田、香川、吉田、岡崎は先発落ちしても問題ないだろう。しかし、先発落ちしたとき、だれが代わりに入るか。我々のチームにスター選手はいない。スター選手はチーム。先発で出ていない選手と常にコンタクトを取っている。トレーニングをちゃんとしているかとか、これをやってくれとか。本来なら先発で出ていない選手は外さなければならない。だが、現状でだれが(彼らに)代わるのか。これは真実だ。日本のフットボールとヨーロッパのフットボールは違い過ぎる。まったく違い過ぎる。

 海外で競争している選手がいる。宇佐美もそうだ。試合のメンバーに入っていない。向こうの監督はデカくてヘディングの強い選手が有用だと。宇佐美はジョーカーで日本代表に入っている。UAE戦もタイ戦も途中から入ってきて、かなりのチャンスをつくってくれた。これは能力のある選手の役割だ。齋藤や中島もそう。ただ、この役割をすぐ見せることができるの。

 メディカルスタッフは真夜中まで仕事をしてくれるが、2日間で7、8時間の時差を解消するのは不可能だ。そういう難しさもある。簡単ではないが、私がチョイスをしたということ。『私は言い訳をしない』と書いてほしい。言い訳は好きじゃない。負けるのも嫌いだ。スタッフがやりすぎだろうと言っても私は引かない。泣いた人はグラウンドから出て行ってもらう」

―日本代表の主力となる選手が試合に出ていない現状をどう思うか? 1試合目はコンディションを考えてJリーグで試合に出ている選手を優先するのか?
「国内組の話からさせてもらうが、毎節、我々のスタッフが試合を見に行っている。50人ほど調査している。その中で入れ替わりもある。毎節、分析もしている。永木、齋藤、川崎の中村、大島、小林悠。中島も好きだし、すべて把握している。井手口も好きで、前回見に行った。追跡していかないといけないが、合宿に毎回若い選手を呼んで自信をつけさせることもしている。しかし良い選手でないといけない。

 海外との比較だが、香川真司の競争の状況を想像してみてほしい。ドルトムントは世界で有数のチームだ。だれと競争しているか想像してほしい。シュールレ、ゲッツェというブラジルW杯のファイナルのピッチに立った選手だ。かなりハイレベルの選手。先発を取りにいくために真司は狂ったようにトレーニングしないといけない。行ったらよく分かるが、向こうのトレーニングは本当にすごい。本当に必死にやらないと簡単に先発を失う。長友も本田も長谷部も一緒だ。毎週、電話して確認している。試合に出ていないとき、どのような補足トレーニングをしないといけないか彼らは完璧に把握している。清武も同じで、ナスリと競争しないといけない。ものすごい強豪クラブで、チャンピオンズリーグに出場しているクラブで競争している。歴史上、これだけ日本人がチャンピオンズリーグを同時に戦っていることはないのではないか。そこで先発を取るのは簡単ではない。

 今回はたくさんの問題が起き過ぎている。1試合目に速いスピードに付いていくことが準備できていなければ大きな問題になる。イラク戦はテストだ。いろんなことがテストできる。気持ち、野心。そこが気になる。少しみなさんに紹介したい。これは私が就任してからのチームの走行距離だ。一番下を見てほしい。これが国内組だけで臨んだ東アジア杯の走行距離だ。最も良いチームの試合のときより、10kmほど短いのが東アジア杯だった。

 トレーニングのインテンシティーも調べている。ただ、前回の火曜日はちょっとやりすぎたかなと私も思う。それは頭の中に入れておかないといけない。戦術をどこまでやるか。私は全部やりたい。それは変えられない。全員がすべてを把握しないといけない。選手のクオリティーもキャパシティーも分かっている。ずっと先発を取れなかったらかなりの問題で、もっともっと大きな問題になる。3か月、4か月、ずっと出られなかったらまったく違う問題が起こる。それが起きてほしくはない」

―UAE戦前に練習した9つのテーマとは? イラク戦、オーストラリア戦のテーマは?
「9つのテーマに関してだが、守備のテーマと攻撃のテーマがあった。守備のテーマとしては、相手には3人ほど気を付けないといけない選手がいた。10番が外に開いたとき、中に絞ったとき、縦の低い位置にいたときにどうするか。7番は背後に走るタイプの選手だが、どの角度からどのポジションに走ってくるか。それから11番。彼のポジションがどこから始まるか。そういったことをトレーニングした。いかにファウルしないで止めるかをトレーニングした。残念ながら2回ファウルをしてしまったが。攻撃面もそう。どこで攻撃を仕掛けるべきか。そういったさまざまなテーマをやった。インテンシティーは高くないが、フリーズして、説明して、それを一回のトレーニングでやった。普通は10日かけるトレーニング。それを一回でやった。ただ、火曜日は試合2日前ということだったので、難しかった。

 私の分析では悪い試合ではなかった。私自身も自分を批判するが、このチームは攻撃でかなり良いプレーをしている。UAE戦では13回、タイ戦では12回、決定的なチャンスをつくり出した。美しいフットボールかなと思う。高いレベルでないのは得点を仕留めるところ。修正しないといけない部分もある。得点を取れなかったのはシンガポール戦だけだ。他の試合に関してはすべて得点している。オフェンスのクオリティーはうれしいし、要求したことのかなりの部分をやってくれている。ただ、得点を取るところを伸ばさないといけない。

 イラクに対して戦術的にどう臨むか。火曜日に戦術のトレーニングができるかどうかはまだ分からない。今回は映像を見る時間を短くしようかと思っている。新しいトライとして、オーストラリア対イラク、イラク対サウジアラビアの映像を選手に送っておこうかなと思う。2試合ほど合宿までに見て来いよと。見てくれると期待している。そして合宿でミーティングの時間を短くする。ミーティング中に寝ている選手がいるので。時差があるのでそれはしょうがない。みなさん笑うかもしれないが、これは真実。私も冗談を言うのは好きだが、冗談を言えない状況だ。火曜日に戦術の練習をするかは決めかねている。トレーニング中にしゃべって伝えることはしようかなと思う。先発でだれが出るかも決めていない」

―欧州組にクラブでレギュラーを取れていない選手がいて、代表戦のときは長い時間をかけて移動してくることは就任前から分かっていたと思う。それをどう打開するかが監督の仕事だと思うが、言い訳ではないと言っても、言い訳にしか聞こえないが?
「少し理解していただけないところがあるのかなと感じる。その意見は尊重するが、意見を言うにはあなたに能力があるのかなと。私が日本サッカー協会とサインする前にその困難、難しさを協会に伝えたほうがいいのか。もっと難しい目的もあった。言い訳と受け取るのは間違いだ。私は日本のプロジェクトに入り込んでいる。初日から、サインしたときから、100%プロジェクトに入り込んでいる。会長も信頼している。前会長も信頼している。

 フットボールの知識をしっかり身に付けてほしい。今の日本代表がどのような発展を遂げたか。特にオフェンス面で、私が就任する前と就任してからでたくさん新しいことが見られたと思う。オープンな統計もある。私の目的は日本のフットボールをもっともっと向上させること。世界の強豪と対等に渡り合えるまでにしたいと思っている。ただ、グラウンド上でトレーニングする時間がほとんど与えられていない。これは言い訳ではない。皮肉な冗談と受け止めたが、それをみなさんに言われて何か変わるのか。私は何をしないといけないか分かっている。A代表の発展を見てほしい。スペクタクルな試合があった。それは数字でも明らかになっている。私の考え方に反対するのは問題ないが、私は言い訳をしたくない。そこは理解してほしい。皮肉な冗談を言い続けてほしい。私の仕事は何ら変わらない」

―オーストラリア相手に長沢やハーフナーのような長身選手ではなく、いつものメンバーを招集したが、決定力を改善するためにFW陣に求めることは?
「競争の中でチョイスしないといけない。長沢の名前を出したが、ハーフナー・マイクも追跡している。まったく違う攻撃の仕方をしないといけない。私はグラウンダーの要求をしている。空中のボールをほとんど要求しない。最終予選でそのプレーを出すべきかどうか、私は躊躇している。親善試合ではトライしてもいい。そのためにキリン杯ではマイクを選んだ(実際にはキリン杯ではなく今年3月のW杯アジア2次予選で招集)。マイクを選んだときは彼に応じたプレーをしないといけない。そうでないと彼はプレーできない。攻守にわたってボールに関わる選手を求めている。長沢が今のパフォーマンスを続ければ、マイクより運動量が多いし、より攻撃の組み立てにも参加できる感じもする。将来、ここに入ってもいいだろう。ただ、最終予選で入るには少しリスクがあるのかなと思う。

 良いか悪いかは試合後に分かる。私はこうして選んだ。テクニカルスタッフと話をするのが一番デリケートな時間になる。3時間ぐらいみんなから意見を聞く。結果だけが真実なので、1試合負けて、いろんな疑問が出てきたと思う。全部質問は受けたい。私が間違うこともミスを犯すこともある。最後は私のチョイスになる。負けたときは私を批判してほしい。私が責任を持って選んだわけだから。間違えることもあるし、間違えないこともある。すべて統計はオープンになっている。伸ばさないといけないところもある。守備の厳しさ、得点率を伸ばさないといけないし、メンタル面も強くならないといけない。

 ここまで18試合ぐらいこなしたが、前半が悪かったのはイラン戦とシリア戦。それ以外の展開はかなり良かった。イラクとの試合を見てほしい。前半は本当に素晴らしい。非常に良いではなく、エクセレントだった。だから選手にはネガティブになれない。励ましていくことが大事になる。本田に関しても、オカ(岡崎)に関しても、香川に関しても、清武に関しても、先発じゃないからサヨナラと言えるのか。7年、8年と日本に多くのものをもたらしてくれた選手を簡単に排除することはできない。メンタル的にチームが壊れてしまう。『試合には出ていないが、信頼しているよ』という私からのメッセージだ。グラウンドで返答を待つ。それが私のやり方だ」

―Jリーグにいいところはあるか? 今度の2試合がUAE戦と同じ結果になった場合、けじめを取ってくれるのか?
「笑えない質問もあった。Jリーグに関して批判しているわけではない。私は気付きを言っている。まだ最終予選を突破していない。最終予選を勝ち取りにいかないといけない。何人かの人は私の見方にうんざりするかもしれない。しかし、見える統計も用意して私は言っている。前回の合宿で、ある選手と居残り練習をした。その選手は付いてこれなかった。しかし1週間後、5回、6回しっかりトレーニングを積んで、我々のリズムに気づいてくれて、素晴らしい試合をした。『Jリーグが世界で一番素晴らしいリーグだ』と言ったら、『おまえ、フットボールを知らないのか』と言われる。日本のフットボールには足元の技術がある。少しスピードがあるかなというぐらい。デュエルはどうか、戦術面はどうか。まだまだ伸ばせる。それを批判と受け止めるのか。日本のフットボールの将来を本当に心配している。私の見方だ。つまり真実。もちろん、同意できない人もいるだろう。代表監督としての私の意見だ。

 私は日本のフットボールを発展させるために来た。何も言わずに隅っこにいることもできるが、それで何か貢献しているのか。Jリーグのカレンダーに関しても提案した。自分たちの選手がどうなってもいいんだなと。半分の選手は体脂肪率があり得ない数字で来た。Jリーグはそれでいいんだなと。そこで私は介入した。隅っこで何も言わないというのでもいい。選手のことは本当に大好きだ。素晴らしい性格、素晴らしい態度だと思う。だけど、フットボールに関して良くないことは言わないといけない。それを批判と捉えるか、伸ばすための気づきと受けるか。その意見の背景には統計がある。

 ただ、U-16日本代表にはおめでとうと言いたい。W杯出場を決めた。これは褒めないといけない。昨日は(U-19日本代表の)内山監督も私のところに来て話をした。何かできるなら何でも協力すると。U-20W杯に行くことを期待している。貢献をしたい。それだけだ。日本の長所をどう使って世界に勝つのか。真実を言うことは怖くない。選手にも言わないといけない。日本はアジアで一番強いチームではない。勝たないといけない。監督も政治家のような振る舞いをしないといけないかもしれないが、私は真実しか言えない。日本で生活するのも仕事をするのも大好きだ。フランスの新聞は『監督が笑いを禁止にした』と書いた。禁止にしたことはない。ただ、負けたあとにお祭り騒ぎになるとか、冗談を言い合うのはどうか。

 私は端っこでじっと見ていることはできない。中に入って真実を伝える。批判と受け取られても仕方がない。これは私の意見。あとでしっかり統計を見てほしい。そうすれば理解できることもたくさんあるだろう。1試合負けてしまった。勝つべき試合で負けてしまった。負けたのは日本代表だけの責任だったのかという気もする。我々は良い試合をしたと思う。もう審判の話はしたくないが、みなさんを喜ばせたかったが、喜ばせられなかった。みなさんが違う監督を連れてきたいなら別の話だが、まだまだやるべきことはある」

―この2試合の目標は?
「目的は常に一緒で、2試合勝つことにトライしないといけない。1試合目で厳しい経験をした。イラクとは1年前に対戦したが、状況はまったく変わっている。イラクの試合はかなり見ているが、彼らも強い。180cm、190cmの選手がごろごろいる。テクニックのクオリティー、戦術のクオリティーも高い。ただ、我々は勝たないといけない。まずはイラクに勝たないといけない。

 オーストラリアについてはまだ話さなくていいかなと思っているが、話すとすると、アジアで最も強い相手と戦わないといけない。ほとんどの選手がイングランドなどの海外でプレーしている。高いレベルのフィジカルコンタクトに慣れている選手の集まりだ。ホームではかなりアグレッシブに来る。時には限界を超えてくる。彼らのアグレッシブさに対抗できる状況にしないといけない。フィジカル的な戦いに応えないといけない。彼らは空中戦を仕掛けてくると思う。それを準備しておかないといけない。

 もし引き分けるなら、勝つことを想像して引き分けという結果になるだろう。引き分けから入ると、違う結果になる。まず勝つという発想をしないといけない。結果としてもしかしたら引き分けになるかもしれない。私はビクトリー、ビクトリ―と言っているが、それを選手の頭に植え付けたい。紅白戦でも負けているチームを励ましている。オーストラリア戦はいろんな意味で良いテストになると思う。素晴らしい試合をして、アウェーで勝たないといけない」

―川島のコンディションをどう把握しているか? 鼓舞するような選手が前回は足りなかったということか?
「勝つよりも負けたほうが100倍ほど情報が入ってくると言われている。何人か疲労もあったし、グラウンド上で不正義が起きたと私は認識している。そこでプレッシャーをかけてほしかった。相手にもっともっとプレッシャーをかけて、我々が点を取るという状況にしたかった。不正義なことが起きたのに、それを落ち着いて受け止めてしまったかなと思う。私はあえてグラウンドに入った。私を退場にしてくれという抗議行動だ。やってはいけないが、国民の皆さんに何かアピールできるのではないかと思った。あの状況で許せなかったので、私はグラウンドに入った。

 キリン杯でも少し似たような状況があった。(川島)永嗣がプレーしなかったとき、永嗣がしっかりしゃべっていた。全員のモチベーションを上げた。大島についても考えた。大島は入ったばかりだ。だけど、大島にだれも何も言わない。そういったところを変えたい。ロッカールームで何が起きているかは分かっている。勇気を出し合う、気持ちを出し合う。そういうものをつくり出したい。何人かの選手にそこで存在感を出してほしい。第3のキーパーをメンタルプレイヤーとして扱うことはどの国でもある。パリSGでもやっていた。メンタルプレイヤーを入れて、チームを本当の底から押し上げる。永嗣にその役割を担ってもらいたい。

 彼はリザーブチームで試合をしていて、素晴らしいフィジカル状態にある。ツーリストとして選んだわけではない。フランスでは第1キーパー、第2キーパー、第3キーパーが一緒にトレーニングする。監督にも電話をした。彼がどのようなフィジカルコンディションか。トレーニングも続けているし、すぐに先発で出るのは難しいかもしれないが、特別な役割を与えたい。永嗣にもそれをちゃんと説明したい。もし西川がケガをしたら、準備ができていないと使えない。10年、代表の先発を守っていた選手。ツーリストという考えはない」

(取材・文 西山紘平)

●ロシアW杯アジア最終予選特集
●ロシアW杯各大陸予選一覧

TOP