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[国体少年男子]決して諦めず、見る人を「感動させる」戦い!広島県が選抜チーム大会移行後、初となる国体日本一!!

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国体制覇を成し遂げた広島県選抜イレブン

[10.6 国体少年男子決勝 大阪府 1-2 広島県 遠野運動公園陸上競技場]

 第71回国民体育大会「希望郷いわて国体」サッカー競技は6日、16歳以下で実施されている少年男子の部決勝を行い、広島県がFW渡部快斗(広島ユース、1年)の決勝ゴールによって大阪府に2-1で勝利。広島は70年の選抜チーム大会移行後は初、単独チームを合わせると61年に修道高が優勝して以来、55年ぶりとなる国体少年男子の部優勝を果たした。

 今大会5試合を戦った広島の決勝点はすべて後半以降(1試合が延長戦後半)。この日は後半28分に追いつかれながらも、すぐに切り替えてその1分後に決勝点を決めた。岩成智和監督(広島ユース)は決戦に向かう選手たちに「君たちがサッカーしてこれたのは色々な人たちの支えがあったから。その人たちに感謝を表すのはプレーでしかできんけん。自分たちにできることは人を感動させるって合言葉で、そこを表現してやろう」という言葉をかけた。その言葉通り、選手たちは追いつかれても屈することなく、再び相手を突き放して優勝。指揮官は「良くやった、ですね。(送り出す前、)最後に『オレ、まだ感動してないから感動させて』って言いましたけれど(微笑)、感動しましたよね。良くやりました。ありがとうですね」と選手たちに感謝していた。

 ともに選抜チーム大会移行後の初優勝を狙う両雄の対決。3-6-1システムの広島はGK稲田蓮(高陽高1年)、3バックは鈴直樹(広島ユース、1年)を中央に大越寛人(広島ユース、1年)と中谷超太(広島ユース、1年)が両ストッパーを努めた。ウイングバックは右が森保陸(広島ユース、1年)で左が東俊希(広島ユース、1年)。ダブルボランチには堤太一(広島皆実高1年)と松本大弥(広島ユース、1年)が入り、2シャドーは山口直也主将(広島観音高2年)と大堀亮之介(広島ユース、1年)。1トップは渡部が努めた。一方、大阪は4-5-1システムでGK林祥太郎(C大阪U-18、1年)、4バックは右SB岡治秀明(G大阪ユース、1年)、CB河井哲太(G大阪ユース、1年)、CB石尾崚雅(C大阪U-18、1年)、左SB山口和樹(C大阪U-18、1年)。中盤はMF奥野耕平(G大阪ユース、1年)の1ボランチでシャドーの位置にMF岩本翔(G大阪ユース、1年)とMF國分龍司(G大阪ユース、1年)が入った。そして右MF大垣勇樹(興國高2年)、左MF足立翼(G大阪ユース、1年)、1トップには原田烈志(G大阪ユース、1年)が配置された。

 準決勝で3連覇を狙う神奈川県を撃破した大阪の梶田浩信監督(FC Unione柏原)が「神奈川に勝って浮かれることもなく、集中して臨んだんですけど、前半が悔いが残る」と残念がった前半の35分間。開始30秒に岩本のスルーパスから國分が決定機を迎えたものの、これを広島GK稲田のファインセーブに阻まれると、5連戦の影響もあったかその後の大阪の動きは重かった。対する広島も5連戦だったが、運動量の面で大阪を上回る。ともに推進力ある動きを見せた堤と松本のダブルボランチや、対人で強さを発揮する鈴、大越、中谷の3バックが人数をかけたボール奪取。前向きにボールを奪った勢いで一気に前進して大阪守備陣に圧力をかけた。6分には渡部が相手GKのキックをチャージ。押し込もうとしたボールはCB石尾にゴールラインすれすれでクリアされたが、その後も東のクロスなどから先制点を狙っていった。

 大阪も徐々に運動量を上げ、原田や足立が岩本、大垣、奥野のスルーパスを引き出し、そこを起点に相手の守りを崩そうとする。それでも主導権を握って試合を進めていた広島が先制点を奪う。26分、広島は左中間でボールを持った東をボランチの堤が一気に追い越してパスを受ける。そしてエンドライン際から左足で上げたクロスが強風の影響で勢いが弱まってゆっくりと落下。一瞬虚を突かれてしまった大阪DF陣に対し、広島はこのボールに上手く反応した大堀が頭でゴール左隅へ押し込んだ。

 広島は右サイドでパワフルな動きを見せていた森保に代えて後半開始から準々決勝2ゴールのMF佐々木達也(瀬戸内高1年)を投入。鈴や松本を起点に後方から確実にボールを繋ぎながら攻める広島に対し、大阪は後半、原田を中心としたハイプレスで広島のポゼッションにストレスをかけると、奥野らがセカンドボールを拾い、そこからのスピードあるパス交換で一気にゴールヘ迫った。國分をFW中川裕仁(C大阪U-18、1年)に入れ替えた直後の13分には山口がワンツーから左足シュート。15分には右サイドを縦突破した大垣のクロスを岩本が頭で合わせた。大阪は中川の迫力ある動きがチームのギアをまた上げて攻守で広島にプレッシャーをかける。だが、広島は個々が運動量を落とさず、ボールを奪い切って攻め返す。そして16分には大堀のインターセプトから佐々木が右足シュート。20分、24分には渡部がフィニッシュへ持ち込み、山口が右サイドを破るなど前がかりになった大阪の背後を突く形でチャンスを掴んでいた。

 それでも後半、本来の勢いを取り戻していた大阪が同点に追いつく。28分、左サイドから攻めた大阪は左中間での混戦から中川が縦に抜け出してシュート。広島GK稲田が立ちはだかったが、交代出場FW小松海樹(履正社高1年)の落としを岩本が右足でゴールヘねじ込んだ。残り7分での同点ゴールに大阪イレブンが沸き返る。そして大阪は足立をMF判田直也(C大阪U-18、1年)へチェンジ。対して、試合終盤に追いつかれた広島だが、落胆した色を見せない。山口が「失点は忘れて1点取ろうと」振り返ったように、すぐに2点目を目指して攻撃。そして指揮官も「心動かされました」と評したゴールが失点のわずか1分後に生まれる。中谷のフィードを山口が競ると、左中間でルーズボールを拾った渡部が切り返しでDFをずらしてから、わずかに空いたシュートコースを右足で射抜く。「あそこしかありませんでした。ああいうプレーは昔から得意だったので、切り返してシュートというイメージはできていた」という一撃がゴール右隅へ吸い込まれた。ベンチ方向へ走り出した背番号11を中心に大興奮の広島イレブンとコーチングスタッフたち。主将の山口が大会中何度も繰り返してきた広島の強さの源、「諦めない気持ち」がここでも発揮された。

 広島はアディショナルタイムにMF森内幸佑(広島皆実高1年)をピッチへ。大阪も力を振り絞って反撃するが、広島の守りは堅い。それでも後半38分、左CKのこぼれ球を岩本が左足で捉える。DF間を抜けた一撃がゴールを襲ったが、ボールは左ポストを弾いて外側へ。そして直後に試合終了の笛が鳴ると、大阪の黄色いユニフォームがピッチに崩れ落ち、広島の赤が歓喜の雄叫びを上げた。

 広島が5日間表現した攻守に渡っての「アクションサッカー」。相手を動かして変化したところを突き、守ってもリアクションではなく、自分たちからアクションを掛け続けた。またチームは「最後チャンスの時にその場にいれる、ピンチの時にその場にいれる選手に」(岩成監督)なることを目指し、チームのためにハードワークしたイレブンは今大会、出場24チームの中で最もゴール前の攻防に人数の関わる個、チームになった。

 チームの合言葉は人に愛される選手、人に感動を与えられる選手になること。選手たちは諦めることなく戦い続けて関係者や観衆を感動させるような70分間を演じた。山口は「(感動させることが)できました。自分たち、それが目標だったので、それが達成できて嬉しいです」。AFC U-16選手権でU-16日本代表が来年のU-17W杯切符を勝ち取った直後に開催された国体。来年、世界で戦う権利を掴むためのアピールの大会でもあった16歳以下の選手たちの熱い戦いは5試合中2試合で0-2からの逆転劇を演じるなど、どんな時も諦めずに、見る側の心打つような戦いを見せた広島の戦士たちが頂点に立った。

(取材・文 吉田太郎)
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