beacon

[選手権予選]主将3人制敷く八千代は堅守速攻が形に、全国ファイナリスト2校と「やりたくて仕方ない」:千葉

このエントリーをはてなブックマークに追加

前半16分、山崎のゴールを喜ぶ八千代高イレブン

[10.9 全国高校選手権千葉県予選決勝T1回戦 八千代東高 0-2 八千代高]

 9日、第95回全国高校サッカー選手権千葉県予選決勝トーナメント1回戦が行われ、4年ぶりの優勝を狙う八千代高が八千代東高に2-0で勝利。八千代は10月30日の2回戦で中央学院高対東海大市原望洋高戦の勝者と対戦する。

 関東大会予選の覇者で、関東大会本戦でも準優勝している名門・八千代がまずは初戦を突破した。総体予選では8強で苦杯を喫し、現在は中心選手に怪我人も出ている八千代だが、全員でカバー。例年よりも守備に重きを置いているチームは豊島隆監督が「基本的にはカウンターのチームなのでそこがハマれば面白い。格上に対してはやれると思う」というように、この日もカウンターからゴールを奪うなど、狙いとしている形が表現できてきている。選手たちは現在のチームへの手応えを口にし、全国高校総体優勝の市立船橋高や同準優勝の流通経済大柏高と言ったライバルたちとの戦いを楽しみにしている様子。3人制を敷いている主将のひとり、CB平林翼(3年)は「今年は圧倒的な個がなかったのでみんなで相手より走るということ、カウンターで相手よりも一歩前に出るということを意識している。自分たちは相手が強ければ強い方がいいです。(市立船橋高や流通経済大柏高と)やりたくて仕方ないですね」と夏の全国ファイナリスト2校を打ち破って千葉を制すことへの意欲を口にしていた。

 試合は序盤から八千代が主導権を握る展開。MF三須啓史(3年)とMF山崎推智(3年)のダブルボランチがボールを奪う八千代は素早くショートパスを繋いで相手の守りを広げ、三須や10番FW菊池豪(3年)がドリブルでDF間へ割って入ってチャンスをつくる。そして前半16分には三須の右CKにCB桂島直輝(3年)と平林が飛び込み、最後はこぼれ球を山崎が右足で押し込んだ。その後も緊急出場となった右の菅昂司(3年)と左の藤尾佑馬(3年)の攻撃参加を加えて両サイドから攻める八千代はセットプレーなどから2点目を狙う。だが、八千代東も一倉心(3年)と川島健慎(3年)の両CBやMF佐藤大翔(3年)が中央でよく踏ん張ってボールを奪うとMF西里光夢(3年)の左足キック、超攻撃的左SB向井響(3年)のキープ力を活かして反撃した。

 後半開始直後にはFW石原楓馬(3年)が八千代GK中島駿一(3年)に鋭いプレスをかけてあわやのシーンも。だが、八千代は後半立ち上がり、相手の背後を取る形で決定機を連発する。三須や藤尾、MF監物恒輝(3年)の展開を変えるパスから、前線で巧みなボールコントロールを見せる菊池がポイントとなってその菊池や長い距離を走りきった菅がシュート。またFKで平林が競り勝ち、山崎が決定機を迎えた。そして15分、八千代はカウンターからFW稲葉翔和(2年)のラストパスで抜け出したMF正田稜(2年)が「カウンターで結構相手がいなくてチャンスだと思って走り切ったら良いパスが来て、あとは決めるだけでした」とGKとの1対1を制して2-0とする。

 近年、パスサッカーの印象が強い八千代だが、今年は豊島監督が「今年はみんな理解していると思います。粘ってやらないとダメなんで」と説明するように、粘って、守って速攻からゴールを目指す部分を柱としている。2点目はまさに狙い通りの形だった。この後、八千代東も勇気を持って反撃。前線へ次々とボールを入れて八千代を押し込む。八千代は桂島と平林がよく跳ね返していたが、クリアが小さくなったところを拾われて攻められてしまう。八千代東の交代出場MF野原拓也(2年)やFW平井遼(3年)がPAへ潜り込んできたシーンは両CBが身体を張ってギリギリのところでストップ。八千代は終盤押し込まれ、また3点目を奪って相手を失速させることができずに課題も残したが、それでもしっかりと初戦を制した。
 
 今年の八千代で特長的なことが平林、佐山徹、後藤優太郎という3人の主将を置いてチームづくりをしている点だ。昨年は主将が一人で責任を背負いすぎていると感じたことから選手たちからスタッフ陣に主将3人制の希望を伝えたという。平林は「基本は3人でチームを同じ方向に向ける、同じベクトルをつくるということで私生活とかサッカーに関係ないところから3人でまとめるということをやっています。1人では見えないところがあって、3人だから色々なことに気づけるというのがあった。例えば月初めに学校周りを部の150人全員で掃除するというのがあって、地域貢献もやろうというのが1人では思いつかなかったことだと思う。3人だからできるというのがある」。元々八千代は個々の意識高い集団。その中で主将が3人いることによって「コミュニケーションが3人でやると深まっているかなと思います」と豊島監督も分析していた。

 怪我を抱える佐山や後藤がサブやBチームにいることで上手く役割も分担。チームはひとつの方向へ向かっている。今回の選手権は150人全員で戦って力を発揮すること。平林は「今出ている選手だけじゃなくて、応援に回ってくる選手含めて150人全員でまず千葉制覇、そして全国制覇を目標に頑張ります」。堅守速攻と、力を注いできたまとまりの良さで八千代が千葉のライバルたちを上回る。

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
【特設】高校選手権2016

TOP