[選手権予選]4年前は県4部も今年は県1部L挑戦、2度の県8強入り。躍進の公立校・検見川が劇的勝利:千葉
[10.10 全国高校選手権千葉県予選決勝T1回戦 検見川高 2-1 東海大浦安高 中央学院大つくし野総合G]
第95回全国高校サッカー選手権千葉県予選は10日、決勝トーナメント1回戦残り2試合を行い、今年の関東大会予選と総体予選で8強入りしている県立校・検見川高が東海大浦安高に2-1で勝利。2回戦へ進出した。
わずか4年前は県4部リーグを戦っていたチームが、就任5年目の水庫祥元監督(前習志野高監督)の指導の下で大躍進。今年はジェフユナイテッド千葉U-18や八千代高などと県1部リーグを戦い、そしてトーナメント戦でも私立強豪校を破って連続で8強入りしているチームが、選手権でも千葉16強に勝ち残った。水庫監督が「何が子供たちにあるのか。可能性は何かきっかけがあれば本当に変わったり、伸びて行ったりするのかなと、彼らを見ると感じますよね。ボクも(名門)習志野にいた時とは違う勉強をさせてもらっている」という検見川イレブン。指揮官の就任当初、県4部にいた頃からあったという「上手くなりたい」「強くなりたい」という情熱、そしてわずかなきっかけでぐんと伸びた選手たちが千葉県2部Bリーグを制した昨年、そして今年と花を開かせている。
16強入りをかけた一戦の前半は互いにリスクを回避したシンプルな攻撃。検見川はともに180cm超のFW滝村宝(3年)とFW尾崎誠悟(3年)の大型2トップにボールを集める。滝村が「(尾崎が)足元凄く上手いので足元系は向こうに任せて、自分は裏に抜ける。ずっとやってきたのでコンビネーションはいいと思います」と説明する強力2トップ。滝村がハイサイドへの抜け出しや空中戦の役割を担当し、尾崎が収まりどころとなってチームを押し上げさせていた。
だが東海大浦安はCB山崎晃正(2年)が競り合いで食い下がるなどチャンスをつくらせない。逆にテクニカルなドリブルでDFを外すMF内海翔吾(3年)や俊足アタッカー、MF齋藤達也(3年)の攻撃力を活かして押し返していた。22分には左クロスの折り返しをMF高島陸(3年)が右足でシュートを狙うシーンもあったが、注目の大型CB寺崎周(3年)と、この日最終ラインで奮迅の働きを見せていたCB森部至(3年)を中心とした検見川の最終ラインは簡単には崩れない。
膠着した状態のまま迎えた前半30分、スコアが動く。検見川は中盤で前を向いたMF仁平大貴(3年)が左サイドへはたくと、MF宇田川魁太(3年)が左足でクロスボール。これをニアへ飛び込んだ滝村が豪快なヘッドでゴールヘ突き刺して先制した。滝村の公式戦初ゴールでリードした検見川に対し、東海大浦安は前半アディショナルタイムにチャンス。高島からのパスを相手のDFブロックの外側で受けたMF{8村瀬祐介}}(2年)が切り返しから右足で狙う。だが習志野はSB大崎享(3年)がよく戻って枠にシュートを飛ばさせない。
後半立ち上がり、検見川は攻撃参加したSB福岡啓太(2年)の左クロスから最後はMF松井洵弥(3年)が決定的な左足シュートを放ったが、押し気味に試合を進めていたのは東海大浦安の方。5分、中央から齋藤が左前方へ出したラストパスがPAの村瀬に到達する。だが、シュートは検見川GK新開祐太(3年)がストップ。東海大浦安は9分にも前線でFW新田啓人(3年)が競ったこぼれ球を拾った内海がPAへ切れ込み、クロスバーを直撃する左足シュートを放った。さらに15分にもこぼれ球をMF深野将輝(3年)が左足で叩くなど相手を押し込む。
検見川CB森部の幅広いカバーリングなどの前に攻めきれないシーンも多かったが、セカンドボールを拾って連続攻撃を繰り出す東海大浦安は26分、同点に追いつく。自陣からの縦パスに反応した内海がPAでDFのファウルを誘ってPKを獲得。これを自ら右足で決めて1-1とした。だが、検見川は怪我の影響で後半13分からの出場となった俊足アタッカー、10番FW梅津裕太(3年)のチャンスメークから同じく交代出場のMF安藤光(2年)が決定機を迎えるなど怯まない。そして押し返しつつあった時間帯の中で迎えた36分、検見川は怪我に苦しんでいた主将、MF平田祐志主将(3年)が劇的なゴールを決める。仁平の左CKをファーサイドの平田が頭で押し込んで勝ち越し。怪我のため、今年先発出場は3回目という苦労人が角度の少ない位置から「とりあえず、頭に当てれば入るかなと。思い切りヘディングしました。そうすればサイドネットに入るかなと思いました。A(チームの公式戦)では初めてですね」という渾身の一撃を決めてチームに歓喜をもたらした。
一斉に集まった青いユニフォームの中で歓喜の雄叫びを挙げていた主将。この1点をチームは身体を張って守り抜く。39分にはこぼれ球に後方から走り込んできた東海大浦安の左SB守屋恒佑(3年)が左足を振り抜いたが、検見川MF松井が身体を投げ出してブロック。アディショナルタイムも集中力を切らさなかった検見川が白井高との2回戦へ駒を進めた。
今年、県1部リーグ昇格を果たした検見川だが、千葉のトップリーグは簡単に勝利できるリーグではない。前半戦9試合の勝ち点はわずか1で総得点も3と苦戦。普段は学校グラウンドの3分の1面のみという練習環境、選手層も強豪たちとの差は大きいが、それでも、できる環境で工夫しながら強化してきたことが実を結んで、一方的にやられたような試合は無かったという。チームは少しずつ自信を掴み、着実に経験値を積み上げてきていた。そして後期は名門・八千代高や中央学院高から白星。ゴール数も後期の6試合で9ゴールと増加させている。水庫監督は「この子ら素直なので言われたことをしっかりやろうとしますし、それで結果を出すと自信になってくる。リーグ戦である程度やれるとなった時に、言ったことが浸透していって、結果を出すとまた自信になって。そのサイクルでだいぶ自信になってきた」と説明。自分たちもできる、という自信が成長に繋がり、結果に繋がって来ている。
今大会、選手たちが掲げる目標はベスト4だ。滝村は「ずっとベスト8目標にやっていて今年、関東予選と総体でどっちも入れたので次はベスト4」と語り、平田は「(ベスト8よりも)もう一個先に行きたいと思っている。総体で流経(流通経済大柏高)に負けたんでその借りを返したい」。互いに勝ち上がった場合、総体予選準々決勝で0-1で敗れている流通経済大柏との雪辱戦は準決勝で実現する。中学時代はほどんど無名だった選手たちが高校サッカーで目標を果たすか。約3週間後の2回戦までに少しでも成長を果たして、また白星を勝ち取る。
(取材・文 吉田太郎)
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【特設】高校選手権2016
第95回全国高校サッカー選手権千葉県予選は10日、決勝トーナメント1回戦残り2試合を行い、今年の関東大会予選と総体予選で8強入りしている県立校・検見川高が東海大浦安高に2-1で勝利。2回戦へ進出した。
わずか4年前は県4部リーグを戦っていたチームが、就任5年目の水庫祥元監督(前習志野高監督)の指導の下で大躍進。今年はジェフユナイテッド千葉U-18や八千代高などと県1部リーグを戦い、そしてトーナメント戦でも私立強豪校を破って連続で8強入りしているチームが、選手権でも千葉16強に勝ち残った。水庫監督が「何が子供たちにあるのか。可能性は何かきっかけがあれば本当に変わったり、伸びて行ったりするのかなと、彼らを見ると感じますよね。ボクも(名門)習志野にいた時とは違う勉強をさせてもらっている」という検見川イレブン。指揮官の就任当初、県4部にいた頃からあったという「上手くなりたい」「強くなりたい」という情熱、そしてわずかなきっかけでぐんと伸びた選手たちが千葉県2部Bリーグを制した昨年、そして今年と花を開かせている。
16強入りをかけた一戦の前半は互いにリスクを回避したシンプルな攻撃。検見川はともに180cm超のFW滝村宝(3年)とFW尾崎誠悟(3年)の大型2トップにボールを集める。滝村が「(尾崎が)足元凄く上手いので足元系は向こうに任せて、自分は裏に抜ける。ずっとやってきたのでコンビネーションはいいと思います」と説明する強力2トップ。滝村がハイサイドへの抜け出しや空中戦の役割を担当し、尾崎が収まりどころとなってチームを押し上げさせていた。
だが東海大浦安はCB山崎晃正(2年)が競り合いで食い下がるなどチャンスをつくらせない。逆にテクニカルなドリブルでDFを外すMF内海翔吾(3年)や俊足アタッカー、MF齋藤達也(3年)の攻撃力を活かして押し返していた。22分には左クロスの折り返しをMF高島陸(3年)が右足でシュートを狙うシーンもあったが、注目の大型CB寺崎周(3年)と、この日最終ラインで奮迅の働きを見せていたCB森部至(3年)を中心とした検見川の最終ラインは簡単には崩れない。
膠着した状態のまま迎えた前半30分、スコアが動く。検見川は中盤で前を向いたMF仁平大貴(3年)が左サイドへはたくと、MF宇田川魁太(3年)が左足でクロスボール。これをニアへ飛び込んだ滝村が豪快なヘッドでゴールヘ突き刺して先制した。滝村の公式戦初ゴールでリードした検見川に対し、東海大浦安は前半アディショナルタイムにチャンス。高島からのパスを相手のDFブロックの外側で受けたMF{8村瀬祐介}}(2年)が切り返しから右足で狙う。だが習志野はSB大崎享(3年)がよく戻って枠にシュートを飛ばさせない。
後半立ち上がり、検見川は攻撃参加したSB福岡啓太(2年)の左クロスから最後はMF松井洵弥(3年)が決定的な左足シュートを放ったが、押し気味に試合を進めていたのは東海大浦安の方。5分、中央から齋藤が左前方へ出したラストパスがPAの村瀬に到達する。だが、シュートは検見川GK新開祐太(3年)がストップ。東海大浦安は9分にも前線でFW新田啓人(3年)が競ったこぼれ球を拾った内海がPAへ切れ込み、クロスバーを直撃する左足シュートを放った。さらに15分にもこぼれ球をMF深野将輝(3年)が左足で叩くなど相手を押し込む。
検見川CB森部の幅広いカバーリングなどの前に攻めきれないシーンも多かったが、セカンドボールを拾って連続攻撃を繰り出す東海大浦安は26分、同点に追いつく。自陣からの縦パスに反応した内海がPAでDFのファウルを誘ってPKを獲得。これを自ら右足で決めて1-1とした。だが、検見川は怪我の影響で後半13分からの出場となった俊足アタッカー、10番FW梅津裕太(3年)のチャンスメークから同じく交代出場のMF安藤光(2年)が決定機を迎えるなど怯まない。そして押し返しつつあった時間帯の中で迎えた36分、検見川は怪我に苦しんでいた主将、MF平田祐志主将(3年)が劇的なゴールを決める。仁平の左CKをファーサイドの平田が頭で押し込んで勝ち越し。怪我のため、今年先発出場は3回目という苦労人が角度の少ない位置から「とりあえず、頭に当てれば入るかなと。思い切りヘディングしました。そうすればサイドネットに入るかなと思いました。A(チームの公式戦)では初めてですね」という渾身の一撃を決めてチームに歓喜をもたらした。
一斉に集まった青いユニフォームの中で歓喜の雄叫びを挙げていた主将。この1点をチームは身体を張って守り抜く。39分にはこぼれ球に後方から走り込んできた東海大浦安の左SB守屋恒佑(3年)が左足を振り抜いたが、検見川MF松井が身体を投げ出してブロック。アディショナルタイムも集中力を切らさなかった検見川が白井高との2回戦へ駒を進めた。
今年、県1部リーグ昇格を果たした検見川だが、千葉のトップリーグは簡単に勝利できるリーグではない。前半戦9試合の勝ち点はわずか1で総得点も3と苦戦。普段は学校グラウンドの3分の1面のみという練習環境、選手層も強豪たちとの差は大きいが、それでも、できる環境で工夫しながら強化してきたことが実を結んで、一方的にやられたような試合は無かったという。チームは少しずつ自信を掴み、着実に経験値を積み上げてきていた。そして後期は名門・八千代高や中央学院高から白星。ゴール数も後期の6試合で9ゴールと増加させている。水庫監督は「この子ら素直なので言われたことをしっかりやろうとしますし、それで結果を出すと自信になってくる。リーグ戦である程度やれるとなった時に、言ったことが浸透していって、結果を出すとまた自信になって。そのサイクルでだいぶ自信になってきた」と説明。自分たちもできる、という自信が成長に繋がり、結果に繋がって来ている。
今大会、選手たちが掲げる目標はベスト4だ。滝村は「ずっとベスト8目標にやっていて今年、関東予選と総体でどっちも入れたので次はベスト4」と語り、平田は「(ベスト8よりも)もう一個先に行きたいと思っている。総体で流経(流通経済大柏高)に負けたんでその借りを返したい」。互いに勝ち上がった場合、総体予選準々決勝で0-1で敗れている流通経済大柏との雪辱戦は準決勝で実現する。中学時代はほどんど無名だった選手たちが高校サッカーで目標を果たすか。約3週間後の2回戦までに少しでも成長を果たして、また白星を勝ち取る。
(取材・文 吉田太郎)
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