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[選手権予選]駒澤大高は5-0快勝も「誰が感動するんだ!」の檄。犠牲心、一体感持って昨年越え、日本一へ

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個々の強さを結集して目標の全国制覇を。駒澤大高はより一体感を高めて準決勝、決勝に臨む

[10.16 全国高校選手権東京都Bブロック予選準々決勝 駒澤大高 5-0 専修大附高 実践学園高尾G]

 第95回全国高校サッカー選手権東京都Bブロック予選準々決勝が16日に行われ、昨年度全国8強の駒澤大高が専修大附高に5-0で快勝。駒大高は11月6日に行われる準決勝で東京朝鮮高と戦う。

 試合中、駒大高のベンチからは「雰囲気が全然良くないんだよなぁ」という声が何度も聞こえていた。5-0で終了した試合後にも大野祥司監督の口から発せられた言葉は「きょうのゲーム見てて誰が感動するんだ」。指揮官も認めているように各選手は、一生懸命プレーしている。だが、それは自分のやりたいプレーをそれぞれが一生懸命やっているだけだった。欠いていた一体感。大野監督は「一生懸命やっているんですけど、まとまり感とか、強い雰囲気がないんですよ」と厳しく指摘し、右SB高橋勇夢主将(3年)は「点差がついたから良かったんですけど、いいゲームができたかというと全然できていなくて、応援してくれている人の心に届いたかというと全く届いていないと思うので、まだまだですね」と首を振った。

 激戦区・東京の準々決勝で5-0の快勝。高橋やCB佐藤瑶大(3年)、GK鈴木怜(3年)、左SB村上哲(3年)ら半数以上が昨年度の全国8強を経験している今年のチームは、躍進した1年前以上の成績も十分に実現できそうな陣容、強さがある。その中で大野監督の言う犠牲心を持って、チームのためにどれだけ献身的にできるかを求められている選手たちだが、この日は及第点を与えられるほどチームのために声を掛けたり、献身的にプレーし、エネルギーを出して戦っていた選手はわずか。後半途中から投入された「努力の男」DF椿原悠人(3年)がそのロングスローやラストパスでスタンドを盛り上げ、一体感を生み出していたが、満足の行く80分間ではなかった。鈴木は「去年は、自分たち2年生がいっぱい出ていて3年生は4人だけだったんですけど、その4人が凄いエネルギーを出してチームを引っ張ってくれて、それで自分たちが自由にできている感じだったので、今年は一人ひとりがもっとチームのために貢献しないといけないと思う」と改善することの必要性を口にしていた。

 選手たちも反省する内容。だが、強さは示した。前半1分、左クロスのこぼれを10番FW影山克明(3年)が右足でゴールヘ叩き込んで先制点。さらに6分には村上の絶妙な右CKをファーサイドの高橋がゴールヘプッシュして立ち上がりで2点のリードを奪った。さらに20分にはボランチ起用された西田直也(2年)が鮮やかに右足シュートを決めて3-0とする。33分にも右サイドのMF栗原信一郎を起点に繋いでMF武智悠人(3年)が出したラストパスに影山が反応するなど追加点を奪うチャンスをつくった駒大高だが、不用意なボールロストも続発。専大附は中盤でMF白井達哉(3年)らが身体を張ってボールを奪うと保持する時間を伸ばし、FW福井滉佑(3年)や左MF佐藤伸哉(3年)をポイントに押し返して相手の背後を突くシーンを増やしていた。駒大高は守備の柱である佐藤やスピードのある1年生CB齋藤我空が簡単にはチャンスを作らせなかったが、MF大島恵吾(3年)に鋭いクロスを入れられるシーンもあった。

 後半、駒大高は高いラインを敷く専大附の背後を狙うが、再三オフサイドを取られて攻めきることができない。それでも15分、高橋の右アーリークロスをFW矢崎一輝(3年)が右足で決めて4-0。MF服部正也(3年)ら交代出場選手たちが活性化した終盤の34分にはMF菊地雄介(3年)の仕掛けから上げたクロスをMF米田泰盛(3年)が合わせ、最後はFW米谷拓海(2年)がゴールヘ押し込んで5-0で試合終了を迎えた。

 この日は交代出場した選手たちが先発組を上回るようなパフォーマンス。昨年全国8強メンバーも控えに回る可能性が十分にあるほど先発争いは激化している。だが、ここから続く戦いでは個々の強さ、選手層の厚さを持っていてもそれだけでは勝つことはできない。「最後は上手いの当たり前の世界。責任感とか、戦うとか、チームのための犠牲心とか、紙一重」(大野監督)という中で差を生み出し、全国、そして昨年以上のステージまで勝ち上がることができるか。指揮官が「可能性はある子たち」と語る今年の駒大高。高橋が「自分たち、夏にミーティングした時に目標は全国制覇と掲げて、ブラさないで行こうと考えていて、そのためには去年のベスト8に行かないといけないし、そこに立つためにはまず東京を取らないといけない。目標はそこで間違いないですけど、目の前の試合をどう勝ち切るか考えてやっています」と語るように全国制覇を目指すチームは、昨年のようにより犠牲心と一体感を持って、見る人を感動させるような戦いを表現して白星も掴む。

(取材・文 吉田太郎)
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