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「どかん!」だけでなく「ちょんちょん」も…直近7戦6発の愛媛FW阪野「全てが点を取れる方向に転んでる」

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[10.30 J2第38節 東京V1-1愛媛 味スタ]

 一人のストライカーが脱皮しようとしている。愛媛FCのFW阪野豊史は直近7試合で6得点を挙げる活躍。東京V戦でも1得点を決めた。チーム内得点王となる今季通算10得点という数字はキャリア最高のものだ。

 明治大からユース時代を過ごした浦和レッズへ加入するも、なかなか出場機会に恵まれず。2015年には栃木SC、今季は愛媛へ期限付き移籍。今シーズンは開幕から第31節まで、わずか4得点を挙げるのみだったが、9月18日の第32節・岐阜戦で今季5点目を挙げると目を覚ます。そこから4試合連続ゴールを記録。札幌戦は不発だったが、その後は2戦連発と好調を維持している。

 この日の東京V戦では0-1の後半27分にゴールネットを揺らした。右サイドからのスローインをMF表原玄太が頭で落とす。この瞬間にターンした阪野はDF平智広を置き去りに、スライディングにきたDF田村直也を難なくかわした。左サイドから相手2選手が迫っていたが、「あまりコースに関係ないかな」と意識せず。GKを前に冷静に流し込んだ。

「スローインでターンできると思ったので、1人目は上手くかわして。2人目はよく見えていなかったけれど、“ごりごりごり”ってなりました。気がついたらもうGKと1対1だったので。そこは落ち着いて流し込めたかなと思います」

 大学時代から181cm、80kg超の体躯を活かした豪快なプレーが持ち味だった。本人も「結構ぶち抜いてどかん!とか。クロスをどかん!とかの得点はわりと多いんですよね」と言う通りだ。

 しかし今季は前半戦で思うように点を取ることができなかったことから、「どこを直したらいいか」と悩んだ。そして点を取るパターンを増やすべく、PA内で自ら打開していけるように練習から意識的に取り組んだ。それがここへ来て、結果につながり始めた。

 この日の前半終了間際45分には、右クロスをPA内左で受けた阪野は、DFを前に左足でのトラップから持ち替えてフェイントを入れると、右足シュートを放った。惜しくもクロスバーわずかに上へ外れていったが、以前の阪野ならばシュートまで持っていくことが難しいシーンだった。

 本人も「狭いスペースで“ちょんちょん”みたいな。前半のああいうシュートとかは、今季の前半戦だったら、あそこまでいけずDFに当たってしまうとかあったかもしれないけれど、今は相手の足もしっかり見えているし、少ない時間で“ちょんちょん”と打つところは練習してきたところだから」と言う。

 ここへ来て好調ぶりが続いているFWは「点を取って、余裕が出てきたようなメンタル的な部分もあると思いますけど、今までやってきたこともそうだし、チームのやり方もそうだし、全部が自分が点を取れる方向に転んでいるから。短期間で点を取れているのかなと思います」と分析した。

 愛媛はこの日の試合を1-1で終えた結果、J1昇格プレーオフ進出の可能性が消滅した。それでもチーム内得点王の阪野は、最後4試合を全力で戦い抜く覚悟。「残りの4試合で来年につながる戦いを見せたいし、応援してくれたサポーターのためにも、できるだけ勝ちを多く取りたい。何よりも勝ち越したいので。今は勝ちが多いから、負けが多くならないようにやりたい」と力強く意気込んでいた。
(取材・文 片岡涼)

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