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[選手権予選]「高い壁」「王者」乗り越えた!!鵬学園が18連覇狙った星稜破り、初の全国へ!:石川

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[11.5 全国高校選手権石川県予選決勝 星稜高 0-1 鵬学園高 西部緑地公園陸上競技場]

 鵬学園が「絶対王者」星稜破って初V!! 第95回全国高校サッカー選手権石川県予選決勝が5日に行われ、17連覇中の星稜高と初優勝を狙う鵬学園高が対戦。鵬学園がMF森田蓮(2年)の決勝点によって1-0で勝ち、初優勝を飾った。

 大会MVPに輝いたMF千葉東泰共主将(3年)が「高い壁でしたね。その壁を崩すためには自分たちまだ歴史が少ないんで、難しいと思っていた」と語り、決勝点の森田は「17連覇っていう記録があったので、強いっていうイメージがありました」、そして好守を連発した1年生GK的場大輝は「その名の通り、王者」と星稜についての印象をそれぞれ口にしていた。能登半島の中央、七尾市に位置する鵬学園がその「高い壁」「王者」を倒しての石川制覇。5年前の監督就任時は3年生部員5名で、県内最下部のサードリーグから今年プリンスリーグ北信越で戦うまでにチームを育て上げてきた赤地信彦監督は、選手たちの手で胴上げされた後、「この舞台で(星稜を)倒すためにやってきた」と会心の表情を見せていた。

 星稜は12年度全国4強、13年度全国準優勝、14年度全国優勝、そして昨年度も全国4強入りしている全国トップレベルの強敵。星稜は全国大会で勝つためのチーム作りのまだ途中の段階という印象もあったが、それでも立ち上がりからパワフルかつスピーディーな攻守で鵬学園を飲み込みに来ていた。エースFW窪田翔(3年)にボールを当てて、そこからFW亀谷宇々護(3年)やMF金子伸(2年)がドリブルでサイドのスペースを突いてクロスを狙っていく。14分には窪田のヘディングシュートがフワリと上がってゴール方向へ向かったが、鵬学園DFがゴールライン上でクリア。先制点を奪えない。

 一方、鵬学園はFW川口励二(3年)が抜群のスピードで相手の背後を突いたほか、エースMF千葉東のドリブルシュートや、MF越田瞬(3年)のテクニカルなドリブルなどで攻め返す。そして22分、鵬学園が少ないチャンスをゴールへと結びつけた。中盤でボールを持った千葉東がDFのプレスをいなしながら右へボールを運ぶと、相手の守りの虚を突く形で右オープンスペースへ絶妙パス。これで一気に抜け出したFW西川大祐(2年)がPAまで切れ込んでラストパスを通すと、ニアサイドでコントロールした森田が「パスもらって一人DFいたんで、かわしてインサイドで流し込んだ」。DFを一人外してから右足を振りぬき、名手・GK高橋謙太郎主将(3年)が守る星稜ゴールを破った。

 鵬学園は32分にも左クロスのこぼれ球を西川が左足で叩く。強烈な一撃がゴールを捉えたが、GK高橋が何とか反応し、ボールはクロスバーを叩いた。星稜は32分、早くも投入されたFW奥野隆正(3年)がGKをかわして右サイド深く切れ込むが、ラストパスは鵬学園DFがクリア。40分にはクロスをGK的場にパンチングされたものの、MF片山浩(3年)がすかさずGKの頭上を突くループシュートを放つ。ゴール方向へゆっくりとボールが向かったが、バックステップを踏んだGK的場がワンハンドでゴール外へはじき出して1-0のスコアは変わらなかった。

 後半、星稜の攻撃の迫力が増す。6分、CB岡田勇斗(3年)が左サイド後方から入れた対角線のクロスボールで窪田が抜け出したが、シュートは距離を詰めた的場が阻止。その後も星稜はクロスやロングスローなどから窪田にボールを集め、そのヘディングシュートなどでゴールヘ迫ったものの、鵬学園も危険人物に対してしっかりと対応する。CB竹下潤(2年)が競って、そのこぼれ球をCB能登駿平(2年)やMF輪嶋拓海(1年)がクリア。また赤地監督が「あそこ競り負けていたらやられていた。1年生があれだけ弾き返してくれた。良くやってくれた」という1ボランチの輪嶋がグラウンダーで前線へ入ってくるボールを防ぐ役割も全うして決定打を打たせない。

 星稜の河崎護監督も「鵬さんの最終ラインの守備力がありましたよね。集中している以上に『跳ね返すぞ』という気持ち、大事なものをもっている気がしました」と評した気迫の守り。小柄な選手の多い鵬学園は体格差を埋めるために朝練習で取り組んできたヘディングも効果を発揮して、窪田に競り負けるシーンもあったが簡単にヘディングさせず、またこぼれ球の対応も速かった。ドリブルで切り込まれても最後体を投げ出してブロックする。そして鵬学園のベンチから試合を通して発せられていたのは「引くな!」という言葉。「ビビって引いちゃったら蹴られる一方なんで前で引っ掛けるように」(赤地監督)。その言葉通りに選手たちは走り抜いてクロス、ロングボールを簡単には蹴らせなかった。36分、39分にはPAへ流れたボールに右MF木出雄斗(3年)が走り込んだが、守備範囲広く守ったGK的場が連続で好守。逆に千葉東を起点にカウンターを狙い続けた鵬学園は単調な攻撃が続いてしまった感のある星稜に最後まで1点を与えず、石川県高校サッカーの歴史を塗り替えた。

 赤地監督就任から初めての対星稜戦だったという2年前は1-2で敗戦。昨年の総体予選ではあと一歩まで追い詰めながらも、0-1で敗れた。簡単には壁を越えることができなかったが、本格強化からわずかな期間で早くも星稜の牙城を崩した。千葉東は「今まで信じてやってきたことが良かった」。チームは石川県を突破するためにフォーメーションなど色々な策を考え、チャレンジ。今年からプリンスリーグ北信越で富山一高や新潟明訓高、帝京長岡高など県外の強豪校と対戦できていることも大きかった。「プリンスリーグに上がったのが大きかった。去年は星稜がどういう一年を送っているのか、見えなかった」(赤地監督)。星稜と同じプリンスリーグのステージに立ち、星稜や、星稜と戦ったチームと対戦することで何が効果があるのか、また力関係など見えてくるものがあった。戦力的には昨年を下回るものの、チームとして成長。今年は総体予選を含めると対星稜戦は3戦3敗だったが、赤地監督が「こうやろうと決めて納得したら一生懸命やります。(決勝では)それプラスアルファが出た」という選手たちは、CB2人と輪嶋の3人がバランスよく守って星稜対策をやり切るなど選手権予選で壁を乗り越えた。

 初めての選手権全国大会は「星稜を破ったチーム」として注目を集める中での戦いとなる。千葉東は「あとは全国なので、星稜さんが築き上げてきたもののさらに自分たちが上に行けるように。必ず全国制覇したいです。(全国では)市立船橋とやってみたいです。ナンバー1を取っているチームなので自分たちがどれくらい通用するのか試したいです」と語り、森田は「全国大会では星稜も1回優勝しているんで、自分たちも初の全国で優勝できるように頑張りたいです」。王者を倒すために努力し、その壁を乗り越えた鵬学園は星稜を上回るような強敵との対戦を希望。そこを打ち倒すためのチャレンジをして、また成長を遂げる。

(取材・文 吉田太郎)
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