beacon

[MOM1934]広島ユースGK大迫敬介(2年)_U-19代表GKが苦手のPK克服、先輩GKとの“絆”が生んだビッグセーブ

このエントリーをはてなブックマークに追加

サンフレッチェ広島ユースはPK戦で2本を止めたGK大迫敬介(21番)と3年生GK伊藤隆介(31番)が歓喜の抱擁

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.5 Jユースカップ準々決勝 C大阪U-18 1-1(PK3-4)広島ユース 味スタ西]

 1-1からのPK戦突入。困難な状況には違いないが、GKにとっては見せ場到来といったシチュエーションでもある。サンフレッチェ広島ユースのゴールを預かるのは、飛び級でU-19日本代表候補にもなっている2年生GK、大迫敬介。試合中にもビッグセーブを見せていた頼もしい存在だが、実は広島側にとって少々不安要素だった。

 何しろ「練習では止めていなかったですから」と沢田謙太郎監督と主将のDFイヨハ理ヘンリーがそろって言い、大迫本人も「練習では全然止められなかった」と言った上で、「実はPK戦で勝ったことがないんです」と苦笑いを浮かべたように、瞬発系のプレーが得意にもかかわらず、PKは不思議と苦手だったのだ。

 一方で広島ユースにはPKの名手もいる。3年生ながらベンチ外となっていた水田雄真だ。PK練習の中であらためてその上手さに感嘆したという大迫は、「PKを止めるコツを教えてほしい」と願い出たと言う。返ってきたのは「お前は動くタイミングが早すぎる。ギリギリまで待て」というシンプルな回答だった。どうしても気持ちが先走って早めに動いてしまう大迫の欠点をズバリ指摘する答えを肝に銘じつつ、このPK戦へと臨んだ。

 大迫はもう一人の3年生GK伊藤隆介にも素直に頼った。PK戦の直前、「観ていて飛ぶの早かったらすぐに教えてください!」と声を掛けて、快く承諾をもらったという。「いつも試合中、誰よりも声を出してくれる」という先輩GKがしっかり観ていてくれるという安心感の中、ついつい早く動いてしまう悪癖をコントロール。しっかりとキッカーの動きを見極めながら、2本目と3本目を鮮やかにセーブ。4-3でのPK戦勝利を見事につかみ取ってみせた。

 コンプレックスだったPK戦の弱さを克服した大迫の目からは思わず涙がこぼれ、飛び出してきたGK伊藤とは熱い抱擁が交わされた。イヨハの言葉を借りれば、まさに「絆の勝利」だろう。それはGKチームとしての絆であり、たとえ試合に出られずとも勝利に貢献しようと後輩を支えた3年生たちの絆が生んだ勝利でもあった。

(取材・文 川端暁彦)
▼関連リンク
2016Jユースカップ特集ページ

TOP