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「選手権予選」「逃げないで」戦ってきたプリンス北信越王者・新潟明訓、後半40分の決勝点で新潟連覇王手

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後半40分、新潟明訓高は決勝点を決めたMF榎並洸がスタンドへダッシュ

[11.6 全国高校選手権新潟県予選準決勝 新潟西高 0-1 新潟明訓高 新発田市五十公野公園陸上競技場]

 6日、第95回全国高校サッカー選手権新潟県予選準決勝が行われ、連覇を狙う新潟明訓高は後半終了間際の40分に10番MF榎並洸(3年)が決めた決勝点によって新潟西高に1-0で勝利。新潟明訓は13日の決勝で帝京長岡高と戦う。

 0-2からの逆転で日本文理高を破った準々決勝に続き、難しい試合だった。新潟明訓・田中健二監督が「今年の西高は相当強い」と評した新潟西に押し込まれる時間帯もあった。だが、今年のプリンスリーグ北信越王者である新潟明訓は、今年の世代の特長である技術の高さを活かしたパスワークと、繰り返しDFの背後を突いたFW三富優介(3年)の動き、MF関口正大主将(3年)のドリブル突破などでジャブを打ち続け、終了間際の一撃によって強敵を沈めた。

 0-0の後半40分、新潟明訓は右サイドのハーフウェーライン付近でボールを奪った交代出場MF内藤和輝(3年)が前方のFW小竹直輝(3年)にボールを預ける。小竹はタメをつくると、内側から追い越した内藤の前方スペースへパス。相手DFと競りながらエンドラインぎりぎりまで運んだ内藤が身体を投げ出すような形で中央へボールを折り返す。これを中央で待ち構えた榎並が「天然芝だったのでフカさないことを意識した」と冷静に右足ダイレクトで合わせて決勝点を奪った。控え部員たちが待つスタンドまで駆け抜けた背番号10がチームメートたちと喜びを爆発。待望の1点を奪った新潟明訓が2連覇に王手を懸けた。

 前半は風上の新潟西が押し込む展開に。左SB小菅雷樹主将(3年)と右SB前田峻(3年)の両SBらサイド攻撃に強みを持つ新潟西は司令塔のMF小川朋広(3年)中心にボールを左右へ動かし、右のMF石黒日向(3年)らが仕掛けてクロスへ持ち込んでくる。36分にはDFにブロックされたものの、石黒がインターセプトから右足シュートへと持ち込んだ。一方の新潟明訓は風下だった前半こそシュート1本に終わったものの、相手の特長を消しながら0-0で試合を進めて後半にチャンスの数を増加。6分に小竹からのパスを左中間で受けたMF神蔵翼(3年)が振り向きざまに放った左足シュートを枠へ飛ばし、12分には右FKを胸でコントロールした関口が右足でゴールを狙う。だが184cmの長身GK飯吉将通(3年)中心に新潟西の守りは堅く、スコアを動かすことはできない。

 両チームが交代カードを切って迎えた後半35分、新潟西がビッグチャンスを迎える。右サイドからボールを運んだ石黒がPAへスルーパス。これに走り込んだ10番FW木村智弥(3年)が右足を振り抜いたが、距離を詰めた新潟明訓GK杉本陸(3年)がビッグセーブ。新潟西はこぼれ球をPAの交代出場MF涌井和史(3年)へ繋いだが、左足で合わせ切ることができず、新潟明訓の右SB小林将真(3年)にクリアされてしまった。新潟西は成海優監督が「(怪我で)2か月プリンス出ていなかった。(でも)大舞台に強いんで。攻撃も守備も良くやっていた」という小川が相手カウンターのピンチで絶妙なカバーリングを見せるなど、攻守において存在感。チームもボールを繋いでサイドまでは運べていたが、指揮官が「最後の精度なんだろうね。ズラせていたけれど」と首を振ったように、最後の局面で精度を欠いてしまう。そして一瞬の隙が失点に直結。好チームは準決勝で敗退となった。

 勝った新潟明訓はU-16日本代表歴を持つMF加藤潤(現筑波大)とMF中村亮太朗(現中央大)の両輪中心に個々のレベルが高かった昨年に続く全国へ王手。昨年からの主軸である関口と杉本らを残す今年について新潟明訓の田中監督は、破壊力こそ欠くものの「今年は言えば聞いてくれるので。テクニックは昨年よりはある。チームとして成熟していますし、プリンスも北信越取れたんでそういうプライドは持ってやっていきたい」と口にする。伝えてきたのは「逃げないこと」。ロングボールに頼り過ぎることなく、失点しても、例え負けることがあっても、自分たちの技術を活かしたサッカーを構築することを目指してきたという。「逃げないで、と。負けることを怖れていたら本当にいいところが出ないので」(田中監督)。精度の部分など課題はまだまだある。だが、関口も「負けを怖れてしまうと、蹴って蹴って個人に頼るといい結果も出ないので、負けを怖れずにボールを繋いで、繋いで全員でやることを心がけています」というチームは、プリンスリーグラスト2試合で星稜高と富山一高に連勝して優勝し、選手権予選でもしぶとい戦いぶりで決勝へ駒を進めた。

 田中監督が「(個人的な印象では)かなり失点しているんですけど、この子たち必ず追いつけるんで。メンタル的に成長して90分やり続けることができる子どもたちになったのですこく楽しみ」と期待を寄せる今年の新潟明訓。榎並が「帝京長岡さんも凄くいいチームですけど、自分たちは2連覇が懸かっている。絶対に負けられないし、さらに先輩たちを越えたいという思いがある」という思いも持って、昨年と同カードとなった帝京長岡との決勝を戦い、再び乗り越えて全国舞台に立つ。

(取材・文 吉田太郎)
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