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立命館大DF大田主将はインカレ逃して無念の涙…「日本一のクラブ」へ想いは託される

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スタンドには4回生それぞれへ寄せ書きの横断幕が掲げられていた

[11.13 第94回関西学生サッカーリーグ後期第11節 立命館大1-2大阪体育大 ヤンマー]

 想いは託された。昨季に引き続き、あと一歩のところで全日本大学選手権(インカレ)出場を逃した立命館大。DF大田隼輔(4年=桐光学園高)主将を筆頭に、今季は「日本一のクラブ」を目標にやってきたが最後の舞台に立つことは叶わなかった。

 昨季は勝ち点や得失点差で並んだ大阪体育大を総得点数で下回り、インカレ行きを逃した。そして今季は因縁ある大阪体育大と最終節で激突。勝てば全国行きの決まる一戦で先制するも逆転負け。2年連続で涙した。

 立命館大の米田隆監督は「去年と違った展開で全国へ手が届きそうだった。積み上がった想いに、何がもう一つ必要なのか」と言い、「1年を通じて安定して結果を出し続けるためには、もっともっと強くなる必要がある」と指摘した。

 これには10番を背負ったMF國分伸太郎(4年=大分U-18)も「チームとして去年と同じようにあと一歩というところで逃したというのは、反省を活かしきれていないというのもありますし、どうにか変えようとしましたが、変える力はまだまだ足りなかった」と同調。

「夏の総理大臣杯では準々決勝までいきましたが、一発勝負なのでどのチームも上がっていける可能性がある。やっぱり長期的なリーグ戦で結果を出せないと、チームとしては甘いということなんだと思います」と唇を噛んだ。

 今季は「日本一のクラブ」を目標に掲げ、戦ってきた。3月の京都学生選手権2連覇に始まり、夏の京都FA杯では準優勝。天皇杯本選出場にあと一歩と迫った。夏の大学日本一決定戦・総理大臣杯では全国8強。経験を積むとともに結果を残してきた。

 しかしリーグは11勝6分5敗で、無念の5位終戦。黒星の数はリーグ全体で2番目の少なさだったが、引き分け数は最多タイ。勝ちきれない試合が多かったことが尾を引いた。

 涙の幕引きとなったがシーズン全体で見れば、様々な舞台で経験を積んでは爪痕を残してきた。指揮官は「非常にポジティブに、この1年を進めてくれた4回生に敬意を表したい」と感謝。

 大田主将は「つなぐという、あのスタイルが立命の伝統。それを受け継がないといけない。立命はそういうサッカーなんだというのが、今年は関西にも全国にも少しだけ示せたので、これからどんどん立命といえば……というのが広まっていけば」と後輩たちに託した。

 この一年は「日本一のクラブ」を合言葉に、それぞれがチームのために身を削る厳しい日々だった。大田主将は「本当に4年生はキツかったと思います。チーム立ち上げ時は、毎日毎晩遅くまでミーティングをしましたし、そのなかでケンカになるようなこともありました。それでも自分たちは日本一になるという目標があるなかで、出ている4回生だけでなく、そうではない4回生が本当に主体的にやってくれたんです」と言う。

 最終節・大阪体育大戦のスタンドには、4回生それぞれの弾幕が掲げられており、想いを込めた寄せ書きがされていた。今季の立命館大は全員が一つの方向を見据え、それぞれが役割を全うするチームだった。

 試合後、ハキハキとした口調で今季を振り返っていた主将だが、共に戦ってきた仲間たちへ思いを馳せると、溢れる涙を止めることはできなかった。

「きょうアシスタントという形でベンチに入ってくれた吉永皓正(4年=C大阪U-18)は、彼は本当にチームのために自分を犠牲にしてやっているので……そんななかで試合に出ている自分とかは彼を全国に連れて行けなかったのは……非常に悔しいですし、4回生は本当に米田さんを中心に主体的に頑張ってくれて、サッカー面以外でもいろいろな立命館大を示せたかなと思います」

「4回生の見えない部分の支えが大きくて。チームに何かが起これば、すぐに彼らが対応してくれるし、僕や國分などがサッカーに専念できる環境をスタンドの選手たちも含めて作ってくれて、いい意味で役割分担ではないですが、非常に日本一へ向けて進みやすいチームにしてくれました」

 ピッチ上の11名ならず、スタッフとして学生コーチとして戦った者、スタンドで声を枯らした者、それぞれがチームのために身を捧げ、やるべきことを全うした。「ただ僕たちには何かが足りなかった。僕らも答えがわからないので、そこを後輩には見つけて欲しい」。大田は悔しさ交じりの顔で語る。

「後輩たちへは、終わってからは“短いぞ”としか言えないですね。時間は短いし、サッカー人生はここで終わる奴らもいるし、今やれることをしっかり考えて、一日一日を大切にして欲しいです」

 大田や國分、守備を支えたDF池松大騎(4年=京都U-18)や攻撃にアクセントを加えたMF高畑智也(4年=滝川二高)ら、最終節は学生コーチとして戦った吉永など、4回生たちはチームを去る。

 後輩たちへ向けて、大田が「竹本雄飛(1年=広島ユース)のシュートが先制点につながりましたし、点を取ったのも木藤舜介(2年=東福岡高)ですし。1、2、3回生は経験値を持っていますし、それだけのポテンシャルもあります」と期待を寄せれば、國分は「ここからもうワンランク上げようと思ったら、一人の個の力だけでは難しいので。抜けた穴を埋めるプラス、そいつが輝くというのは、これから必要なのかなと思います」とエールを送った。

 インカレ出場を果たせなかった彼らだが、この1年が無になるわけではない。この厳しくも充実した1年は土台となり、その上に今度は後輩たちが立つ。立命館大のユニフォームを身にまとい戦っていった選手たちの想いは、こうして受け継がれていく。

(取材・文 片岡涼)
●第94回関西学生リーグ特集

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