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「セレッソの人が今の僕を見たら…」 高知大MF後藤寛太、選手権を沸かせJリーガーになった男の“決断”

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中盤の底で攻守に奮闘した高知大MF後藤寛太

[12.7 大学選手権1回戦 法政大6-0高知大 江戸川陸]

 試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、チームメイトがピッチ上に崩れ落ちる中、気丈に整列へと向かった。前半16分に退場者を出して数的不利での戦いを強いられた高知大は、法政大に0-6の完敗を喫する。MF後藤寛太(4年=市立西宮高)にとって大学生活最後の公式戦。「込み上げてくるものはある」と悔しさを滲ませつつも、「チームのことを考えると、こんなこと言っていいのか分からないけど、最後の舞台で楽しむことは達成できた」と清々しい表情を見せた。

 後藤が一躍脚光を浴びることになったのは、5年前に行われた第90回全国高校選手権だった。初出場・市立西宮高のエースとして躍動。初戦の山梨学院高戦で2得点を奪って優勝候補撃破の立役者になると、続く近大附高戦、大分高戦でもネットを揺らして3試合4得点と強烈なインパクトを残し、チームをベスト8へと導いた。そして、大会後にはC大阪への加入が発表される。

 当時を振り返った後藤は「正直、選手権のことはそこまで覚えていないんですよ」と苦笑しながらも、C大阪での経験は「僕の人生を変えましたね。やっぱり、セレッソの一年間の方が僕には大きかった」と話した。

 後藤が在籍した12年のC大阪にはFW柿谷曜一朗、MF山口蛍ら現在もチームをけん引する選手に加え、現セビージャのMF清武弘嗣も所属。トップレベルの選手たちと行う日頃のトレーニングから、レベルの差を感じていたという。「本当に苦しかった。通用しなさ過ぎて、サッカーができなくて…。俺じゃ通用しないんだって痛感した」。だが、苦しい状況でも必死に食らいついて行く中で、「性格が良い意味で変わった」という。

「僕はすごいネガティブだったんです。でも、ネガティブな考えではやっていけない世界だった。自信を持ってやらないと何もできないと考えるうちに、すごいポジティブになれた」。トレーニング中にも柿谷や山口、清武の姿を目で追い、「盗めるものは盗もうとした」。だが、C大阪に在籍した1年間で公式戦の出場はなく、「すごく悔しかったし、辛かった」と年末には契約満了が発表される。

 その後、12年度に合格し休学していた高知大に復学することになるが、「高知大の1、2年生の頃はもう一度プロでやりたいというガツガツした思いがあった」とプロへの道を諦めてはいなかった。「3年生までは、ほとんど試合に出られなかった」と結果がついこない日々が続いたものの、転機が訪れる。「今年ですかね。それまではFWや左サイドハーフをやっていたけど、川田(尚弘)監督に運動量を買われてボランチでプレーするようになった」。そして、ボランチとして、4年生になってスタメンに定着する。

「今の僕のここでのプレーをセレッソの人が見たら、本当にビックリすると思いますよ。元々FWだったけど、ゴール前で待っているだけで、全然ボールに触れない選手だったので。それが今はボランチで、ボールを保持して前に運ぶという役割をこなしているから。本当にビックリすると思う」

 迎えた大学最後の舞台となる大学選手権。ボランチの位置で先発出場した後藤は、コンビを組むMF藤井勇大(4年=三田祥雲館高)と中盤の舵を取り、パスを散らすだけでなく抜群のボディバランスを活かしたドリブル突破で縦への推進力を生み出す。序盤こそ押し込む時間帯が続いたものの、前半16分に退場者を出して数的不利となり、劣勢に立たされることに。だが「退場したのは仕方ない」と下を向くことなく、勝利だけを目指して戦い続けた。

 豊富な運動量を武器に中盤の広大なスペースをケアし、「こっちが1枚少ないから、相手の最終ラインが、前から来ないと判断していると思った」と冷静に状況を判断。果敢に高い位置からプレッシャーを掛けてボールを奪取すると、相手数人に囲まれても何とかボールをゴールを近づけようとするなど、「本当に勝ちたかった」という言葉を90分間体現し続けた。

 しかし試合には0-6で大敗し、後藤の大学サッカーは終わりを迎えた。すると、「本気でサッカーをやることは、もうない」とキッパリと話し、「セレッソで1年間やって、高知大に来て3年間試合に出られなくて、それでサッカーを諦められた。諦められたのも、今までの環境のおかげ。ポジティブに捉えてますよ」と、その決断に迷いはないことを明かす。選手権を沸かせ、Jリーガーとなり、大学で4年間を過ごした男のサッカー人生は一度幕を閉じる。来春からは会社員として日々を過ごすようだが、「新しい人生、楽しみですね」と新たな人生に思いを馳せた。

(取材・文 折戸岳彦)

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