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「東京五輪への推薦状」第30回:栗田マークアジェイの“タダモノ”ではない素材感。憧れの西が丘経てアンリ目指す

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 2020年東京五輪まであと4年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ

「率直に嬉しい。全国大会で西が丘。自分は幸せ者です」

 静岡産業大の1年生FW栗田マークアジェイは、全日本大学サッカー選手権大会の1回戦終了後、そう言って満面の笑みを浮かべた。なぜなら、栗田は東京実高の出身。「西が丘」はかつて目指して憧れた、彼にとっての「聖地」なのだ。

 だが、東京実高時代にその才能が花開くには至らなかった。T2リーグ(東京都U-18リーグ2部)優勝といった実績も残したが、夢だった選手権は「西が丘にすら届かなかった」。選んだ進路は、練習試合での対戦時に気に入られて特待生として呼んでくれることになった静産大。「人工芝と天然芝のグラウンドもあって、サッカーに打ち込むしかない最高の環境」に惹かれてそのオファーを受けて入学。1年生だった今年から出場機会を得ることとなった。

 転機となったのは今年から新設されたU-19全日本大学選抜へ「無名なのに呼んでもらえた」ことだった。同じFWの浮田健誠(順天堂大)ら「本当に上手い」選手たちに刺激を受けながら、「オフ・ザ・ボールの面とか、ボールの受け方が変わった」と振り返る。高校時代は自慢のスピードを活かした突貫タイプで、「ガムシャラにやっているだけ。突っ込むだけだった」と笑うように、工夫のあるプレーには乏しかった。ただ、この日の西が丘では、なかなかボールが来ないことにイラ立ちながらも、何度も動き直してボールを呼び込み続けるなど成長は明らか。そして最後は独走ドリブルからのシュートを叩き込んで、抜群の個性とタレント性を証明してみせた。

 もちろん、課題を言い出すとキリがない。縦への速さが魅力十分な半面、180cmと上背がある割りに相手を背負ったプレーが苦手でボールを失うことも多い。「すぐカッとなっちゃう」という性格も、気持ちの強さとして出る分にはいいが、レフェリーと戦ってしまうようでは話にならない。ただそれでも、「得意なプレー」と語る滑らかなカットインからのミドルシュートで枠を捉えるなど、小さい頃から憧れて、いまも動画をチェックするというティエリ・アンリを彷彿とさせるプレーを見せる一幕もあった。上のレベルを狙える素材感は、確かにある。

「勉強はまるでできないので、プロになれなかったら何もなるモノがない」と豪快に笑う栗田が抱く大志は「自分の代なので、東京五輪に出ること」とシンプルで明確だ。「インカレでゴールを決めて知名度を上げておきたい」と堂々と意欲満面に言ってのけるメンタリティは無名の1年生といった枠から離れていて、確かにストライカーのモノである。

 ちなみに、本名は栗田マークアジェイなのだが、大学での登録は何故か「栗田マーク」。その理由を聞くと「選手証を作るときに面倒くさくて省略して書いたら、そのまま登録されちゃったんですよ」と言う。「アジェイ」はガーナ出身の父親から受け継いだ名前なのだが、「まあ、そういうこともありますよ!」と笑い話にしてしまうあたり、栗田マークアジェイ、やはりタダモノではない。

執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
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