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鮮やかFK弾は取り消しに…鹿屋体育大MF樋口「感覚的には完璧だった」

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FKでゴールネットを揺らした鹿屋体育大MF樋口

[12.10 全日本大学選手権2回戦 関西大2-1鹿屋体育大 夢の島]

 2年生MFの右足から放たれたボールはクロスバー左の内側を叩き、跳ね返ってのゴールイン。歓喜に沸いた鹿屋体育大(九州1)の選手たちは一目散にベンチ前へ駆け寄った。しかし、しばらくしてから副審が旗を上げ、得点は取り消しに。ピッチサイドで笑顔をみせていた選手たちは、状況を受け入れられない様子で慌ててピッチ内へ戻っていった。

 1-0で迎えた前半終了間際44分の出来事だった。GK前川黛也(4年=広島皆実)の前にいた選手がオフサイドとなってのノーゴール。FKでネットを揺らした鹿屋体育大MF樋口雄太(2年=鳥栖U-18)は「壁も高かったので、ポストに当たっても入るくらいをイメージしていたので、完璧でした」と言う。

「練習でずっとFKを外していて。監督からは、“枠にいけば入るから”とは言われていました。今日は自信を持って蹴って、ああいう形でオフサイドになってしまったんですけど、感覚的には完璧でした。あれを決めていれば今日は……」。ヒーローになっていたはずだった。

「ポストに当たった瞬間に下にボールが落ちたのが見えて、もう入ったなと喜びました。そうしたら旗が上がってたので……でもそれはそれで仕方ないので切り替えてやりました。覆ることではないので」

 対する関西大の選手たちは、このFKが取り消されたことで流れが変わったと認める。2-1の決勝点を挙げたMF平尾柊人(4年=福知山高)は「正直、あのFKがノーゴールになった時点で“勝った”と思いました」と言い、MF清永丈瑠(4年=鹿島ユース)も「あれが覆ったので、その時点ですごいチャンスだなと思いました。自分たちにそういう“風”が向いているのかなと」と話すとおりだ。

 強風が吹き荒れるなか、風上に立った鹿屋体育大は地の利を活かし、前半のうちにリードを奪いたい状況だった。もしFKが認められ、追加点が決まっていたら、風下で迎える後半は2点を守ればいいという精神的優位に立って迎えていたはずだ。しかし1点のみのリードは逆に選手たちを追い込んだ。後半7分にCKからオウンゴールで1-1とされて浮き足立つと、同39分には逆転を許し、1-2の敗戦。勝利は手中からすり抜けていった。

「あのFKが入っていれば、試合展開も変わったかなと思いますが、後半に耐え切れなかったのが自分たちの弱さ。来年こそ自分たちが中心になって、頑張ってやっていきたい」と樋口は力を込める。

 その先には“古巣”への帰還という目標があるからこそ、チームとしての結果にもこだわっている。小学生の時からサガン鳥栖の下部組織で育ってきた樋口。今でも古巣の結果はチェックしており、「絶対に戻りたいというのはありますね」と語るとおりだ。「そこ(鳥栖)で活躍できたら嬉しいですが、そこにいけるように、今をまずは頑張ってやっていかないと」と足元を見つめる。

「自分はあと2年あるので、全国大会は全てに出れて4回。少しでも上位にいけるように日頃から努力して何が足りないか、みんなで同じ方向をみてやっていきたいです」。鹿屋体育大でルーキーイヤーから多くの経験を積むMFは先を見据えた。この経験は無駄にはしない。

(取材・文 片岡涼)
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