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「苦しさもあった」欠場した仲間の思い背負って戦った慶大CB豊川が最高級の存在感

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[12.10 全日本大学選手権(インカレ)2回戦 順天堂大 2-1 慶應義塾大 味フィ西]

 ピッチに立つことのできない仲間の分も輝いた。だが、白星を勝ち取ることはできなかった。慶應義塾大のCB豊川功治(4年=千葉U-18)はこの日、勝者・順天堂大を含めて最大級の存在感。順大の注目FW旗手怜央(1年=静岡学園高)と距離感を保ってその武器であるドリブルを消し、またそれでも突っ込んできた際にはタイミング良く間合いを詰めてボール奪取を繰り返していた。加えて、奪えると判断した際には最終ラインを大きく飛び出してインターセプト。相手の185cmFW浮田健誠(1年=柏U-18)ら相手に高さも示し、落ち着いたフィードを見せ、攻め上がって敵陣PA付近でも脅威となるなどインパクトあるプレーだった。

 慶大の須田芳正監督は「彼は本当にこの一年間で一番怒ったというか、厳しく言った選手で。開幕戦はボランチで(豊川)功治を出していたんですけど、やっぱりCBかなと。元々ビルドアップが良かったし、守備のところで成長したし。キャプテンは(宮地)元貴なんですけど、彼にはゲームキャプテン、ピッチの監督だよと言っていた。責任感もついてきてそれがプレーに出てきたり、本当にチームを良くまとめたんじゃないですかね」と目を細めていた。彼が下級生時からもっとサッカーに集中してチャンスを掴んでいれば、「今の調子だったらJ2とか、チームによってはいいと思うんですけどね」(須田監督)というほどの評価。現時点で進路は未定で課題もまだまだあるが、上のステージで戦う権利を持つ選手であることをピッチで証明していた。

 その豊川は「自分としては失点のところでしっかりカバーできたらという反省はあるんですけど、そこまで悪くなかったと思います。本当に厳しい90分間だったんですけど、最後の試合に相応しい、自分の力を思い切り出せたと思います」と納得の表情。「自分は4年間、監督からは厳しいことを常々言われてもちろん苦しい時期もあったんですけど、最後この1年もめちゃくちゃ怒られているんですけど、ほぼ全試合出られているんで愛のムチじゃないですけど信頼を感じながら、ゲームキャプテンというか、試合のコントロールは自分に任せてもらえたので感謝しています」と指揮官に感謝していた。

 それでもチームが目標のベスト8進出を逃したこと、日本一への挑戦権を失ったことへの悔しさは変わらない。そして怪我で欠場した仲間の話題となると、なおさら悔しさがこみ上げてきているように映った。1年時から慶大の最終ラインで力を発揮してきたCB望月大知(4年=静岡学園高)が関東大学リーグ1部後期の国士舘大戦で頭部を負傷。望月によると、陥没骨折するほどの重傷で今大会は登録メンバーからも外れた。豊川は「彼とはCBを一番組んでいましたし、同期として一緒に日吉に住んでいて、プライベートでもかかわる部分が多いので。しかも怪我のシチュエーションが自分も絡んでいたので苦しさもあったんですけど……」。全力プレーの中で起こった不慮の“事故”ではあったが、自分が絡んでしまっての重傷。望月がサッカーに懸けてきたことを知っているだけに、常に心の中には苦しみがあった。

 だが、「彼(望月)はできないから『頼んだ』と毎回、きょうも試合前に言ってもらえましたし、そういう思いも背負って毎試合全力では戦っていました。でも、結果が出ずに残念だと思います。(試合後)そんな長い言葉はしゃべっていませんけれど、『お疲れさん』みたいに言ってくれて。彼のために、今まで行ったことないベスト8、日本一になれなかったことが残念です」。望月は回復後にまたサッカーを続けていく意志がある。望月本人はピッチに立てなかったが、最終節逆転でのインカレ出場、全国1勝、そしてこの日演じられた白熱の攻防戦。チームメートたちの奮闘を労っていた望月の胸に豊川らの頑張りは間違いなく響いているはずだ。
 
 豊川は4年間を振り返って「苦しさも非常に多いシーズンだったと思います。周りからもシーズン始まる前は優勝候補になるんじゃないかと言われていたし、自分たちも期待感というか、できるんじゃないかという思いを持ちながらのシーズンだったので、噛み合わずにどんどん順位が下がっていった時は苦しかったですけど、最後調子が上がってきてBチームや、Cチームの4年生みんな自分たちについてきてくれて、苦しかったですけど本当にいいシーズンだったと思います」。思い残すこともあるが、仲間たちとともに全力を出し切った。今後は自分の将来へ向けて全身全霊の日々。次の決断をするまで、自身の夢への可能性を模索しながら、豊川は戦い続ける。

(取材・文 吉田太郎)
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