[12.12 全日本大学選手権準々決勝 関西学院大1-1(PK3-4)日本体育大 町田]

　申し訳なさそうに「勝てなくてすみません……」と口にした。謝る必要なんてない。それでもエースストライカーとして、準々決勝敗退の責任を強く感じるが故に飛び出した言葉だったのかもしれない。関西学院大のエースFW出岡大輝(4年=G大阪ユース)は冬の全国・全日本大学選手権(インカレ)で2戦5得点の活躍をみせたが、チームは敗退。4強入りを前に大会を去った。

「個人的には満足していないし、この大会で勝つこと、チームとして優勝をすることが全てだった。自分の進路がどうこういうよりも、まず勝たせられなかった自分の力不足かなとすごく感じます」

　大学サッカー最終年。卒業後もサッカーを続けることを希望し、Jクラブへの練習参加もしたが、現時点で進路は未定。“就職活動”として臨んだ今大会では、初戦の専修大戦(5-0)で4得点を挙げる大活躍。昨季インカレ決勝でハットトリックを成し遂げた男のプレーに注目は集まっていた。

　この日の準々決勝・日本体育大戦。1点を追う後半35分に出岡は仕事を果たす。右サイドへ抜け出したDF高尾瑠(2年=名古屋U18)からの折り返し。冷静にコースを狙い、右足ダイレクトで決めた。

「右サイドからいい連携で瑠(高尾)が抜け出して、横パスがきました。僕はフリーだったので、落ち着いて決めることができて、それは良かったなと思います。あそこを仕留める仕留めないですごく変わってくるし、やっぱり相手は点を取って少し浮かれていた部分もあったと思うので、そこを仕留めたのは大きかったなと」

　その後も前線でボールを収めては追加点を狙った出岡だが、この日は2点目が遠い。15分ハーフの延長戦でも決着はつかず、PK戦へ突入した。中1日で迎えていたこともあり、疲労はピークに。足もつっていた。それでも出岡は関学のストライカーとして矜持をみせる。

「もうずっと足をつっていたのですが、“いけるか?”と言われて。4回生なのでそこは“いけます!”と言わないと、みんなついてこないので。ずっとPKのときには一番に蹴らせてもらっていたので、そこは自信を持って“いける”と言いました」

　PK戦で先攻だった日本体育大の守護神・福井光輝(3年=湘南工大附高)は、出岡が初戦の専修大戦でゴール左へPKを決めていたことを知っていたため、同じ方向だと読んだ。それでもペナルティースポットへ立った出岡は、冷静にゴール右へ決める。GKの逆を突いたシュートだった。

　その後は互いに一人ずつ失敗し、最後は関学大のMF徳永裕大(4年=G大阪ユース)のシュートが止められ、1-1(PK3-4)の敗戦となった。崩れ落ちた徳永へ最初に駆け寄ったのは出岡。中学1年生時からともに戦ってきた仲間を支え、大学サッカーのピッチを後にした。出岡らしい優しさみえる最後だった。

　2連覇を目指していたはずが、まさかの幕切れ。敗退に無念さを口にしていたFWだが「非常に悔しいですけど、自分たちもやりきったので、そこは後悔なく終われたかなと思います」とさばさばした表情もみせる。

「思ったよりも出し切ったので、今日も最後は足をつって情けなかったんですけどね……。今日も決めきるところはあったので、そこで決めきれなかったのが少し悔いは残ってしまったんですけど、出せるものは出せたかなと思います」

　就職活動と捉えていた今大会は2試合で終わってしまった。「まだ自分はどんな道へいくかわからないです。でも、どの道にいっても自分らしく成長していけたら」。2戦5発という結果を残し、あとは吉報を待つのみ。少しばかり悔いは残るが、全てはピッチへ置いてきた。

(取材・文 片岡涼)

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●第65回全日本大学選手権(インカレ)特集