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負傷だらけの一年間…阪南大MF重廣「徳真は決めたけど、俺は決められなかった」

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苦しいシーズンを終えた阪南大MF重廣卓也

[12.15 全日本大学選手権準決勝 筑波大3-0阪南大 NACK]

 苦しくもどかしいシーズンだった。阪南大のMF重廣卓也(3年=広島皆実高)は「ベストコンディションでやれたことはない」と今季を振り返る。阪南大は全日本大学選手権(インカレ)準決勝で筑波大に0-3で敗退。2年連続の決勝進出は叶わなかった。

 今年3月には全日本大学選抜のキャプテンとして、日韓定期戦で決勝点を決める活躍。飛躍のシーズンになるはずだった。しかし開幕直前に左肩を脱臼して出遅れると、そこから負傷が続いた。

 復帰と離脱を繰り返した。左足首捻挫、かかと骨折と負傷が続き、秋には内臓系の疾患で約2か月も離脱。復帰後は徐々に体力を戻していったが、インカレ開幕2週間前には右膝内側じん帯も痛めた。痛みをこらえてインカレのピッチへ立つなか、自身今季初ゴールを決めた12日の準々決勝・順天堂大戦の後には胃腸炎を発症。高熱が続いたが、なんとか熱は下がり、筑波大戦に先発した。

 定位置のボランチでプレーし、前へボールを進めた。コンディションが万全ではないこともあり、いつもなら出る場面でのあと一歩が出なかったが、そこはポジショニングや読みでカバーした。しかしチームは0-3の敗戦。前半20分にMF鈴木徳真(2年=前橋育英高)にミドルシュートを決められ、後半2失点しての零封負けを喫した。

 重廣は「最初にCKからのこぼれを拾ってミドルを打って……徳真は決めたけど、俺は決められなかったという決定力の差。そこは反省しないといけない」と自身へ矢印を向け、前半14分にポスト右へ外したミドルシュートを悔やんだ。もしあれが決まっていれば、試合は全く別のものになっていただろう。

 昨季のインカレ決勝(関西学院大戦)も高熱でプレーしていたMFは「そういう部分への危機感や体調管理については、しっかりとしなければいけないと思っています。今大会でもマスクや手洗い、食べ物には気をつけていたんですが……そういうのにならない身体作りは、来年は色々な人と相談しながら、考えてやっていきたい」と気を引き締め直していた。

 今試合では相手ボランチの鈴木徳とやりあうシーンが多かった。中へ走りこもうとする鈴木徳を重廣が両手で弾きかえせば、今度は鈴木徳がやり返した。全日本大学選抜のボランチと、その座を狙う2年生MFはピッチ上で激しくやり合った。

 0-2とされた直後には、重廣が「ちょっとお前らやめてくれよ」と目の前にいた鈴木徳に話しかけると「僕、ずっと重さんを思って一年間やってきたんですよ」と言われたという。昨年12月末の全日本大学選抜選考会で二人はマッチアップ。重廣が鈴木徳を完全に封じ、その差を見せ付けていた。当時の悔しさを鈴木徳はずっと胸に秘めていたようだ。

 リベンジされた重廣は「すごく怖い存在ですし、僕にないものを持っている選手。僕は僕の強みを出して、徳真を上回れれば」と挑戦を受け入れる。

 全日本で主将を任されるMFだが、その座は決して安泰ではない。「(徳真は)怖い存在だと思うんです。追われる立場として、いっぱいいい選手もいますし、油断も隙もないです。毎日上を目指しながら自分の課題と向き合って、長所はもっともっと伸ばして、ひたむきに努力していきたいなと思います」と強く誓った。

 苦しいシーズンをなんとか乗り越えた。最後は全国4強と不本意な結果だったが、まずは身体を休め、再びベストコンディションへ戻したい。全日本大学選抜に欠かせないMFの“復活”を多くの人が待っている。

(取材・文 片岡涼)
●第65回全日本大学選手権(インカレ)特集

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