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[MOM427]筑波大DF鈴木大誠(2年)_鉄壁の守り見せたCBが掲げる目標「優勝とCBとして一番の存在になること」

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[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.15 全日本大学選手権準決勝 筑波大3-0阪南大 NACK]

 何を、どうすれば、この守りからゴールを決められるのか――。特に前半はそう強く感じられたほど、筑波大の守りには穴がなかった。関西王者・阪南大が完全に封じ込まれた訳ではない。サイドからゴール前へとボールを持ち込み、足を振り切るところまでは行っていた。だが、その前に立ちはだかった水色の壁。FW前田央樹(4年=福岡U-18)の左足で狙った一撃など阪南大が打ち込んだ“シュート”はGKに達することなく、ことごとく筑波大DF陣に跳ね返された。

 その中心にいたのがCB鈴木大誠(2年=星稜高)だ。DFラインの中でもカバーリングを得意とするCBはクロスを跳ね返す一方で、ゴールを隠すように、シュートする相手とゴールの間にポジションを取ってその一撃を徹底的に跳ね返した。鈴木は「昨日アントラーズのゲーム見て、いいイメージがあったのもあったし、試合前に、『勝つチームはゴール前で身体張って勝てるよね』という話があった」。

 コンビを組んだCB小笠原佳祐(2年=東福岡高)と彼をはじめ、各選手がシュートの形を作られても諦めずに身体を投げ出し、跳ね返していた筑波大。前日14日のクラブW杯準決勝で南米王者・A・ナシオナルと対戦した鹿島のDF陣は、決定的なピンチが何度もありながらもゴール前で繰り返し身体を張るなどしつこく守り続けて3-0で勝ち、決勝へ駒を進めた。その鹿島同様、身体を張り続けた筑波大が少ないチャンスを確実に活かして決勝進出。役割を90分間果たした鈴木大はこれが突然表現できたものではないと強調する。

「いつも通り。この試合になったからやれるようになった訳ではないです。リーグ戦からゴール前で身体張るところとかはやってきましたし、(監督の)小井土さんも自分とか小笠原の良さは『そこにあるんじゃないか』と言ってくれていますし。特に自分なんかは入学した頃に(小井土監督から)『オマエに一番求めているのはゴール前のところで点取らせないところや』と言われているのでこだわっています」。いつも通りにやるべきことをやっただけ。その「いつも通り」は星稜高時代に主将として全国高校選手権で優勝した経験を持つ全日本大学選抜候補のDFが「自身と筑波の凄み」を見せつけるような90分間だった。

 その鈴木大は「自分としてはこの3試合勝ちましたけれど、悔しい気持ちがあります。全然納得していないです」と首を振る。「高校の時なんかは選手権出て優勝することだけを考えていれば良かったんで、その時は自分のプレー云々は何も思わなかったですけれども、今年入ってインカレやりながら、勝つ中で自分が何ができているのかに目を向けられるようになったので、そこで自分に足りないと感じるものが多いし、オガ(小笠原)に対して負けられない気持ちがありますし、悔しい思いもあります」と続けた。

 この日は素晴らしい守りを連発。結果、完封勝利を果たしたが、CBとして優れたプレーをしている選手が他にいると感じている。それは隣にいた小笠原。鈴木大は「(今大会は)小笠原のパフォーマンスの方がいいと思っているので。対人で戦っているのもオガやし、自分は後ろカバーして全体を見るというのが得意なのでやっていますけれども、試合通して見た時に自分よりオガの方が相手FW潰している。(上に行くためには)周りのCBとの競争もありますし、その中で隣のオガが一番のライバルでそこに勝てなかったら上には行けないので。全然納得出来ないです」と悔しい思いが口をついた。

 目指してきたものは目の前の1勝、そして優勝だけではない。CBとして誰にも負けないプレーをしてこそ、喜ぶことができる。決勝へ向けて鈴木大は「相手FWとの勝負と、小笠原との勝負。優勝とCBとして一番の存在になること、それが自分の中のインカレの評価基準」。将来上のステージへ駆け上がることを本気で目指しているCBは2年前とはまた違うこだわりを持って全国決勝の舞台に上る。

(取材・文 吉田太郎)
●第65回全日本大学選手権(インカレ)特集

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