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[MOM428]筑波大MF西澤健太(2年)_ユーティリティーなMFが大勝引き寄せる2発、「絶対的な存在へ」

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先制点を含む2発の活躍で大会ベストMFにも選出された筑波大MF西澤健太

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.18 全日本大学サッカー選手権(インカレ)決勝 日体大0-8筑波大 駒場]

 ただユーティリティーなだけではない。「絶対的な存在へ」そう誓って生まれた2発だった。筑波大のMF西澤健太(2年=清水ユース)は全日本大学選手権(インカレ)決勝・日本体育大戦(8-0)の前半に先制点を含む2得点の活躍。8発大勝への流れをつくった。

 大会ベストMFにも選出され、試合後は「この“日本一”だけを目指してやってきて、いい形で達成できて本当に良かったなと思います」と笑顔をみせる。

 ここまでの3試合では4-2-3-1システムを敷いてきていた筑波大だったが、決勝・日本体育大戦では今大会初めてFW北川柊斗(3年=名古屋U18)を先発で起用。4-4-2へシステムを変えた。これに伴い、準々決勝、準決勝と2列目右で起用されてきた西澤は逆サイド、2列目左で先発した。

 すると前半28分に西澤が仕事を果たす。相手のクリアミスから敵陣内で北川がボールをカット。こぼれを拾った西澤は迷うことなくゴール前中央で左足を一閃。無回転のミドルシュートはゴールネットを揺らした。

「北川さんがいい形でボールを奪ってくれて、僕のところにいい形で転がってきたので。ゴールまで空いていたので振り抜いてみようと思ったら、本当にいい形で入ってくれました。前を向いたらシュートを打とうというのは、試合前から考えていたこと。上手くはまってくれたかなと思います」。両手でガッツポーズしたMFは、応援スタンドへ片手を高く突き上げ、左胸の桐の葉のエンブレムを二度強く叩いた。

 そして前半36分には追加点。DF会津雄生(2年=柏U-18)の正確無比な右クロスからファーサイドで待ち構えていた西澤がヘディングシュート。「正直、大学に来てから、ヘディングで決めたことがなかったので。会津からいいボールがきて、自信を持って枠に入れようと思ったら、本当にいい形で入ったので、会津に感謝したいです」。2-0に突き放した。

 試合開始15分頃まで押し込まれていた筑波大だが、徐々に流れを引き寄せると、西澤の2発で一気に形成は逆転。前半のうちに3-0とし、後半には5発奪っての8発快勝で13年ぶりの日本一。まさに西澤の2得点は8発大勝への狼煙だった。

 決勝の舞台で輝きを放ったMFだが、今大会は悔しさとともに幕を開けていた。初戦となった2回戦・中京大戦はベンチスタート。2列目では左にルーキー三笘薫(1年=川崎F U-18)、右で長澤皓祐(2年=FC東京U-18)が先発だった。「正直、全試合でスタメンで出たかった」と言う西澤だが、そんな素振りはおくびにも出さず。後半19分から投入されると、チーム5点目につながるボール奪取も見せるなど、ただただ献身的にボールを追っては仕掛けていた。

 この姿勢やプレーが実り、準々決勝から決勝までは3試合連続で先発。「(初戦で先発できず)悔しい部分も確かに多かったんですけど、でもチームが勝つことを考えたら、(先発は)そういう形だったんだろうなと上手く受け止めて、ここまで4試合を戦って来れたので、そこは良かったなと思います」と振り返る。

 中盤ではどこのポジションでもこなすことができ、「後ろのポジションも出来るといえば出来ます」と自ら言うように、まさにポリバレントな選手。今季の筑波大では、中盤の様々な場所で起用されてきた。しかし本人は「今後へ向けては、マルチもそうですけど、“必ずこのポジションにお前がいないといけない”と、小井土(正亮)監督に思わせられるようなプレイヤーにならないといけないなと思っています」と表情を引き締める。

「正直右サイドかトップ下でプレーしたいのはありますが、そこで絶対的な存在になれていないというのが自分の現状。今の使われ方は納得できますし、でもそのなかでも結果を残していかないといけないので、そういう意味では今日は良かったと思います」

 決勝の大舞台で精度高いボールを供給するだけでなく、決定力もあると示した。2列目からの仕掛けで周囲の選手との差を見せた。今後へ向けて、この上ないアピールを果たせたはずだ。それでも浮かれることないMFは「シュート精度やパス精度はまだまだ低いので。そういう部分を突き詰めていければ、固定したポジションで使ってもらえるのかなと思います」と冷静に振り返る。

 筑波大の前線にはタレントが揃っており、今季の中心選手たちは軒並み来年も残る。インカレ決勝の舞台で2発を沈め、複数のポジションでプレーしてはチームを救ってきたMFとはいえ、その座は安泰ではない。西澤は「インカレ中は特にそうでしたが、1年生の三笘薫(1年=川崎F U-18)も2点を取っていましたし、そういう部分は刺激だと思っているので。いい仲間に恵まれたなというのが正直なところです」とライバルたちの存在をプラスに捉えている。

 仲間たちと励ましあい、競い合い、ともに高みを目指す。ただの“何でも屋”ではなく、どこのポジションに入っても精度高く安定したプレーができるのは、ピッチ上で周囲を気遣える西澤だからこそ成せるもの。大学2年目を終え、また一段階上のプレイヤーとして花を咲かせようとしている。

(取材・文 片岡涼)
●第65回全日本大学選手権(インカレ)特集

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