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急性白血病と闘う先輩、新潟DF早川のために…「日本一取れ」に応えた筑波大が悲願の戴冠

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筑波大が急性白血病と闘う先輩DF早川史哉に日本一を捧げた

[12.18 全日本大学サッカー選手権(インカレ)決勝 日体大0-8筑波大 駒場]

 闘病中の前キャプテンに日本一を捧げた。昨年、筑波大で主将を務めていたアルビレックス新潟のDF早川史哉が今年6月、急性白血病の治療を行っていることを公表。筑波大はスタンドに「早川史哉と共に」という弾幕を掲げ、ベンチにはユニフォームを飾った。チームは「早川さんのために」と結束を強め、悲願のインカレ制覇を成し遂げた。

 約束を果たした。主将のFW高柳昂平(4年=名東高)は「目標としていた日本一を達成できてホッとしています」と安堵の表情。「昨日(早川と)連絡を取って、『日本一を取れ』と言われた。日本一を取ったら勇気や元気を与えられるとみんなが思っていた。無事結果を出せて、早川さんにも頑張ってほしい」。

 先輩のために一丸となり、先輩とともにつかんだ13年ぶりの日本一。大会最優秀選手に輝いた中野も「早川さんは1日中ずっと戦っている中で、自分たちは90分間だけ頑張ればいい。逆に勇気をもらってるというか、やらなきゃいけない使命をもらって、早川さんのために取れた優勝」と感謝の言葉を口にした。

 2年前、筑波大は創部以来初となる2部降格。「落ちた時が一番苦しかった。車屋(車屋紳太郎)・現川崎F)さんとか、すごい選手がいながら、なぜか勝てなかった」。関東2部を戦った昨年、主将としてチームをけん引したのが早川だった。「一年で昇格しなきゃいけないプレッシャーの中で、(早川)史哉さんを中心にチームがひとつになって無事昇格することができて、今日の優勝につながった」。

 主将を引き継いだ高柳は今季、出場機会に恵まれず、早川のように主力としてピッチ上でチームを率いることは少なかった。それでも、ベンチから声で盛り上げ、裏方仕事もいとわずにタレント集団をまとめ上げた。大学生活最後の試合は後半39分から途中出場。入ってすぐに相手選手と正面衝突して左膝を打撲したが、最後までピッチを走り回った。「自分で点を取りたいなと思ったけど、中野(誠也)に取られた」と苦笑いを浮かべながら、「体もよく動いて、やり切れた」と充実感を漂わせた。

 試合後はスタンドの応援団と声を揃え、「早川コール」で沸いた。すると、早川本人も自身のツイッター(@paya238)を更新し、「筑波大学蹴球部日本一おめでとう!大学サッカーの頂点に立った強く逞しい後輩たちを本当に誇りに思います。この一年間常にパワーをくれた蹴球部には感謝しかありません」と投稿。後輩たちからの熱いプレゼントは、闘病生活の大きな力に変わるはずだ。

(取材・文 佐藤亜希子)

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