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渾身“膝”ダイレクトで先制点の大久保、悲願のタイトルへ「何が何でも勝ちたい」

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得点を決めたFW大久保嘉人がMF中村憲剛と抱き合う

[12.24 天皇杯準々決勝 FC東京1-2川崎F 味スタ]

 理想の“フロンターレサッカー”を実現できたことに感慨深げだった。川崎フロンターレの1年間の戦いを振り返り、FW大久保嘉人は「今年の試合で一番良かったんじゃないかっていうくらい楽しかった」と笑顔をはじけさせた。

 悔し涙を流した屈辱の敗戦から1か月。年間3位の鹿島に敗れた11月23日のチャンピオンシップ準決勝(0-1)以来となる公式戦。この期間については「やることは変わってない。練習も変わってない」と振り返り、「疲れが取れた」とコンディションを万全にして臨んだ。

 前半20分に自身の“膝”で先制点を沈めた。MF中村憲剛が送った浮き球のパスに反応したDF田坂祐介が右サイドを持ち上がり、ラインぎりぎりからマイナスにクロス。絶妙なポジショニングから飛び込むと、「ヘディングでいったけど、ボールが落ちたから膝を出したら当たった」と、“膝”ダイレクトで叩き込んだ。立ち上がりからシュートを連発し、主導権を握った中での先制点に「いい時間に1点が取れた」と胸を張った。

「前半で足がつるんじゃないかなって思ったけど、いけるところまでいこうかなと。何気に走りましたね」。得点を奪い、前線に顔を出してボールを呼び込むだけでなく、ボランチの位置まで下がって組み立てにも絡んだ。後半42分にPAまで運んでそのまま蹴り込んだ決定的なシュートが左ポストを叩くなど、途中交代の同45分までピッチを走り続けた。しかし、大久保は個人の出来よりも、後ろの選手からボールを呼び込んで中央から崩した攻撃の形に満足感を抱いていた。

「今日は俺らが下がった時に、後ろの選手がすぐに当ててくれるから(相手)DFが来れない。前を向いてパスを出せるし、(寄せが)来なかったらドリブルでいくし。今年(この形は)マジでなかった。サイドからのクロスしかなかった。それがあれば(年間成績は)分かんなかったね」

 来季は対戦相手のFC東京への移籍が濃厚だ。試合後、ピッチでヒーローインタビューを受けると、FC東京サポーターからはブーイングが飛んだ。負けていればフロンターレのユニフォームを着て最後の試合となっていたが、「そこまで考えなかった。負けたら終わりだけど、いつも通りの気持ちで」と目の前の1戦にすべてを懸けた。

 2度のJ2優勝を除けばタイトル獲得経験のないクラブにとって悲願の初戴冠まで、残り2試合。勢いに乗るチームは中4日で行われる準決勝で大宮と対戦する。「気持ちはさらに強くなった。ここまできたら絶対に(頂点に)いきたい。何が何でも勝ちたいですね」。昨季まで3年連続で得点王に輝いた背番号13。4年間在籍したクラブへの感謝の気持ちを“置き土産”に変えてみせる。

(取材・文 佐藤亜希子)

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