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ユース取材陣注目の“選手権ブレイク候補”vol.4_FW上田綺世(鹿島学園高)「“隠れ得点王候補”」

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(写真協力=高校サッカー年鑑)

 ストライカーとして必要なものを全て兼ね備えている。50m走6秒フラットで、小学校の時に県の大会で4位になったというほどの快足。空中で当たられてもブレない体幹、それを最大源に活かしたヘディングの強さ。シュートセンス。負けん気の強さと貪欲に得点を狙い続ける姿勢……。その持ち主が鹿島学園高を4年ぶりの選手権に導いたFW上田綺世(3年)だ。

 特に総体茨城県予選の決勝・水戸啓明高戦で決めたゴールは彼の魅力を全て詰め込んだ一撃だった。2点リードで迎えた後半、自陣の深い位置で相手CKのこぼれ球を相手と競り合ってマイボールにすると迷わず相手ゴールに進撃。スピードに乗った背番号10は来る相手を3人ほど交わすと、さらに左サイドからの1対1を制してゴールトゥゴールを完成させた。スタジアムからは驚きの声が漏れ、「茨城に上田綺世あり」というのを示すに値する得点であったことは確かだ。

 今でこそポテンシャルを存分に発揮している上田だが、2年生まではプレーの波が激しく、試合の中で消えてしまうことが多かった。鈴木雅人監督から言わせれば、「個の力はあるけど、まだまだ甘いので発展途上の選手」。昨年の選手権予選準決勝・明秀日立高戦でもピッチに立ったが何も出来ず、ゴールゲッターとしては物足りない一面が顔を覗かせていた。

 しかし、3年生になると昨年までのひ弱さを払拭。「疲れてくると技術もブレて、後半の終盤に活躍ができない」(上田)という課題に向き合い始めると、負荷を掛けた状態からのシュートを全体練習終了後にほぼ毎日50分ほど行って現状を変えに掛かった。この取り組みから1試合通じてのパフォーマンスが徐々に向上。7月の全国高校総体2回戦・聖望学園高戦で決めたラスト1プレーからの同点弾、12月のプリンスリーグ関東参入戦1回戦・前橋商高戦の決勝ゴール……。前述の総体予選決勝での得点も含め、試合を決定付ける一発が目に見えて増えていった。

 また今年は春先から怪我に悩まされ、持病の腰痛などの影響で全国総体後もコンディションを維持出来なかったが、万全でない状況から結果を残せるようになったのも成長の証だ。負傷明けとなった11月の選手権県予選決勝の明秀日立高戦では、PKを外したとはいえ、「練習でも3本に2本くらいは決めていた」という鮮やかな直接FKで先制点を奪って期待に応えてみせた。その活躍ぶりにチームメートも「今まで何回も(上田)綺世に助けてもらった」(GK木村壮宏、3年)と賞賛。かつてのひ弱さは消え、勝負どころでゴールを奪える選手となり、誰からにも頼られるストライカーに変貌した。

 ピッチに立てば得点の匂いが漂う本物の点取り屋となった男は、確かな手応えを持って最初で最後の選手権に挑む。「1対1やスピードの面では絶対に負けない」と自信を見せる上田が大舞台でどのような活躍を見せるのか。エースがゴールを量産してトップスコアラーに輝いた時、チームは過去最高のベスト4(08年度)を上回る成績を残しているはずだ。

(取材・文 松尾祐希)
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