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岩崎会場沸かせるも、チームとしての凄み、勝負強さ見せた市立船橋が注目対決制す!

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後半26分、市立船橋高は左SB杉山弾斗(2番)が先制ゴール

[12.31 全国高校選手権1回戦 市立船橋高1-0京都橘高 フクアリ]

 第95回全国高校サッカー選手権は31日、1回戦が行われ、前売り券完売の注目カード、フクダ電子アリーナの第1試合は全国高校総体優勝校の市立船橋高(千葉)が京都橘高(京都)に1-0で勝利。市立船橋は17年1月2日の2回戦で前橋育英高(群馬)と戦う。

 市立船橋はCB原輝綺(3年、新潟内定)、DF杉岡大暉主将(3年、湘南内定)、MF高宇洋(3年、G大阪内定)とJクラブ内定3選手を擁し、京都橘の大黒柱は高校ナンバー1FW岩崎悠人主将(3年、京都内定)。ほかにも好選手が多数所属している両校だが、特に注目は原、杉岡という高校最強レベルのCB2人を持つ市立船橋の守りと、岩崎を中心する京都橘攻撃陣の対決だった。

 試合は立ち上がりから市立船橋が押し込む。ボールを失ってから相手を囲い込むスピードが非常に速く、京都橘を自陣に入れさせない。岩崎にボールが入ればMF 金子大毅(3年)らが素早く複数でチェック。また原や杉岡が空中戦で上回り、危険人物に簡単にボールを触らせない。

 そして市立船橋は試合開始直後に相手DFラインの背後を突いたFW 福元友哉(2年)が決定的なシュートを放ったのをはじめ、セットプレーやサイド攻撃からPA、ゴールエリアまでボールを運んだ。だが京都橘は攻撃機会こそ少なかったものの、CB吉水太一(3年)とCB清水駿(3年)中心にゴール前で弾く部分、またカバーリングの部分を徹底して得点を許さない。

 そして26分、岩崎が原との競り合いで獲得したFKから流れが変わる。ゴール正面やや左寄りの位置から岩崎が右足を振り抜くと、鋭く壁を越えた一撃がゴールマウスを捉える。「完全に入ったと思ったんですけど」と岩崎が振り返った一撃は市船GK長谷川凌(2年)が1ハンドでファインセーブしたが、京都橘は直後にも右CKから清水がヘディングシュートを放つ。そして35分、相手のクリアボールを拾ったMF梅津凌岳(2年)が前方の岩崎に預けると、一瞬対応の遅れた市立船橋DF陣の隙を逃さずに中央から仕掛けた岩崎がPA外側から左ポスト直撃の右足シュートを打ち込んだ。

 岩崎のFKをきっかけに変わった京都橘がいい流れのまま前半を終える。FW堤原翼(3年)や梅津が積極的な仕掛けを見せていた京都橘は後半にも相手のクリアミスから岩崎がチャンスを迎えるなど、会場を沸かせていた。だが、V候補・市立船橋は試合をコントロールしながら、またチャンスの数を増やしていく。杉岡や原が開いた位置からのサイドチェンジや攻撃参加を見せる市立船橋は19分に右CKのこぼれた球に反応した高が右足シュート。だが京都橘GK 矢田貝壮貴(3年)がセーブし、こぼれ球から高が打ったシュートも右SB大塚陸(2年)がブロックした。

 ボールサイドの攻防は非常に激しかった。岩崎がDF3人に囲まれながらも強引に前進して会場をどよめかせ、市立船橋は原や金子がファウルすれすれのプレーで身体をぶつけて相手の突破を許さない。今年の市立船橋は非常に技術の高いチームだが、強さの源は各選手が球際で泥臭くボールを拾い、奪うところ。捨て身でボールを奪いに行ったり、倒れていてもこぼれ球を頭で触ろうとしたり、3人がかりで相手ボールに襲いかかるなど、凄みある球際の攻防を最後までやり続けた。

「(岩崎は)強い。コンタクトのところで抑えるか抑えられないかギリギリのところだったと思うんですよね。個人の勝負もあるけれどウチはグループで抑えるしかないと思っていたので、そこは金子なり、高なり、阿久津がよく頑張ってくれたと思います」と朝岡隆蔵監督が語った市立船橋に対し、京都橘の岩崎は「(市立船橋は)カウンターの対応が凄く上手くて。市船の選手全員が役割を与えられていると思うんですけど、それを原と杉岡を中心に自分らで凄くはっきりさせていたのでそこは戦術、チーム力の凄さを感じました」

 そして24分、市立船橋は岩崎が「僕の中では金子が一番えぐかったなと思います」という金子が2連続でスライディングタックルを決め、さらに球際に突っ込んでマイボールにすると、その流れからゴール正面左寄りの位置でMF西羽拓(3年)がFKを獲得する。そして26分、このFKから左SB杉山弾斗(2年)が左足を振り抜く。壁に当たってコースが変わり、好守を連発していたGK矢田貝の逆を突く形でそのままゴールネットを揺らした。

 結局、この1点が決勝点に。注目対決は市立船橋が1-0で勝利した。杉岡が「かなり手ごわかったですね。相手のカウンターの強烈さもあったんですけど、守備の組織の堅さもあったので手強い相手でした」という強敵を突破。個々が自分たちの役割を全うした市立船橋が観衆16,061人の注目対決を制し、同校にとって初となる夏冬連覇へ向けて好スタートを切った。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)
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