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「東京五輪への推薦状」第32回:「イチフナで一番エグい」恐るべき黒子・金子大毅

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市立船橋高MF金子大毅

 2020年東京五輪まであと4年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ

 大会開幕前に行われた市立船橋高と青森山田高の練習試合。市立船橋の中で一際目立っていたのはJリーグ内定の3選手ではなく、“第4の男”だった。セカンドボールの争いで常に先手を取り、危険なスペースを的確に埋め、攻撃の起点となってパスを散らす。背番号4を背負う金子大毅の存在感は抜きん出ていた。試合後、朝岡隆蔵監督も「中心選手としての自覚が出てきて、自信を持ってやってくれるようになった」と、その成長に目を細めていた。

 それから一週間を経て迎えた高校サッカー選手権1回戦。京都橘高のFW岩崎悠人は、DF杉岡大暉や原輝綺へのコメントを引きだそうとする質問に対し、「いや、金子が一番エグかったですよ」と応じた。京都橘の米澤一成監督も「(狙いどころは)全部(金子に)埋められてしまった」と嘆かせたほど、金子の存在感はそれほど傑出していた。

 金子の持つ最大の特長はスペースを埋める、こぼれ球を拾う、対面の相手を潰すといった“イチフナらしい”仕事にある。朝岡監督が「戦えるし、走れるし、考えられる」と評するように、コンタクトプレーを恐れぬ勇敢さと、球際で奪い切ってしまう守備技術の高さ、そして戦術眼の3つを兼ね備えた選手へ成長してきた。

 後方から彼の進化を見てきた杉岡は「武器が本当にハッキリしているし、能力的にも自分たちより上の部分がある」と評し、原も「金子が一つ前にいるだけで安定感が違う。すごい選手になってきている」と認める。年代別日本代表の担当ダイレクターを務める木村浩吉氏も「市船は4番もいいと思っている」と夏の段階で候補へリストアップしており、夏の高校総体後には興味を示すJクラブもあった。

 ただ、そんな評価について本人は「いやいや、全然です」「まだまだ実力不足ですから」という控えめな姿勢を崩さない。それもまた黒子のようなプレースタイルを持つ金子らしさかもしれないし、本人の中に「地道にコツコツやってきたおかげで今がある」という認識があるからこそでもある。そのスタンスは曲げる気はないのだ。

 目標とする選手に挙げるのは昨季の高円宮杯プレミアリーグで実際に対戦し、自分の目指すプレースタイルだと感じたという元FC東京U-18のMF安部柊斗(現・明治大)。Jリーガーや海外の有名選手ではなく、身近な対戦相手を目標として設定するあたりも、地に足を着けて成長してきた“金子らしさ”と言うべきだろう。

執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。
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