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[MOM2003]徳島市立MF郡紘平(3年)_やったぜ兄ちゃん!! “3年前”の悔しさ晴らした弟

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積極的にゴールを狙った徳島市立高(徳島)MF郡紘平(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 全国高校選手権1回戦 帝京長岡1-1(PK4-5)徳島市立 駒場]

 PK戦に突入した試合。決めれば勝利が確定する徳島市立高(徳島)の5人目のキッカーとして、MF郡紘平(3年)がペナルティースポットに向かう。蹴り出したボールはネットを揺らし、郡とチームメイトは歓喜の雄叫びを上げる。そんな弟の姿を、スタンドから兄が見守っていたようだ。

 2トップの一角に入る郡は、ピッチ上で存在感を発揮した。ドリブルで相手守備陣を翻ろうし、正確なパスでリズムを生み出し、強烈なシュートでゴールを脅かすなど攻撃をリード。だが序盤から攻勢を掛けながらも、帝京長岡の守備に苦しんだ徳島市立はなかなかゴールをこじ開けられない。郡自身も前半39分に直接FKを枠内に飛ばしたが、好反応を見せたGK深谷圭佑(3年)に弾き出されてしまった。

 すると、後半4分に帝京長岡に先制を許してしまう。「明らかにチームメイトも落ち込んでいたし、マイナスな感じになっていたと思う」。しかし、そんな嫌な雰囲気を郡の左足が吹き飛ばす。2分後の同6分、右サイドから細かなパスワークで相手守備を崩すと、MF吉田顕世(3年)のパスをPA内の郡が呼び込む。

「最初は右足で打とうと思ったけど、ディフェンスの寄せが速くてシュートコースを切ってきた」と冷静に状況を判断すると、「逆に縦が空いたので、そこに持ち出すことができた」と持ち替えた左足で同点ゴールを叩き込んだ。「複数人が絡みながら、ゴール前でも落ち着いてつなぐウチの売りを体現できた」と満足気に振り返る。

 その後、スコアは動くことなく1-1のまま前後半終了のホイッスルが吹かれる。迎えたPK戦、帝京長岡の2人目のキッカーが外したのに対し、徳島市立は4人目までがきっちり沈めてリードを奪う。そして、決めれば勝利が決まる5人目のキッカーとして郡がボールに向かった。

 3年前――。兄・捷太も同じように選手権の舞台に立っていた。13年12月31日、徳島市立は今年同様、1回戦で帝京長岡と対戦。1-1で迎えたPK戦で徳島市立1人目のキッカーを任されたのが、その捷太だったが、蹴り出したシュートは相手GKにストップされてしまう。チームはPK戦を3-2で制して2回戦に駒を進めたものの、弟・紘平は「その試合を生で見ていたし、複雑な気持ちがあった」と当時を振り返る。

 あれから3年。ボールに向かった郡に「悪いイメージはなかった」。5人目のキッカーとして、「きっちり仕事を果たさないといけないと思っていたし、期待に応えたかった」と思いを乗せて蹴り出したボールは確実にネットを揺らし、チームを2回戦へと導いた。この日、スタンドに兄が駆け付けていたことを明かした弟は、「兄ちゃんは悔しい思いをしたと思うので、自分が決められて良かった」と兄の悔しさを晴らし、白い歯を見せた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 折戸岳彦)

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