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前橋育英の中軸MF長澤、先制PKよりも嬉しかったこと

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前橋育英高MF長澤昂輝

[1.5 全国高校選手権準々決勝 滝川二高0-2前橋育英高 フクアリ]

 先制PKよりも嬉かったことがある。「点を取ったことよりも、セカンドボールを拾ってサイドに散らして、ゲームをコントロールできたことの方が嬉しいです」。前橋育英高MF長澤昂輝(3年)はPKを決めたゴールシーンよりも、自分の役割を80分間果たせたことを喜んだ。

 前半22分、前橋育英は右クロスをPAのFW人見大地(3年)が競って後方に落とすと、これを胸でコントロールした長澤がDF間を抜けてシュートへ持ち込もうとする。滝川二高DFがたまらずファウルで止めてPK獲得。だが、何故か誰もPKを蹴ろうとしない。「誰もボールに寄って来なかったので自分が蹴るしかないと。(前橋育英では)大体もらった人が蹴るんですけど、上手い人いるし。でも、倒れていたら誰も寄ってこなかった」。

 自らPKスポットへ向かった長澤はGKの動きを見て、冷静に正面へ右足シュートを転がす。先制点はもちろん嬉しかった。だが、やるべきことは次の1点を目指すこと。それができなければ失点ゼロで前半を終えること。前橋育英サッカー部の部長を務めるMFは「ここで自分が緩んだらダメだなと思っていました。セカンドボールを拾って行こうと」と切り替えて試合に集中し、前半を1-0で終えた。

 後半も長澤はセカンドボールを拾い続けてゲームをコントロール。初戦出場停止で他の選手達よりも1試合少なく、体力面に余裕があるMFはしっかり走り続けて勝利に貢献した。「技術的な面で引っ張るよりも走って戦う」MFは先制点を奪ったことよりもハードワークして勝ったことを喜んだ。

 広島ジュニアユースの出身の長澤はようやく自身のプレーを地元・広島の仲間たちに見せることができる。そのことについて問われると、また表情を緩めた。16年夏、広島で開催された全国高校総体で凱旋することを願っていたが、チームは群馬県予選で全国に届かなかったどころかまさかの初戦敗退。プリンスリーグ関東3位に入ってプレミアリーグ参入戦へ進出すれば、こちらの開催地も広島だったが、これも終盤戦の失速によって届かなかった。

「インターハイ広島に行けなかったのは個人的に悔しかった」。旧友たちに勇姿を見せられなかったMFは、今回の選手権でベスト4に残ることを最低ラインと考えていた。「ベスト4はひとつの壁としては、自分の中で全国放送されるので意識していました。勝つたびに連絡もらっていて、そういう仲間たちにいい報告ができればいい」。誰よりも悔しい思いを持って過ごした夏。広島から群馬で挑戦してきた長澤が最後の選手権で日本一を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
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