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「やんないといけないですね、熊本のために」帰省せず、サッカーに懸けてきた前橋育英MF岩下が誓う日本一

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前橋育英高MF岩下航

[1.7 全国高校選手権準決勝 前橋育英1-0佐野日大 埼玉]

 前橋育英高の選手たちの代表として、地元・熊本の代表として決勝を戦う。MF岩下航(3年)はこの日、初戦以来2度目の先発出場。初戦は出場停止のMF長澤昂輝(3年)に代わってボランチを務めたが、この日は本来のポジションである右MFとして出場し、積極的な仕掛けを見せた。

「2試合サブで(先発で)出れなくて、コンディションを自分で上げていてやってやろうと思っていた。自分は結構コンビネーションができると思っていて、それで起用されたのかなと思っているんで、それを出して行ければいいと」。目標であった埼玉スタジアムのピッチに立った岩下は得意の突破でFKを獲得し、前半14分にはこぼれ球に反応して決定的なシュートも放った。

 初戦の試合後に山田耕介監督が「良かったですよ」と話したのに続く躍動。本人は「3回くらいチャンスがあった」と決められなかったことを悔やんだが、それでも勝利に貢献して自身の目標でもある日本一に王手を懸けた。

 岩下は熊本県のFCK MARRY GOLD KUMAMOTO出身。「選手権で日本一を取る。出るんじゃなくて、勝ちたいと思ったんで。日本一取れる可能性があるのはどこか」と考えた時に考えた進路が前橋育英だったのだという。当時は早く自立したい、親元を離れてサッカーで勝負したいという思いもあった。

「恩返ししたくて」熊本から群馬の強豪へ進んでから3年目。地元に帰省したのは2年生時の夏休みが最後だ。「今年(16年は)帰っていないです。今年は大事な時期。親にも『サッカーに集中するから帰らないで頑張る』と言っていた」。16年4月には熊本震災が発生。熊本市にある自宅は無事だったというが、震災の影響を受けた友人もいる。

「自分も悲しかったんですけど帰れなくて。サッカーで恩返しするしかない」。

 熊本の仲間たちからの応援が「一番頑張れる」という岩下。そして「やんないといけないですね、熊本のために」と誓った。自身のプレーと勝利で家族に恩返ししてきた岩下。特にこの一年間我慢して、サッカーに懸けて戦ってきたMFは、熊本から応援してくれる仲間たちのためにも日本一を獲得する。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)

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